プレスリリース
No.3899
2025/08/25
高機能フィルム市場に関する調査を実施(2025年)

2024年から2025年にかけての高機能フィルム市場は「回復」フェーズが終了、次世代の市場・製品の探索が今後の課題に
​~6G、空飛ぶクルマ、ソフトロボットなど、次世代のニーズに応える性能の実現が新たな市場を生み出し、次の事業の柱を生み出す~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、ディスプレイ・光学、電気・電子、一般産業用のベースフィルム及び加工フィルムなど、国内外の高機能フィルム市場(日本、韓国、台湾)を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。

主な高機能フィルム市場規模の成長率推移・予測
主な高機能フィルム市場規模の成長率推移・予測

1.市場概況

 2024年から2025年にかけての高機能フィルム市場は、コロナ禍のICT関連製品向け特需とその反動減の影響から完全に抜け出し、実需要に即した動きへと回復した一年であった。
主な高機能フィルムの成長率(メーカー出荷数量ベース)は、2024年は光学用PETフィルムが105.2%、一般産業用PETフィルムは114.6%、MLCCリリースフィルムが121.1%、PIフィルムは115.5%と、光学用PETフィルムを除き軒並み2ケタ成長を示したが、フィルムメーカー各社はこれを「急成長」ではなく特需後の反動需要減からの「回復」と位置付けている。
​2025年(見込み)の成長率は各フィルムとも概ね前年比103~108%程度にまで落ち着き、2026年から2027年にかけても年間一桁ペースの緩やかな成長になると予測する。

2.注目トピック

光学部材、PI、MLCCリリースフィルムのローエンド領域で中国ローカライズが進展

 高機能フィルム市場に参入するフィルムメーカーやコンバーターのシェアや、各社が展開するフィールドは、この数年間で少しずつ変わってきた。その背景にあるのが中国ローカルフィルムメーカーの台頭である。

主な高機能フィルムの状況を見ると、他の用途に比べ中国ローカルフィルムメーカーの販売量シェアが高い光学用PETフィルム市場では、ボリュームゾーンであるTV用LCDバックライト部材は中国ローカルフィルムメーカー、ハイエンド領域にあるAMOLEDやQLEDなど高精細なディスプレイ部材は日本・韓国・台湾のフィルムメーカーが主に供給している。2014年には中国ローカル勢の参入はごく一部にとどまっていたのに対し、2019年には約55%、2024年には約64%が中国ローカルフィルムメーカーにより供給されたものと推計する。

PIフィルム市場では、これまで中国ローカルフィルムメーカーは電気絶縁テープなど安価な汎用・ローエンド品向け製品の生産・供給が中心であり、FPC(Flexible Printed Circuit)やCOF(Chip on Film)、グラファイトシート、一般産業用分野などミドルエンド以上の市場への参入は一部に限られていた。ミドルエンド以上の市場における中国ローカル勢の販売量シェアは2019年には全体の約4%にとどまっていたが、2024年には約11%まで拡大したものと推計する。

2024年に入って中国ローカルフィルムメーカーのシェアが急激に増えた用途がMLCCリリースフィルムで、これまで家電やアミューズメント、玩具など、日本・韓国・台湾のMLCCメーカーと競合しない領域で展開してきた中国ローカルのMLCCメーカーがスマートフォンのローエンド機種向けに生産・供給を開始している。工程材であるMLCCリリースフィルムの使用量が増えるとともに、これまでの輸入から国内での調達に切り替えた結果、2022年には販売量シェア1%に満たないポジションであった中国ローカルコンバーターのMLCCリリースフィルム販売量は2024年には約4%まで拡大したものと推計する。

3.将来展望

 液晶ディスプレイやFPCに代わる次世代の市場として、ビヨンド5G/6Gや自動運転(レベル3以上)、空飛ぶクルマ、航空宇宙、ソフトロボットなどが注目されている。これらの新たな市場では、従来の高機能フィルムのスペックをはるかに超える高い性能・品質や、本来はトレードオフである性能の両立が求められるケースが多く、既存のフィルムでは対応が難しい。また、次世代の市場は現時点では本格的には立ち上がっておらず、足元のマーケット規模も小さい。ここにフォーカスして開発されているフィルムメーカー各社の新規開発中のフィルムも現状では提案・サンプルワークの域を出ておらず、既存のボリュームゾーンに代わる柱まで育つには時間がかかると考えられる。
新しいフィルムを次世代の市場・製品とマッチングさせていくためには、開発段階にある製品・市場であっても、部材や工程材としてどのようなフィルムが求められるのか、どのような性能がどのレベルで要求されるのかなどを見極め、先行して研究開発を進めることも必要である。

​これまでに無い性能を持つ高機能フィルムの開発と提案を通して、次世代の市場・製品を育成する開発は日本メーカーの得意とするところである。形として現れないフィルムに対するニーズをキャッチアップし、新たに開発したフィルムの性能をマッチングさせる中で、これまでの最先端のさらに先にある市場を育成する。日本のフィルムメーカーが果たす役割はまだまだ大きく、次世代の市場・製品の創出や拡大をどう進めていけるかが問われている。

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Aパターン
  • 注目セグメントの動向
  •  PETフィルム:2024年は前年比2ケタ増と急回復、2025年以降は年間3~5%の安定成長期へ
     PIフィルム:ICT関連製品の混乱の影響は2025年に払拭、以後、実需に合わせた安定的な成長へ
     MLCCリリースフィルム:2024年にはピーク時の2021年を超える規模まで回復
  • 注目トピックの追加情報
  •  事業のフィールドが狭まる中、次の柱となりうる新製品の開発がようやく始まる
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    調査要綱

    1.調査期間: 2025年4月~7月
    2.調査対象: フィルムメーカーやコンバーター(日本、韓国、台湾)
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンラインを含む)、ならびに文献調査併用

    <高機能フィルムとは>

     本調査における高機能フィルムとは、ディスプレイ・光学、電気・電子、一般産業用のベースフィルム(原反)及び加工フィルムを指し、PETフィルム、PIフィルム、MLCCリリースフィルム、リサイクルフィルム(Film to Film)、次世代市場に向けて新規開発中の高機能フィルム等が含まれる。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    PETフィルム、PIフィルム、 MLCCリリースフィルム、リサイクルフィルム(Film to Film)、 次世代市場に向けて新規開発中の高機能フィルム

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2025年07月31日
    体裁
    A4 232ページ
    価格(税込)
    198,000円 (本体価格 180,000円)

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    マーケティング本部 広報チーム
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