2030年のマテリアルDX世界市場規模は3兆円超を予測
~今後は材料開発のスピードが飛躍的に加速し、データ駆動型アプローチへの本質的な移行が進みつつある見通し~
1.市場概況
従来のマテリアル(物質・材料)開発は技術者の経験や知見と試行錯誤に依存する探索型が主流であったが、近年では、スーパーコンピュータやクラウド環境の高度化により、計算科学やシミュレーションの実用性が格段に向上したことで、物質・材料特性を事前に精度高く予測し、開発プロセスの大幅な効率化が期待できる段階となってきた。マテリアルは情報通信、エネルギー、医療、環境など広範な分野に関わる基盤技術であり、現代社会が直面する複雑な課題の解決に不可欠な要素である。
現下、マテリアルDX は、プロセス・インフォマティクス(PI) の台頭により新たな発展段階を迎えようとしている。従来のマテリアルDX が、材料データベースや組成予測モデルを中心としていたのに対し、最新のアプローチでは、製造プロセス全体のデジタルツイン構築(現実世界から集めたデータを基にデジタルな仮想空間上に双子(ツイン)を構築し、さまざまなシミュレーションを行う技術※)が焦点となっている。材料探索からプロセス探索へのパラダイムシフトは、単なる技術トレンドの変化にとどまらず、材料開発手法そのものの転換を意味するようになってきている。
2025年のマテリアルDXの世界市場規模(4分野計)は、メーカー出荷金額ベースで1兆371億8,000万円を見込む。材料分野別の内訳をみると、有機材料インフォマティクスが全体の41%、次に無機材料インフォマティクスが37.9%、プロセス・インフォマティクス(PI)が16.6%、計測インフォマティクス(計算科学とシミュレーション技術)は4.5%となる見込みである。
※出典:総務省ホームページ (https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/html/nd217530.html)
2.注目トピック
有機マテリアルDXの最大の特徴は、有機分子特有の構造・機能の自由度の高さにある
有機材料はその柔軟性、軽量性、成形自由度といった特性から、エレクトロニクス、エネルギー、バイオ・医療、環境関連分野など幅広く応用されている。
ただ、有機材料の開発プロセスは、分子構造の多様性やプロセス条件に影響を受けやすく、無機材料に比べて煩雑化する傾向がある。これに伴い、実験主導型の開発手法では、膨大な試行錯誤を要することが開発期間の長期化やコスト増大を招く要因になっている。
このような背景のもと、有機材料分野においても、デジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が急務となっている。とりわけ、実験データ、計算科学による予測データ、機械学習アルゴリズムなどを統合的に活用する、データ駆動型科学の考え方に基づくマテリアルズ・インフォマティクス(MI)の手法を有機材料開発に適用する動きが加速している。これにより従来に比べて格段に効率的な材料探索と性能予測が可能になりつつある。
3.将来展望
2030年のマテリアルDXの世界市場規模(4分野計)は3兆1,653億5,000万円になると予測する。材料分野別の内訳をみると、有機材料インフォマティクスは約1兆3,392億円(全体の42.3%)、無機材料インフォマティクスは約1兆2,339億円(同39%)、プロセス・インフォマティクスは約4,604億円(同14.5%)、計測インフォマティクス(計算科学とシミュレーション技術)は約1,317億円(同4.2%)まで成長すると予測する。
マテリアルDX は、単なる技術革新にとどまらず、材料開発の考え方そのものを変革するものである。個別技術の進展に加え、材料データインフラの整備、標準化や自動化、研究者や技術者、AI エージェント間の協働、そして、異分野融合とオープンイノベーション(社内外の異なる技術・知識・アイデアを組み合わせ、単独では困難な革新的価値を創出する手法)を組み合わせることによって、従来の枠組みでは実現できなかった高速、かつ効率的な材料探索が可能となる。
今後、マテリアルDX は、研究開発サイクルを飛躍的に加速すると同時に、次世代社会を支える基盤技術としての位置付けを確立するものであり、産業への応用や社会課題解決に直結させることが次のステップになるものと考える。こうした観点から、概してマテリアルDX は、研究者、技術者、企業、行政など、産学官で横断的に材料開発の方向性を戦略的に考え、実装していく上での指針となることが期待される。
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計算科学とシミュレーション技術
AI・機械学習による材料設計
有機材料インフォマティクス
無機材料インフォマティクス
革新的材料創出を目指す文部科学省「マテリアルDX プラットフォーム」
調査要綱
2.調査対象: マテリアルDX市場におけるデバイス関連の技術研究機関、製造販売または取扱企業等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<マテリアルDX市場とは>
従来のマテリアル(物質・材料)開発は技術者の経験や知見と試行錯誤に依存する探索型が主流であったが、近年では、スーパーコンピュータやクラウド環境の高度化により、計算科学やシミュレーションの実用性が格段に向上したことで、物質・材料特性を事前に精度高く予測し、開発プロセスの大幅な効率化が期待できる段階となってきた。マテリアルは情報通信、エネルギー、医療、環境など広範な分野に関わる基盤技術であり、現代社会が直面する複雑な課題の解決に不可欠な要素である。
本調査におけるマテリアルDX市場とは、プロセス・インフォマティクス(PI)、計測インフォマティクス(計算科学とシミュレーション技術)、AI・機械学習を活用した材料設計、有機材料インフォマティクス、無機材料インフォマティクスのを対象とし、このうち、AI・機械学習を活用した材料設計を除く4分野における世界市場規模(4分野計)をメーカー出荷金額ベースで算出している。
<市場に含まれる商品・サービス>
マテリアルDXによるプロセス・インフォマティクス、計算科学とシミュレーション技術、AI・機械学習による材料設計、有機材料インフォマティクス、無機材料インフォマティクス、に関連した各技術における関連材料・開発およびサービスなど
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