プレスリリース
No.3969
2025/12/15
車両のE/E(電気/電子)アーキテクチャに関する調査を実施(2025年)

AD/ADASの高度化・OTAアップデートが進展する中で、世界における2035年の集中型E/Eアーキテクチャを適用する車両は4,781万台になると予測

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、車載E/Eアーキテクチャ(Electrical/Electronic Architecture)の世界市場の調査を実施し、地域別のSDV(Software Defined Vehicle)市場概況、E/EアーキテクチャとSoC(System on Chip)の技術動向、主要参入メーカの事業戦略を明らかにした。
ここでは、2035年までのE/Eアーキテクチャのタイプ別新車適用台数について、予測する。

E/Eアーキテクチャの世界市場規模予測
E/Eアーキテクチャの世界市場規模予測

1.市場概況

車両の電動化とともに、ソフトウエアでクルマの機能を更新(アップデート)・追加できる「SDV(Software Defined Vehicle:ソフトウエアで定義される車両)」への転換が始まっており、その基盤となるE/E(電気/電子)アーキテクチャ(以下、EEA:Electrical/Electronic Architecture)の技術革新が大きく進んでいる。

従来の内燃機関車(ICEV)やハイブリッド車(HEV)では、各機器ごとにECU(電子制御ユニット)を分散配置する「分散型」EEAが主流だったが、OTA(Over The Air:無線によるデータ通信)によるソフトウエアのアップデートや車両の統合制御を容易にする「集中型」EEAの採用がBEV(電気自動車)を中心に増えている。
集中型EEAは、機能ごとに分散していた複数のECUを、ADAS(先進運転支援システム)、コックピット/IVI(In Vehicle Infotainment)、シャーシ、パワートレインなどの領域(ドメイン)ごとに統合制御する「ドメイン型」を中心に移行が進んでいる。また、車両の前後・左右・中央など“場所ごとに”センサや電子機器を管理するゾーンECUを配置し、中央の高性能コンピュータ(HPC:High Performance Computer)が制御する「ゾーン型」の開発も活発化しており、OEM(自動車メーカ)とTier1(一次部品メーカ)、半導体メーカとの提携が発表されている。
​Teslaや中国新興メーカが主導する大型・ハイエンドBEVでは、「ドメイン型」の導入が進んでおり、集中型EEAの2024年世界市場規模(新車適用台数)は384万台となった。2025年から2027年にかけて、日米欧の主要自動車メーカでもEEAに「ドメイン型」を適用した新型モデルの投入を計画しており、集中型EEAの2028年世界市場規模(新車適用台数)は2,174万台に成長すると予測する。

2.注目トピック

集中型E/EアーキテクチャとSoC(System On Chip)

「集中型」E/Eアーキテクチャ(以下、EEA)の適用車両が増加するとともに、車載SoC(System on Chip)の高性能化も加速している。
従来の「分散型」EEAでは各ECUが個別に制御を行い、主にマイコン(MCU:Micro Controller Unit)が使われていた。
​しかし、集中型EEAの「ドメイン型」では、複数のECUを統合制御するためにSoCがドメインコントローラに採用されている。SoCはMCUよりも高い処理能力を持ち、複数の制御を同時に処理することが可能である。特にAD/ADAS(自動運転/先進運転支援システム)やコックピット用ドメインコントローラでは演算負荷が大きいため、高性能のSoC需要が増加している。このため、新規参入の車載SoCメーカ(NVIDIAやQualcommなど)と、従来の車載用半導体メーカ(ルネサスエレクトロニクスやNXP semiconductorsなど)との競争が激化している。

3.将来展望

2035年における「集中型」E/Eアーキテクチャ(以下、EEA)の世界市場規模(新車適用台数)は4,781万台に拡大すると予測する。高度な運転支援機能の普及に伴い、集中型EEAを採用するBEV(電気自動車)が中国市場で増加しており、特にADASの「レベル2+NOA(Navigation On Autopilot)」を採用する車両での適用が急速に進んでいる。

レベル2+NOAはナビゲーション地図の位置情報と複数のADAS用センサを組み合わせることで、高速道路だけでなく一般道においてもレベル2相当の運転支援機能を実現している。安全な運転支援走行を実現するため、レベル2+NOAでは車両周囲の360度検知(前方・側方・後方)が必要となり、搭載されるセンサ数は最大で30個に達する。従来の分散型EEAでは、複数のカメラやレーダ、LiDARを同時に統合制御することが難しいため、ADASドメインコントローラに高い演算処理能力を持つSoC(System on Chip)を実装した集中型EEAのドメイン型が採用されている。
このため、日米欧のOEM(自動車メーカ)でも、レベル2+NOAの搭載に向けて大型・ハイエンドモデルを中心にドメインコントローラを用いた集中型EEAの導入が2026年以降に進む状況にあり、2030年以降は中型・ミドルエンドモデルに適用が拡大する見通しである。

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    調査要綱

    1.調査期間: 2025年6月~9月
    2.調査対象: OEM(自動車メーカ)、Tier1(一次部品メーカ)、半導体メーカ
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング調査、ならびに文献調査併用

    <E/E(電気/電子)アーキテクチャとは>

    E/Eアーキテクチャ(以下、EEA:Electrical/Electronic Architecture)とは、車両に搭載される電気・電子システムをどのように構成して配置するかを決める「車両の電子制御構造の設計図」のことである。
    ​従来のクルマでは、エンジン、ブレーキ、ステアリング、ライト、エアコン、エアバッグ、メーターなど、それぞれの機能を個別のECU(電子制御ユニット)で制御しており、高級車では100個以上のECUが搭載されていた(「分散型」EEA)。
    近年、車両の電子制御が急速に進み、システムが複雑化し、ECUの搭載スペースや配線(ハーネス)のコストや重量、制御の効率が課題となってきた。このため、従来の分散型EEAから、2020年代に入り複数の機能をまとめて管理する「集中型」EEAの適用がBEV(電気自動車)を中心に始まっている。

    なお、集中型EEAには「ドメイン型」「ゾーン型」などがある。
    ドメイン型は車の機能ごとECUをまとめる方式である。具体的には、「運転支援・駐車支援・エアバッグ」「コックピット・車載インフォテイメント」「パワートレイン」「シャーシ(ステアリング/ブレーキ/アクセル)」「ボディ(ライト・ドア・エアコン等)」など、制御する同じ領域(ドメイン)でECUを統合して制御する。統合したECUは“ドメインコントローラ“と総称され、高度なソフトウエアによる統合制御が可能になり、OTA(Over The Air:無線によるデータ通信)によるソフトウエアの更新も容易になる。

    一方で、ゾーン型は車両の位置(前後・左右・中央)ごとECU(ゾーンコントローラ)を配置する方式である。配置されたゾーンコントローラが近くのセンサーやアクチュエータをまとめて管理し、集約した情報が中央の高性能コンピュータ(HPC:High Performance Computer)に送信されて処理される。​車載機器の搭載位置ごとにECUを制御するために、各ECU間の配線(ハーネス)が削減され、車両の軽量化やコスト低減につながるとされている。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    E/E(電気/電子)アーキテクチャ、ECU(電子制御ユニット)、車載SoC(System on Chip)

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2025年09月30日
    体裁
    A4 192ページ
    価格(税込)
    198,000円 (本体価格 180,000円)

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