「36協定」見直し、不断の価値創造力が問われる社会へ


政府は、1ヶ月の残業時間に上限を設定するとともに罰則規定の検討に着手する。
慢性的な長時間労働が男性の家庭参画の障害となっており、これが少子化の背景にあるとの認識にもとづく。月内に発足する「働き方改革実現会議」の主要テーマとしてとりあげ、労働基準法の改正を含む具体案を年度内にとりまとめる方針である。

1人当たり労働時間の削減は「ワークライフバランス」に象徴される時代の趨勢に添うものであり、また、1億総活躍社会の実現に向けて、高齢者をはじめとする就労機会の確保という狙いもある。多様なライフスタイル、多様な働き方を容認する制度づくりに対して異論はない。
しかしながら、低生産性ゆえに賃金原資が押さえつけられている状況にあっては、1人当たり労働時間の上限設定は1人当たり支給額の上限設定と同義である。加えて、労働時間規制適用免除制度と同一労働同一賃金への流れは、例え、企業業績が全体として好転しても価値創出に対する貢献度が同じレベルである限り、従業者個人に対する対価に変化はない、ということでもある。

社員の副業を制度的に認める大手企業が相次ぐ。働き方の選択枝は格段に多様化しつつある。こうしたトレンドと働き方改革の方向性とを重ねあわせると、「収入元を多様化(=複数化)させない限り、多くの個人が収入増を実現出来ない社会」が浮かび上がってくる。
もちろん、だからと言って、それが「負け」を意味するものではない。価値観そのものが多様化しつつある中にあって“脱成長”を志向する選択枝もある。その時、個人は成長の論理から開放される。しかし、そうでない世界を生きるのであれば、企業も個人も新たな価値を創造し続けること、そして、そのための意志と能力を持つこと、これこそが自身の未来を拓く唯一かつ絶対の条件となる。

今週の”ひらめき”視点 09.04 – 09.08

代表取締役社長 水越 孝

 

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