クレジットカード市場、2030年度には184兆円へ拡大へ
~本格的な変革期に突入~
1.市場概況
2024年度のクレジットカードショッピング取扱高(イシュアーベース)は110兆円を突破し、国内キャッシュレス市場は拡大が続いている。成長の主要因として、まずカード会社各社がポイントプログラムの高度化を進め、顧客データに基づくパーソナライズド・インセンティブを実装することで、利用頻度と取扱高を継続的に引き上げている点があげられる。これにより、金融サービスを含む自社エコシステム内でのクロスユースを促進し、利用機会を効果的に拡大してきたことがある。
また、プラチナカードをはじめとするプレミアムカードの展開強化や、法人向けデジタルサービスを起点とした法人カードの普及、若年層への訴求を意識したデザインカードの浸透も取扱高の増加に寄与した。さらに、プリペイド決済やコード決済との連携によってクレジットカード利用が自然に拡大する環境が整備されたことも、成長を後押ししている。
こうした施策の積み上げにより、市場は2025年度に121兆円を超える水準まで拡大すると見込み、今後も成長基調が続くと予測する。
2.注目トピック
銀行との連携を戦略軸とする動きが明確になっている。特に2023年以降は、クレジットカードを単体プロダクトとして展開するのではなく、銀行口座、証券、保険、アプリローンなどを束ねた金融総合サービスの一構成要素として位置づけるアプローチが主流となっている。
この取り組みは、銀行側にとってもカード会社との連携による口座稼働率の上昇、給与振込誘導、投信/保険加入のブースト、アプリのDAU向上といった顧客関係深化のメリットが大きい。
そのため、今後の競争軸はポイント還元率やキャンペーンではなく、金融サービス間の相互送客アルゴリズムの設計力に移行していく可能性が高い。
2025~2027年にかけては、この銀行連携型のエコシステム自体が、会員獲得ではなく「利用シェアの最適化」を目的としたフレームに進化し、最終的にはカード会社のKPIが、単純な決済取扱高ではなく、金融エコシステム内の回遊度、バンドル率、解約予測モデルの指標へと更新されることになるであろう。
金利上昇局面にあり、銀行サービスとの連携は不可避となり、今後、BaaSを活用した銀行サービスの提供が進む可能性もあり、この先の展開に注目が集まっている。
3.将来展望
クレジットカードのショッピング取扱高は拡大基調で推移し、2030年度には184兆円に達すると予測した。
その要因として、以下のようなものが考えらえる。
まず、カード会社各社はポイントプログラムの高度化とパーソナライズド・インセンティブの進化により、顧客行動を精緻に捉えた利用促進を実現している。
これまでの「一律のポイント施策」から「行動文脈に応じた最適化」への転換が進むことで、利用頻度と利用単価の双方が押し上げられ、LTVを起点とした利益構造へのシフトが加速し、2030年度までには、このLTVモデルが各社の経営の中核指標となっていくとみられる。
さらに、上位カード領域では、ゴールド・プラチナカードに加え、ライフスタイル特化型のプレミアムカードが台頭する可能性がある。
これらの動きが相まって、2030年のクレジットカード市場は、「キャッシュレス基盤の拡大」「顧客価値の最大化」「加盟店ネットワークの進化」という3つの軸が相互補完的に作用し、従来の取扱高拡大モデルから、よりデータドリブンな価値創出モデルへと進化していくと予測する。
この構造転換がもたらす長期的な成長ポテンシャルは大きく、クレジットカード市場は安定的な成長の軌道を維持する可能性が高いと予測する。
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【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
調査要綱
2.調査対象: 主要クレジットカード発行会社等
3.調査方法: 弊社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング、郵送アンケート調査ならびに文献調査併用
<クレジットカード市場とは>
本調査におけるクレジットカード市場とは、国内のクレジットカード会員が国内外の店舗やオンラインショップ等におけるクレジットカードを利用したショッピングを対象とし、市場規模はクレジットカード会社各社が自社発行したクレジットカードのショッピング取扱高(利用額)ベースで算出している。なお、法人カードを含み、各社のアクワイアリング取扱高(加盟店における他社カードの取扱高)は含まない。
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