2024年度の国内民間企業のIT市場規模は前年度比5.1%増の15兆8,200億円
~2025年度はWindows10サポート終了に伴う対応で支出が拡大~
1.市場概況
2024年度の国内民間IT市場(ハード・ソフト・サービス含む、公共分野や民間小規模事業者除く)は、IT投資額ベースで前年度比5.1%増の15兆8,200億円と推計した。2024年度は大企業を中心に老朽化した基幹系・情報系システムのリプレイスが堅調だった。また、ランサムウェア等の高度化するサイバー攻撃への対応を目的としたセキュリティ関連投資等も加速し、IT投資額が拡大した。
2.注目トピック
海外拠点では「情報セキュリティ」へのIT投資が堅調
本調査(2025年調査)では、国内の民間企業にアンケート調査を行い、500社からIT投資に関する回答を得た。そのうち、海外に拠点を持つ企業(164社)に対し、「海外拠点でIT投資が増加している分野」を尋ねた(複数回答)。結果は、「増えている分野はない」(39.0%)が最多であったものの、具体的な投資分野としては「情報セキュリティ」(31.1%)が最も多く、次いで「生産管理システム」(18.9%)となった。
当社が2011年度に実施した同様の調査結果(※)と比較すると、企業の優先分野は大きく変化している。2011年度は「生産管理システム」(57.7%)がトップで、「会計システム」(40.4%)、「販売管理システム」(32.7%)が続き、「情報セキュリティ」(20.2%)は4番目であった。
今回の調査で「情報セキュリティ」が投資分野の事実上のトップとなった背景には、世界的にサイバー攻撃の脅威が増大していることがある。海外拠点を持つ企業にとって、グループ全体での情報セキュリティ対策は、極めて重要な経営課題になっていると言える。
※2011年度調査:矢野経済研究所「2011 日本企業のグローバルIT戦略」(2011年9月発刊)に基づく再集計値、n=104、複数回答。2011年度は「不明・未回答」を除外し、2025年度は「増加している分野はない」を比較図表から除外している。両調査は回答企業属性や設問設計、調査手法が異なるため、単純比較には留意が必要である。
3.将来展望
国内民間企業のIT市場規模は、2025年度は前年度比5.8%増の16兆7,300億円、2026年度は同3.9%増の17兆3,900億円、2027年度は同3.1%増の17兆9,300億円と予測する。
2025年度は、Windows10のサポート終了に伴うOS移行やPCの買替需要が発生し、ハードウェアへの投資が増加している。あわせて、レガシーシステムの刷新やセキュリティ強化、業務システムのクラウド移行が進み、投資は順調に拡大すると予測する。さらに、生成AIをはじめとしたAIの活用に関する投資も活発化している。この投資には、AI関連サービスの利用料だけでなく、AIを最大限活用するためのデータ基盤の構築といった土台作りのための支出を含み、それぞれが大きく拡大する見通しである。
2026年度以降は、OS移行やPCの買替需要は2025年度ほどではないが残るため、その対応への支出は翌年まで続く。また、基幹システムの刷新や業務システムのクラウド移行、AI活用等への支出がIT投資額を押し上げる要因となる。一方で、円安や物価高、人手不足によるコスト上昇は投資計画の遅延・縮小要因になり得る。このような環境下では、必要度の高い領域から優先順位を付け、内製化の活用や標準化・自動化でコストとスピードを両立することが重要である。
オリジナル情報が掲載された ショートレポート を1,980円のお買い得価格でご利用いただけます。
【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
調査要綱
2.調査対象: 国内の民間企業等
3.調査方法: 民間企業に対するアンケート調査、ならびに文献調査併用
<国内民間IT市場とは>
本調査における国内民間IT市場とは、国内の民間企業のハードウェア、ソフトウェア、保守関連や運用管理・アウトソーシング等のサービス、ASP・クラウド等のオンライン・サービス他を対象として、IT投資額ベースにて算出した。公共分野(官公庁や自治体)や民間小規模事業者によるIT投資を対象としない。
また、同時に下記の要領で、民間企業に対しIT投資に関するアンケート調査を実施し、IT投資実態と今後の動向について、明らかにした。
※アンケート調査期間:2025年6月~9月、調査対象:国内民間企業等500件、調査方法:質問票送付は郵送及びeメール、回答は郵送及びオンラインを併用した。
<市場に含まれる商品・サービス>
国内民間企業のIT投資(ハードウェア、スクラッチ開発とパッケージ導入【カスタマイズを含む】等のソフトウェア、保守関連や運用管理・アウトソーシング等のサービス、ASP・クラウド等のオンライン・サービス、回線利用料、その他コンサルティングなど)
出典資料について
お問い合わせ先
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。
