プレスリリース
No.3934
2025/12/19
医療情報システム市場に関する調査を実施(2025年)

2024年度の医療情報システム市場規模は3,000億円を突破
~2024年度の中小規模一般病院向け電子カルテ市場規模678億2,900万円のうち、クラウド型が占める割合は12.3%(83億2,900万円)~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の医療情報システム市場を調査し、セグメント別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
ここでは、2027年度までの医療情報システム市場規模推移・予測、および中小規模一般病院向け電子カルテ市場規模推移・予測について公表する。
医療情報システム市場規模推移・予測
医療情報システム市場規模推移・予測
中小規模一般病院向け電子カルテ市場規模予測(オンプレミス型・クラウド型別)
中小規模一般病院向け電子カルテ市場規模予測(オンプレミス型・クラウド型別)

1.市場概況

医療情報システムは業務効率化や情報連携を図るシステムとして、医療施設(病院や一般診療所)に導入されている。システムは電子カルテや医事会計などの基幹システム、PACSやRIS、臨床検査システムなどの部門システムから形成されており、医療における大きな変革にIT化は不可欠なツールとなっている。
また、2010年に診療録の外部保存が解禁されたことで民間事業者側のデータセンター等での診療情報の保管が認められ、院内にサーバーを設置するオンプレミス型に加えて、クラウド型の電子カルテシステムの普及が進んでいる。
さらに近年では病院における生成AI活用によるカルテ関連業務(カルテ記載や退院サマリの作成など)の効率化への期待が高まっており、電子カルテ導入の意義が一層高まっていると言える状況にある。

そのような中、医療情報システムは多くのシステムで普及率が高まったことで、新規導入中心からリプレイス中心の市場に移り、コロナ禍以前の2019年度までの医療情報システム​市場は概ね前年度比2%前後の推移となっていた。​
コロナ禍の影響による導入遅延などから2020年度の医療情報システム市場は前年度比3.2%減となったものの、2021年度以降回復傾向にあり、2024年度の同市場規模は3,018億3,900万円と3,000億円を突破した。

2.注目トピック

クラウド型電子カルテの採用は堅調に増加

クラウド型電子カルテのメインターゲットとなる医療施設は、一般診療所および、一般病院のうち中小規模病院(病床数300床未満)となっており、クラウド型システムは電子カルテの普及に貢献している。

一般診療所においては、新規開業の診療所におけるクラウド型電子カルテの採用率が急速に拡大している。2022~2023年に新規開業した全国のクリニック210件へのアンケート調査※では、開業時にクラウド型を採用した施設の割合は70.8%となっている。既存開業施設でも、クラウド型の採用が広がりつつある。
また、一般病院のうち、300床未満の中小規模病院においては、経営状態が厳しい中でも医師や看護師等の人材確保の観点から電子カルテ化のニーズが高く、初期費用や人的負担が抑えられるクラウド型電子カルテを採用する施設が増加している。さらに近年では、大規模病院向けクラウド型電子カルテの上市や大学病院におけるクラウド型電子カルテの採用もみられる。

​以上のような状況の中、2024年度の中小規模一般病院向け電子カルテ市場規模を678億2,900万円と推計し、2027年度には732億円になると予測する。そのうちクラウド型が占める割合は2024年度12.3%(83億2,900万円)から2027年度は14.6%(107億円)に増加すると予測する。

※ 「新規開業クリニックに関する法人アンケート調査を実施(2024年)」(2024年9月24日発表)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3601

3.将来展望

医療情報システムは、基幹システムや部門システムの多くでリプレイス中心の市場であることは変わらず、さらに更新周期も近年では8年程度に長期化しているとの声も多く、市場へのマイナス要因になっていると考えられる。このようなことから、2025年度以降の医療情報システム市場は前年度比1.0%未満の低い成長率で推移する見通しである。

医療情報システムのクラウド化については、一般診療所および中小規模病院向け電子カルテについては製品展開するシステムベンダーも多く、また普及も着実に進みつつある。一方で、大規模病院向け電子カルテや部門システムについては製品展開するベンダーは僅少であり、本格的な普及は2030年度頃からになる見込みである。

​医療情報システム、特に電子カルテにおいては、生成AIや業務用スマートフォンアプリ、予約・問診やPHRといった医療情報システム周辺のサービスの台頭と普及が、ビジネスモデルへ強い影響を及ぼす可能性がある。
電子カルテベンダーにおいては、これらのサービスをクロスセル(関連商品)や標準機能として展開する例も見られ始めている。特に生成AI活用によるカルテ関連業務の効率化への期待が高まっている中、電子カルテと生成AIは不可分な関係になると見込む。

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  • 注目セグメントの動向
  •  電子カルテ稼働施設数に占めるクラウド型の割合(一般病院、精神科病院、一般診療所別):2025/7時点で一般病院で18.6%、一般診療所で27.1%がクラウド型と推計
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  •  政府の医療DX施策における電子カルテ導入率の目標達成は厳しい見込み
     電子カルテの標準仕様と医療情報システムの今後の在り方
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    調査要綱

    1.調査期間: 2025年5月~9月
    2.調査対象: 国内の医療情報システムベンダー
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

    <医療情報システムとは>
    医療情報システム(EMR:Electronic Medical Record、EHR:Electronic Health Record)は、医療施設(一般病院や一般診療所など)における業務効率化や情報連携を図るシステム全般を指し、電子カルテ(オーダリングシステム含む)や医事会計などの基幹システム、及び放射線部門、臨床検査など部門システムより構成され、施設規模やニーズに応じて様々なレベルのシステムが構築されている。

    <医療情報システム市場とは>
    ​本調査における医療情報システム市場とは、基幹システム(電子カルテシステム、医事会計システム)や部門システム[医用画像管理システム(PACS)、放射線情報システム(RIS)+治療RIS、臨床検査システム、生理検査システム、手術情報管理システム、薬剤部門システム、栄養部門システム、診療情報管理システム、地域医療連携システム、リハビリ部門システム)、その他を対象とした。オンプレミス型、クラウド型いずれのシステムも含む。
    市場規模は、パッケージソフトウェアやシステムインテグレーション(構築・他システム接続)、クラウド(ASP)等を対象として、メーカー・総販売元ベースで算出した。

    <電子カルテ市場について>
    厚生労働省の「医療施設調査」によると、医療施設の種類は一般病院、精神科病院、一般診療所、歯科診療所に区分される。
    本調査における電子カルテ市場規模は、大規模一般病院(病床数300床以上)、中小規模一般病院(同300床未満)、精神科病院、一般診療所の種類別に算出した。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    一般病院、精神科病院、一般診療所向けの医療情報システム(オンプレミス型、クラウド型)

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2025年09月26日
    体裁
    A4 309ページ
    価格(税込)
    220,000円 (本体価格 200,000円)

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