英国、対EU硬化。「合意なき離脱」の危機、高まる


英国のEU離脱に向けての交渉期限が迫る中、「合意なき離脱」が現実のリスクとして高まりつつある。通関手続き、航空協定、動植物の検疫、農産物の表示法、医薬医療品の認可、自動車の形式認証、原子力協定、金融取引、年金給付、個人情報保護など、“第3国”となった英国は新たな規定と規制によってEUから分断される。
産業面では自由貿易を前提に欧州に一体的なサプライチェーンを構築してきた自動車業界への影響が甚大だ。BMWは混乱が予想される2019年4月から1ヶ月間の英国での生産停止を決定、生産・輸出拠点のオランダへの一部移管も発表した。トヨタを筆頭に日本勢も対応の検討に入った。

7月、英メイ首相は与党内のEU懐疑派が反発を強める中、EUとの協調に軸足を置いた交渉方針を発表した。EUは9月19日、20日にザルツブルクで英国との非公式会議を開催、しかし、EU側はその場でメイ首相の方針を拒否、「良いとこ取り」と突き放した。EUのトゥスク大統領は、SNSに同氏がメイ首相にケーキを差し出す画像をアップ、そこに「ケーキをどうぞ。チェリーはありませんが」とのコメントをつけた(cherry-pickは英語で“つまみ食い”を意味する)。英国はこれを屈辱と受け止め、結果、“合意なき離脱も止むなし”の強硬論が一気に浮上した。

1日、バーミンガムで与党保守党大会が開催された。ジョンソン前外相をはじめ強硬派のボルテージはあがる。党内融和はほど遠いように見える。しかし、EUが示した冷遇は、逆に国内の分裂を“対EU”というベクトルに収斂させる可能性もある。「合意なき離脱」のダメージは短期的には英国に、長期的には双方に効いてくる。つまり、共倒れである。頑固でロマン主義的である一方、クールな現実主義者でもある英国人気質に期待したい。
There is nothing either good or bad, but thinking makes it so. (「ハムレット」より、シェイクスピア)。

今週の”ひらめき”視点 9.30 – 10.4

代表取締役社長 水越 孝

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