プレスリリース
No.3518
2024/05/20
次世代電池世界市場に関する調査を実施(2024年)

次世代電池ならではの領域で市場導入が進展、問われるは脱黎明期への決定的付加価値
~2023年の次世代電池世界市場規模は1兆2,333億円の見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、2023年から2035年にかけての次世代電池世界市場を調査し、種類別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
次世代電池世界市場規模予測
次世代電池世界市場規模予測

1.市場概況

9種類の次世代電池の中にはレドックスフロー(RF)電池のように市場導入が進んでいるものもあるが、本格的な実用化は2025年以降、または2030年以降になるものがほとんどである。
2023年の次世代電池世界市場規模(メーカー出荷額ベース)は1兆2,333億円の見込みである。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギー普及に伴う電力系統用定置用蓄電池の需要増により、大型のレドックスフロー電池が大きな割合を占める見込みである。また、酸化物系全固体リチウムイオン電池(LiB)において、中国を中心に固体電解質に電解液やゲルポリマーを添加した半固体電池の生産が一部で開始されている。その他、ナトリウム二次電池や金属空気電池でも既に市場形成が始まっている。

2.注目トピック

全固体LiB、車載用を目指す開発の動きが活発化

小型・小容量セルの領域から実用化がスタートしている全固体LiBだが、車載向けを主とした大型セルの開発に向けて、電池メーカーや電池材料メーカーの開発が活発化している。

硫化物系全固体LiBは小型・小容量セルの領域から実用化フェーズに入る動きが見られる。OEM(自動車メーカー)各社は2020年代後半にはEVへの搭載を目標としており、注目度が一段と高まっている。韓国の液系(従来の)LiBメーカー3社も、2020年代後半を製品化、生産開始の目標時期と定めて開発を進めている。
高分子系の固体電解質(ドライポリマー)を使う全固体LiBは、海外の取り組みが先行したが、2022年に発火事故が発生するなど課題が見えてきており、改善を目指す次世代品の開発が推進されている。
​​酸化物系全固体LiBでは、中国LiBメーカーを中心に完全な全固体電池に拘らず、電解液やゲルポリマーを混合した半固体電池で市場投入を急いでおり、ここ数年開発が活発化している。

3.将来展望

2035年の次世代電池世界市場規模を2023年比で約6倍となる7兆2,763億円になると予測する。種類別でみると、レドックスフロー電池が4兆4,755億円、酸化物系全固体LiB(半固体電池含む)が1兆3,034億円、硫化物系/高分子系全固体LiBは1兆2,457億円、ナトリウム二次電池が1,396億円となる見込みである。その他、Li-S電池が418億円、金属空気電池280億円、新原理・新型電池116億円、有機二次電池207億円、多価イオン電池を100億円と予測する。

レドックスフロー電池では、世界規模で再エネの導入が拡大するに従って長周期電圧変動対策や余剰電力の調整需要が増大し、中国や米国、欧州を中心に4~5時間以上の充放電が可能なレドックスフロー電池の採用が拡大している。特に高速応答性と充電量管理の容易性により、短~長時間の需給調整に幅広く対応できるレドックスフロー電池ならではの利点を生かし、太陽光発電や風力発電の系統連系や独立型マイクログリッド等において今後、ビジネスチャンスが広がる見込みである。
酸化物系全固体LiBは、EV向けを主体とした半固体電池の量産に取り組む複数の企業が存在し、市場成長が期待される。一方で、その成長性は電解液を少量添加するなど半固体化によるメリット・デメリットのバランス次第の側面も有するものと考える。
硫化物系/高分子系全固体LiBは、OEM各社による実用化が2020年代後半に計画されており、EVの駆動用電源としての採用が拡大する見通しである。

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Aパターン
  • セグメント別の動向
  •  車載用本丸の硫化物系全固体LIBは小型・小容量タイプから実商化フェーズ突入、高分子系は次世代品開発がカギ
     酸化物系全固体LIBは半固体電池で市場投入を急ぐ動きが活発化
     NAS電池が市場を牽引、NIBはLi価格下落の影響を受け、市場の立ち上がり時期は後ろ倒しの向き
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    調査要綱

    1.調査期間: 2023年6月~2024年3月
    2.調査対象: 次世代電池関連企業、大学、研究機関等
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

    <次世代電池世界市場とは>

    本調査における次世代電池とは次の9種類の電池を対象とし、具体的には①酸化物系全固体リチウムイオン電池(LiB)、②硫化物系/高分子系全固体LiB、③ナトリウム二次電池、④レドックスフロー電池、⑤金属空気電池、⑥有機二次電池、⑦多価イオン電池、⑧Li-S電池、⑨新原理・新型電池である。また、本調査における世界市場規模(出荷額ベース)は1米ドル=145円の換算で算出している。

    ​①酸化物系全固体LiB:固体電解質に無機酸化物材料を用いたリチウムイオンを伝導種とする二次電池であり、製造プロセスの区分として「バルク型」と「積層型」に大別される。固体電解質に電解液やゲルポリマーを添加した「半固体電池」も含める。
    ​②硫化物系/高分子系全固体LiB:固体電解質に硫化物材料やポリマー材料を用いたリチウムイオンを伝導種とする二次電池で、セルの大型化、大容量化が酸化物系全固体LiBに比べると比較的容易であり、EV(電気自動車)への搭載(駆動用)を目指した開発が推進されている。
    ③ナトリウム二次電池:ナトリウムイオンを伝導種とする二次電池で、NAS電池(ナトリウム・硫黄電池)やナトリウム・塩化ニッケル電池が実用化で先行している。中型から大型の定置型蓄電池分野が適しているとされる。
    ④レドックスフロー(RF)電池:一般的な二次電池とは違うフロー型の電池で、活物質を含んだ電解液をポンプで循環させて電解液に蓄電する。大型定置型蓄電池として特に再生可能エネルギー発電との系統連系に適している。

    ⑤金属空気電池:リチウムやアルミ、マグネシウム、その他の金属を活物質として使う負極と外部の空気中酸素を取り込んで活物質として使う正極を組み合わせたもので、一次電池と二次電池がある。ボタン電池から定置用蓄電池まで既存電池の幅広い用途への適用を目指している。
    ⑥有機二次電池:LiBの正極に使われるコバルト酸リチウムなどの金属酸化物系の活物質を有機物に置き換えたもの。LiBだけでなくキャパシタ用途の置き換えも目指している。
    ⑦多価イオン電池:イオン1個当り1個の電子を運ぶLiBに比べ、2~3個の電子を動かせるマグネシウムやカルシウムなどの多価イオンを用いた電池である。先行するラミネート型ではIoTセンサーなどの小型アプリケーション用途を想定している。
    ⑧Li-S電池:単体硫黄をはじめ、有機系や無機系の硫黄系活物質を使う正極とリチウム金属などの高容量負極を組み合わせた二次電池である。EVなどの車載用や定置型大容量電池への適用が想定されている。
    ​⑨新原理/新型電池:既存の二次電池とは蓄電原理が異なる電池と、既存の電池に特長的な改良(高機能、新機能、新構造)を加えた電池である。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    酸化物系全固体LiB、 硫化物系全固体LiB、高分子系全固体LiB、ナトリウム二次電池、レドックスフロー電池、金属空気電池、有機二次電池、多価イオン電池、Li-S電池、新原理電池、新型電池

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2024年03月28日
    体裁
    A4 215ページ
    価格(税込)
    198,000円 (本体価格 180,000円)

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    マーケティング本部 広報チーム
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