景気対策と格差対策、中国は微妙なバランスの中で二兎を追う


オランダ経済政策分析局の「世界貿易モニター」によると5月の世界貿易量は前月比1.2%減、減少幅は前月の0.2%減から更に拡大、新興国とりわけ中国経済の減速が貿易停滞の要因となったと指摘する。
5日、中国政府は「地方景気の下支えを目的に、6兆円規模のインフラ投資向け債権を発行する」と新華社系経済紙を通じて発表した。一時的な需要創出効果はあるだろう。しかし、既に返済能力の限界を超えつつある地方への追い貸しは破綻リスクを高めるだけである。また、貸出残高を預金残高の75%内に制限する銀行の融資規制も撤廃するという。国家による強引な株価操縦は返って「バブル崩壊」にリアリティを与えることとなったが、同様に財政、金融への過度な依存は、危うさの拡大と増幅に直結しかねない。

まさに“なりふり構わぬ”景気浮揚策であるが、その背景にある“怖れ”の本質は、「格差」への不満が党に向かうことだろう。
今の株式市場の主要プレーヤーは地方の低~準中間層や学生といった言わば新参のアマチュアで、彼らの投資原資はノンバンクからの借り入れである。株式市場の破綻はまさに大衆の破綻ということだ。
一方、全人代常務委員会は2017年末までに日本の固定資産税に相当する不動産税の導入を検討しているという。これは習指導部が進めてきたぜいたく禁止令や汚職摘発の延長線にある格差対策と言うことが出来る。しかし、当然ながら不動産業界の利益とは相反するし、また、不動産投資にも多くの大衆が参加している。この税の導入がどのようなインパクトを与えるか、その成否がその先の中国経済の有り様を決定づけるかもしれない。

今週の”ひらめき”視点 08.02– 08.06

 

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