奨学金制度の拡充は、健全で安定した社会を維持するための投資となる


財務省は日本学生支援機構の大学生向け貸与型奨学金の金利の下限を0.1%から0.01%へ引き下げると発表した。同機構は年間8千億円程度の財政投融資を貸付原資に組み入れているが、日銀のマイナス金利政策に伴う調達金利の低下を受け、貸付金利を下げる。
また、文科省は返済の必要のない給付型奨学金制度の創設に向けた検討チームを設置、来年の通常国会で法改正を行い2018年度入学者からの給付を目指す。
こうした背景には貸与型給付金の返済延滞者の急激な増加がある。1ヶ月以上の延滞者は17万人、全体の4.6%に達しており、延滞総額は898億円にのぼる。非正規雇用の増加や実質所得の減少が奨学金債務者の返済原資を奪う。一方で、所得階層による大学、短大、専門学校への進学率の差も拡大しつつある。4年生大学への進学率は年収400万円以下の世帯が31%に対して、年収1千万円以上では62%となる。

給付型奨学金については、財源の確保はもちろん年収や成績要件など給付資格をどう規定するかといった問題が残る。しかしながら、量的拡大による成長が望めない日本にあって、一人当たり生産性の向上は国力維持の絶対条件であり、高い教育水準はその基盤となる。加えて、格差の拡大と固定化は過激主義が生まれる土壌ともなり得る。その意味で、教育への投資は外交や安全への投資と同義であり、言い換えれば、民主主義そのものへの投資であると言える。制度の早期拡充に期待したい。

今週の”ひらめき”視点 09.18 – 09.22

代表取締役社長 水越 孝

 

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