アナリストeyes

「2050カーボンニュートラル」カードゲームで、気候変動を“自分ごと”に

2025年11月
生活・環境・サービス産業ユニット
理事研究員 菅原 章

カーボンニュートラルやゼロカーボン、GX(グリーントランスフォーメーション)は、新聞やニュースで日常的に目にする言葉である。毎年この時期になるとCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)関連の報道が増えるが、正直、内容をよく理解していない人や関心が薄い人も多いだろう。うちの会社でも脱炭素の取り組みを何かしら行っているらしいが、詳しくは知らない──そんな人は決して少なくないはずである。壮大な「気候変動」という問題について考えることを諦め、気にも留めていない人は多い。

そんな日々を過ごしているあなたに、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」を紹介したい。

ここ数年、「過去最高気温」や「何十年ぶりの大雨」といった異常気象の報道を聞くだけでなく、実際に体感している人も多いはず。特に今年の夏(2025年6~8月)は、「観測史上で平均気温が最も高かった」と気象庁が発表した。「確かに暑かったけれど、いつものことだよね」と思っている人は感覚が麻痺している可能性がある。「今の子供たちは学校にクーラーがあっていいね」や「暑すぎて部活動を中止するなんて根性が足りないのでは」といった心の声を持つ人は、特に年配層を中心に少なくない。東京の猛暑日日数は30年前には5日前後で「暑い夏」と言えたが、2020年以降は20日以上になっている。今の子供たちが自分の子供を育てる20年後には、「猛暑日が当たり前=夏は屋外活動ができない」が普通になっている可能性がある。

無関心だった私も、社内の若手が熱心に取り組んでいるのを見て重い腰を上げ、カードゲーム「2050カーボンニュートラル」を体験してみた(正直に言えば、参加を強制されてのことではあるが)。

カードゲーム「2050カーボンニュートラル」とは何か? このゲームは、プレイするだけでカーボンニュートラルの重要性や具体的な行動が理解できるだけでなく、なぜ気候変動の解決が簡単ではないのか、その難しさまで実感できる。しかもそこで終わらず、「では一体何ができるのか」と考えを巡らせるきっかけを与えてくれる。かなり完成度の高いカードゲームである。

具体的には数名でチームを組み、住宅メーカーや電力会社、自動車メーカー、IT事業者、金融機関などで働く企業人になりきって、各チームがゴールを目指す。ゲームは現実社会を模して設計されており、プレイヤーの選択の積み重ね、つまりその場に集まったメンバー構成によって結末が変わる。
ゲーム終了後にはプレイ内容を振り返り、その「結果」をもたらした各人の「行動」や、さらにその背後にある「価値観や考え方」を深掘りする。ここが実に面白い。

この体験は、環境や気候変動を「自分ごと」として考える良い機会になった。東日本大震災のときのように「できる範囲での節電」を改めて考えさせられる。平時から生活の中でできることを意識し、小さなことでも行動を起こすことが重要である。また、「そんな小さなことに意味があるのか」と疑問に思っていたことが、社内の若手では「やってみたい」「みんなで取り組もう」といった雰囲気になっているのは良い意味で意外であった。

【参加者の声】(一部抜粋)

  • カーボンニュートラルが社会全体で取り組むべき課題で、その一員であることの実感をこれほどまでに簡単に体感できる仕組みがあることには非常に驚かされた。
  • カーボンニュートラルの実現に向けては、各業界の動きが相互に関連している事を改めて学ぶ機会になった。
  • 循環させていく社会の流れを作ることの大切さ、また市民としてできることも他者との協業で成り立つ部分が大きいと実感した。
  • 全体への意識付けや各ステークホルダーとの調整の難しさを改めて実感。
  • 自分だけが頑張ろうとしても結果には繋がらないのだと云う事を実感。カーボンニュートラルへの取組みをもっと知りたくなった。
  • 利潤追求とカーボンニュートラルの両立は容易ではないということがわかった。すでに先駆けて行っている企業への関心や敬意が高まった。早く動かないとより大きなダメージを負うということを学んだ。
  • 参加前よりも今後の気候変動や災害に対する危機感が強まった。
  • カーボンニュートラルの実現には、官民、複数の業種のそれぞれの目標を理解して協力していく必要があることを実感した。

今と同じ生活を続けてエネルギー消費を続けるだけでは、気候変動は悪化する一方である。まずはカードゲーム「2050カーボンニュートラル」を多くの方に体験していただきたい。

※ファシリテーターは、当社研究員が行います。ご興味のある方はぜひお問い合わせください。お問い合わせはこちら

参考:プロジェクトデザイン社による説明

過去から現在にかけて私たちが行ってきた活動が地球環境にどのような影響を与えているかをマクロに俯瞰し、私たちの価値観や考え方に気づかせ、行動変容を促すシミュレーションゲームである。ゲーム体験を通じて「なぜカーボンニュートラルが求められているのか」、「そのために私たちは何を考え、どう行動するのか」に関する学びや気づきを得ることができる。

カードゲーム「2050カーボンニュートラル」詳細はこちら