コンセッション型PFI※の成功事例の創出に期待する


5月22日、新関西空港会社は関空と伊丹空港の運営権売却の1次入札を実施、オリックスと仏の空港運営会社バンシ・エアポートの企業連合が応札した。本件は、委託期間45年、売却額2兆2千億円という大型事業であり、説明会には150社が参加、三井不動産、三菱商事、東京急行電鉄など日本勢の他、海外の投資会社など計20社が事前審査を通過した。しかし、最終的に入札に応じたのはオリックス連合だけとなった。その3日前、5月19日は仙台空港案件の2次審査提出期限であったが、国交省は日程の順延を発表した。1次入札企業全社を合格させたため、調整が長期化していると言う。

応札者が1企業グループのみであった前者は競争原理の最大化という点において、また、1社も落とすことが出来なかった後者については手続や審査基準の透明性に懸念が残る。
政府は2016年度までに2~3兆円、今後10年間に12兆円規模のPFIの実現を目指すとする。しかしながら、上記案件の経過を見る限り、①リスクの官民配分の適正さ、②入札手続における透明性の確保、など投資判断の前提となる条件が整っているとは言い難い。

一方、日本は「アジアの成長を取り込む」とし、2020年までにインフラ・システムの海外受注を30兆円規模にすることを目標とする。
国内では財政負担の早急な圧縮のみが目的化され、海外では受注確保のみが優先される、もしそうであればいずれの目標も達せまい。

環境配慮型都市に関する国際規格(ISO/TS37151)を主導した日本には“スマートシティ・インフラ”に関する豊富なノウハウがあるはずで、まさにここを事業構想の原点として欲しい。そのうえで受益者であり、かつ、費用の負担者である利用者の立場から20-30年先を見据えた公的サービスの在り方を問うていただきたい。この視点を欠いたPFIは、公的セクター、企業、利用者、いずれの未来にとっても不幸となる。

※コンセッション型PFI:所有権を公的セクターに残したまま、20-30年間等の長期運営権を民間に売却する独立採算型のPFI事業のこと

今週の”ひらめき”視点 05.24 – 05.28

 

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