プレスリリース
No.2828
2021/10/04
医薬品製造受託市場に関する調査を実施(2021年)

2019年度の医薬品製造受託市場は、前年度比3.8%増の3,820億円と推計

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の医薬品製造受託市場を調査し、製造受託企業や製薬企業の動向、市場の展望、課題などを明らかにした。

医薬品製造受託市場規模推移
医薬品製造受託市場規模推移

1.市場概況

医薬品製造受託は2005年に改正薬事法が施行され、生産工場を持たなくとも製造販売業(元売業)の許可と製品の承認(製造販売承認)を得ることで販売できる仕組みとなり、製薬企業の製造部門の全面外部委託が可能となった。ジェネリック医薬品(後発医薬品)の普及に伴い、中堅のジェネリック医薬品メーカーと新薬系の製薬企業の提携を中心に、ジェネリック医薬品の共同開発も拡大している。医薬品の外部製造委託は進展し、医薬品製造受託企業の受託件数、生産量は拡大傾向にある。

2015年度以降、市場は3~5%程度の伸び率を継続し、順調に拡大している。2019年度は、ジェネリック市場の拡大に伴う共同開発による製造受託が伸長する一方、長期収載品が市場縮小により生産量が減少するなどの影響もあり、2019年度の医薬品製造受託市場は前年度比3.8%増の3,820億円と推計した。

2.注目トピック

付加価値の向上、差別化を進めるべく、CMOからCDMOへ移行

低コストを武器にした海外企業の新規参入に関しては、日本特有の高い品質要求や納期順守を考慮すると、海外生産での対応は難しく、直ちには脅威にはならない見込みである。しかし、国内製造受託企業または生産工場の買収により、市場参入を図る可能性はある。これは、国内の異業種企業についても同様で、新規に工場を建設して参入するにはリスクが大きいが、既存設備の買収による参入は十分にあり得る。
従って、医薬品製造受託企業間のさらなる競争激化は必至である。これまでは、成長率に差は見受けられるものの製造受託企業の多くが順調に業績を伸ばしてきた。しかし、今後は淘汰される企業の出現や業界再編の可能性も否定できない。

医薬品製造受託企業は、今後の競争の中で生き残っていくためには、継続した設備投資と生産コストの削減が必要となる。品質レベルや技術力、コスト対応力などに乏しい企業は淘汰されることが考えられる。
こうした中、製薬企業の製造工程の全面委託や剤型の一括委託などが増加しているため、総合的な対応力が求められる。一方で、得意分野に特化し棲み分けを目指す製造受託企業も増加している。積極的な設備投資によって自動化された製造設備を導入し、品質管理レベルと生産能力を増強して、小~中型製剤を低コスト生産する企業や、高い技術力の提供と自動化された大型設備で大型製剤を受託する企業、専門剤形分野(注射剤、カプセル剤、軟膏剤、貼付剤など)に特化し、高い製剤技術とフレキシブルな少量多品種生産を実現する企業など、棲み分けを目指した動きも強まると見られる。
また、医薬品製造受託企業の多くがCMO(医薬品製造受託企業)からCDMO(医薬品開発製造受託企業)への展開を目指し、製剤開発の強化に取り組んでいる。これまでの商用の製造受託中心の展開から、治験薬さらには製剤開発に取り組むことで、自社の付加価値の向上を図るとともに製剤開発から受託製造までの一貫受注の拡大を狙っている。

3.将来展望

今後の医薬品製造受託市場は、既存の長期収載品の製造受託は減少が見込まれるが、新たに特許切れとなる長期収載品の製造受託、ジェネリック市場の伸長などにより引き続き安定的に推移すると予測する。
参入企業の増加に伴い競争状況は激化しており、成長を継続する企業がある一方で受注減が続く企業も存在し二極化の様相を呈している。一方で競争激化により質の高い製造受託企業が育成されることが望まれており、また、同時に製造販売承認制への移行に伴い、企業形態の多様化を通じた製薬産業の一層の活性化が期待される。

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    調査要綱

    1.調査期間: 2021年6月~8月
    2.調査対象: 医薬品製造受託関連企業等
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

    <医薬品製造受託市場とは>

    本調査における医薬品製造受託とは、製薬企業が企画・開発(共同開発を含む)した医薬品の製造の全てまたは一部を受託している場合を製造受託と定義する。
    また、製造受託については、純然たる外部企業からの製造受託と系列企業からの製造受託の2通りが考えられるが、本調査では系列企業からの製造受託を除外している。ただし、系列企業とは親会社の製品のみを製造している子会社とし、大手製薬企業の100%出資子会社でも、親会社以外の製造受託を実施している企業は、外部企業からの製造受託と定義して市場規模に含める。
    なお、市場規模は、医薬品製造受託企業の製造受託売上高を合算し、算出した。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    医薬品製造受託

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2021年08月31日
    体裁
    A4 332ページ
    価格(税込)
    132,000円 (本体価格 120,000円)

    お問い合わせ先

    部署
    マーケティング本部 広報チーム
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