2025年度のVTuber市場は前年度比120.0%の1,260億円を予測
~グッズ収益など各事業領域が成長を後押し~

1.市場概況
アニメルックなキャラクターで動画を投稿・配信するVTuberは、2016年の「キズナアイ」の登場によって始まった新興の表現手法である。新型コロナウイルス禍に行動制限がなされたことで、自宅における動画視聴需要が高まり、市場は急成長を遂げた。2023年度のVTuber市場規模は、VTuber事務所を運営する企業の当該事業売上高ベースで前年度比153.8%の800億円に拡大した。
セグメント別に内訳をみると、2023年度はグッズが445億円(構成比55.6%)と過半を占め、ライブストリーミングは160億円(同20.0%)、BtoBが131億円(同16.4%)、イベントは64億円(同8.0%)と続いた。イベント領域、グッズ領域、BtoB領域が高い成長率となった。急成長期に比べれば伸び率は落ち着いてきているものの、VTuber市場は拡大傾向にあり、2025年度の同市場は前年度比120.0%の1,260億円規模になると予測する。
2.注目トピック
IP(知的財産権)とインフルエンサーの2つの特性を有するVTuber
VTuberは、その成り立ちからIP(Intellectual Property:知的財産権)とインフルエンサーの2つの特性をもつ。この点がYouTuberやアニメ声優など他のコンテンツとの一番の違いである。
VTuberはアニメルックなキャラクターとして活動しているため、そのキャラクターデザインを用いたグッズ販売や、ゲームやアニメのキャラクターとしての作品出演などIPライセンスビジネスとして活用されることが多い。
しかし、VTuberはアニメキャラではなく、演者(中の人)が視聴者と生の掛け合いを行ったり、演者本人の身近な出来事について語るなど、演者のオリジナリティが反映された新しいキャラクターであるという特性がある。そのため、アニメキャラのような魅力的な見た目をIPとして活用するのみならず、その人らしい「生の声」として情報を発信するインフルエンサーとして、企業とのタイアップ広告などで活躍している。
なかでもVTuberの好みや活動方針と親和性の高い企業とのタイアップ事例はファンの共感も得やすく、とくに高いエンゲージメントが実現すると言われる。
3.将来展望
VTuberは国内ではいちジャンルとして地位を確立し、黎明期のライブストリーミング収益に依存した構造から、グッズやBtoB(タイアップ広告、IPライセンスによる版権・商品化権ビジネス)など多岐にわたっている。また、多くのVTuber事務所が海外向けにサービスを開始し海外ファンの獲得を進めているほか、海外でもVTuber事務所設立の動きが見られる。
現下、ファン数の増加のみならず、収益化の事業領域が拡大していることから、VTuber市場は更なる成長が期待されている。
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調査要綱
2.調査対象: VTuberをマネジメントする事務所/プロジェクトを運営する企業等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、アンケート調査、電話による調査、ならびに文献調査併用
<VTuberとは>
本調査におけるVTuberとは、2Dまたは3Dのキャラクター(アバター)を使って、YouTubeをはじめとする各種動画プラットフォーム上に動画を投稿する動画配信者のうち、YouTubeをはじめとする各種動画プラットフォーム上で配信を行う配信者で、①演者がアニメルックなアバターを纏い、『演者自身』でも『設定のある二次元キャラ』でもない新たなキャラクターとして振舞い、②かつ、そのキャラクターがインフルエンサー・IP(Intellectual Property:知的財産権)の二つの特性を有するものとする。
<VTuber市場とは>
本調査におけるVTuber市場とは、国内のVTuberをマネジメントする事務所/プロジェクトを運営する企業の当該事業売上高(海外事業を含む)ベースで算出した。
市場は、マネタイズ(収益)方法により、ライブストリーミング(動画配信による広告料・スーパーチャット・メンバーシップ等からの収益)、イベント(ライブ・コンサート等有償イベントのチケット販売収益)、グッズ(有形商品やデータ販売等による収益)、BtoB(タイアップ広告、IPライセンスによる版権・商品化権ビジネスによる収益)の4つのセグメントに分類した。
<市場に含まれる商品・サービス>
VTuber、VTuberをマネジメントする事務所/プロジェクト、VTuber事務所を運営する企業
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