国内における水素エネルギー活用機器・システムの市場規模は2050年度に1兆6,870億円に達すると予測
~発電分野を中心に需要の拡大が進む見通し~
ここでは、国内の水素エネルギー活用機器・システムの市場規模予測について、公表する。
1.市場概況
国内では、日本企業が世界に先駆けて開発した家庭用燃料電池(エネファーム)や乗用車タイプの燃料電池自動車(FCV:Fuel Cell Vehicle)を中心に、水素のエネルギー利用が行われてきた。
2020年10月に日本政府が「2050年のカーボンニュートラル」を宣言して以降は、燃焼時にCO2を排出しないエネルギーとして水素に対する注目度が高まっており、その用途は拡大している。燃料電池を搭載した業務用・産業用機器での製品開発の動きが広がるとともに、バーナなどの燃焼機器において水素燃焼技術の開発が進んでいる。さらに、商用車をはじめとするモビリティ分野や鉄鋼業界などにおいても、水素エネルギー活用の取り組みが進展している。
国内における水素エネルギー活用機器・システム(水素またはアンモニアをエネルギーや動力源とする機器・システム)の市場規模は、当該年度に新規導入される機器・システム金額ベースで2030年度には3,599億円に達すると予測する。
2.注目トピック
水素発電およびアンモニア発電
水素発電およびアンモニア発電は、燃焼により発生した蒸気やガスを用いてタービンを回して発電する方法である。これには、ボイラによる汽力発電やガスタービン発電などの種類がある。また、燃焼させる燃料の構成比によって混焼(化石燃料を混合して燃焼)と専焼(水素またはアンモニアのみを燃焼)に大別される。 大手電力会社は、既設の火力発電設備を用いた混焼や専焼の実証事業を計画・実施している。
水素発電およびアンモニア発電は今後、水素・アンモニアの大口需要分野として拡大が見込まれる。立ち上がりは混焼が中心となり、アンモニア発電が先行して実用化段階に移行するとみられる。アンモニアは水素と比べて供給体制の整備が進んでおり、既設の石炭火力発電所を改造したアンモニア混焼発電の実証プロジェクトが進展している。
3.将来展望
中長期的にみると、国内の水素エネルギー需要は、水素発電およびアンモニア発電が牽引していくと予測する。発電分野の需要規模の拡大に伴い、水素発電所およびアンモニア発電所周辺地域の受入・貯蔵設備などの関連インフラ整備が段階的に進む見通しである。これらの発電所を中心に多様な産業需要が集積することで、安定した消費量が確保され、水素エネルギーの調達コスト低減につながることが期待される。
2030年代以降は、2020年代と比較して調達可能な水素の量が増えるとともに、水素調達コストの低減が徐々に進む可能性を考慮すると、水素エネルギー活用機器・システムの市場規模は中長期的に拡大していくと考えられる。2040年度の水素エネルギー活用機器・システムの市場規模は9,869億円、2050年度には1兆6,870億円になると予測する。
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調査要綱
2.調査対象: エネルギー供給事業者(電力会社、ガス会社、熱供給事業者等)、重工メーカー、産業ガス会社、商社、プラントエンジニアリング会社、建設会社、重電メーカー、産業設備メーカー、機械メーカー、燃料電池メーカーなど
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンラインを含む)、電話・メールによる取材、ならびに文献調査併用
<水素エネルギー活用機器・システムとは>
本調査における水素エネルギー活用機器・システムとは、水素またはアンモニアをエネルギーや動力源として活用する、発電設備・機器、燃焼設備・機器、輸送用設備・機器等を指す。
設備・機器は次のとおり。
家庭用・業務用・産業用燃料電池、燃料電池自動車(FCV)、燃料電池トラック、燃料電池バス、燃料電池ハイブリッド鉄道車両、燃料電池船、燃料電池フォークリフト、燃料電池クレーン、水素燃焼・混焼発電設備、アンモニア専焼・混焼発電設備、水素ボイラ、その他水素燃焼機器(バーナ、給湯機等)、アンモニア燃料船
<市場に含まれる商品・サービス>
水素エネルギー活用機器・システム(発電設備・機器、燃焼設備・機器、輸送用設備・機器等)
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