アナリストeyes

持ち家購入者の行動変容と住宅業界動向

2026年2月
生活・環境・サービス産業ユニット
主席研究員 西田 覚

1. 今、住宅価格が高い

首都圏や近畿圏等の大都市圏を中心に、住宅の販売価格が高い。新築も中古も。新築住宅価格が高い主な理由は、資材費や人件費等の建築コストの上昇や地価上昇。一方、中古住宅価格が高い主な理由は、新築価格の上昇等を背景とした割安感のある中古住宅の需要増。加えて、新築も中古も高い共通の理由として、インバウンド需要の増加も挙げられる。円安を背景とした海外の購買力の高まりや日本の不動産購入に当たり、外国人の購入規制がほぼないことがインバウンド需要の増加の主な要因と考えられる(外国人の購入規制については、現在政府が規制強化を検討しているほか、業界団体では投機抑制のため売り出し前の転売禁止方針を打ち出し、大手デベロッパーを中心に導入を進めている)。

2. 今後の住宅価格

今後の住宅価格はどうなるか。金利上昇や景気動向等のマクロ経済環境の影響を受けるが、今のところ、新築・中古とも住宅価格が下がる要因が見当たらず、恐らく上昇基調または高止まりが継続するものと思われる。
住宅の販売価格の上昇・高止まりが継続すると、当然のことながら、住宅を買いたくても買えない層が出てくる。住宅を買えない層は必然的に賃貸住宅に流れる。その賃貸住宅の賃料も、インフレや大都市圏を中心とした人口流入エリアにおいて上昇傾向で推移しており、世帯所得に占める賃料の割合は増加し、家計への負担が重くなっている。

このような状況の中、昨今、「アフォーダブル住宅」という言葉を目や耳にすることが増えている。アフォーダブル住宅とは、その名の通り、手ごろな価格の住宅を指す。経済協力開発機構(OECD)によると、アフォーダブル住宅とは、低所得・中間所得世帯の所得水準でも、経済的に手が届く価格の分譲住宅や賃貸住宅とされている。
この「アフォーダブル住宅」確保の重要性は増しており、東京都は2025年度に官民連携アフォーダブル住宅供給促進ファンドを創設。東京都と民間企業が資金を出し合い、家賃を抑制し子育て世帯等が住みやすいアフォーダブルな住宅を2026年度以降に本格供給する計画であり、日本国内では先進的な取組となる。
また、国の取組としては、令和8年3月までに策定される予定の新たな「住生活基本計画」に2050年に目指す住生活の姿の目標の一つとして、「過度な負担なく希望する住生活を実現できる環境整備」が挙げられている。

3. 持ち家の需要動向

ここで、一旦、賃貸住宅ではなく、住宅の購入市場(持ち家市場)に焦点を当てる。

上述の通り、将来的に住宅価格の高止まり推移が見込まれる中、消費者の行動変容について考察する。

所得ピラミッド階層を大まかに3階層に分けると、アッパーゾーン、平たく言えば高所得者層の消費行動は従前どおり、都心部高級分譲マンションや高級注文住宅メーカーを選好するであろう。人口・世帯数の減少等により新設住宅着工戸数は減少の一途をたどることが予想されるが、高級ゾーンを買う・建てる構成比は今後も維持するのではないか。

一方、所得ピラミッド階層の中間層はどうだろうか。
住宅価格のほか、全体的に物価高の状況において、このゾーンが最も大きな行動変容が起きるのではないか。具体的には、ミドルグレードからローグレードへのシフト。新築と比較して割安感のある中古住宅、あるいは賃貸住宅を選好する層の増加が予想される。

住宅購入者層の構成比(イメージ図)

住宅購入者層の構成比(イメージ図)

4. 業界動向

以上の需要動向の変化(考察ではあるが)に合わせて、中間所得者層をターゲットとしてきたハウスメーカーやビルダーの生き残りのための戦略転換は必至となるであろう。具体的には、建築請負市場におけるミドルグレードでのシェア拡大のためのM&A等による規模拡大、あるいは、中小地場工務店を囲い込むためのFC戦略の一層の推進等による業界再編、あるいは、ハイグレードゾーンへの進出などが挙げられる。加えて、非住宅を含めた不動産開発市場や賃貸住宅事業など、不動産事業への事業ドメインの拡大など。今後の動向に注目したい。