貿易赤字、構造的な要因から目を逸らすな


財務省が発表した9月の貿易収支は958,330百万円の赤字となった。報道各紙は、赤字の主要因つまり輸入額が増えた理由について「液化天然ガスと通信機の大幅な輸入増」と説明した。
液化天然ガスの輸入増に対する解説は「原発の稼動停止を受けて火力発電所向けの燃料需要が高まった」が昨今の“定番”である。そもそも液化天然ガスの消費量は、石油に比べてCO2の排出量が少ないこともあって拡大傾向にあったわけであるが、2011年の東日本大震災がそれを更に押し上げた。そのことに異論はない。ただ、9月の“対前年比21%の大幅増”は、前年同月の輸入量が2011年をも下回る水準にとどまったためである。
また、千トンあたり価格の推移を見れば、輸入額が増えた主たる要因が“価格要因”、すなわち、相場の高騰と円安にあることは明らかであり、単に「需要量が増えた」ことが原因ではない。

さて、通信機の輸入増は話題のiphoneということであるが、乗用車の輸出数量がマイナスであったこととあわせて、むしろこちらの方が日本の製造業の今を象徴している。“貿易赤字は悪、原因は原発停止”と安易に語るのではなく、日本の産業構造そのものの本質的な変化にこそ目を向けるべきである。

1026-1030NEWSサマリー

今週の”ひらめき”視点 10.26 – 10.30


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