ニッチ分野から始まる社会実装
手間はかかるが、現状では王道で最短
1.市場概況
現在のにおい関連の課題は、においの強弱を測定し、業務フローの中で改善をすることで対応している。識別することによる解決方法の方が効率的だとしても、それを実現する装置・機器には費用対効果が合わないことが多い。そのため、においセンシング市場は、世界でも限られたプレーヤーしか事業化できていない。
そもそもにおいのセンシングが難しいことが市場拡大のハードルになっている。主な要因として以下の3点が挙げられる。
1 、においの原臭が存在しない
2 、測定濃度の幅が広い
3 、人間の鼻に到底届く性能にない
また、においのセンシングにおいて、最適なセンシング方式が確定していない。各種特徴のあるセンシング方式は存在するものの、得意/不得意がある。さらに、においセンシングに対する支払い意欲が低いことも課題である。人間の嗅覚で代替できるとの認識が根強く、においセンサを購入しても即座に活用できないケースが多いため、メーカーによる伴走支援が必要となり、導入・運用に手間がかかることが多い。
こうしたことからにおいセンシングの世界市場規模は2026年に24億3,592万円と見込む。
なお、においセンシングの市場はにおいセンサ(最終アプリケーション)とセンサ素子(内蔵されるデバイス)、得たデータを解析、表示などするためのソフトウェア、また、これらの一部またはすべてと人的リソース、ノウハウなどを活用したコンサルティングにて構成される。
2.注目トピック
農業・健康分野におけるにおいセンシング活用事例
【農業分野】
作物の成長スピードは気候や天候などによって左右されるため、農家の経験や感覚を頼りに収穫が行われることが多い。近年ではAI の台頭によって視覚や触覚、聴覚そして嗅覚のセンシング技術が開発されている。
農作物はにおい物質のガス濃度が0.01%以下と非常に薄く、高い感度が得られる半導体式ガスセンサが用いられることが多い。しかし半導体式ガスセンサでは物質の識別性が不十分な場合も多く、多種多様なガス分子が関係する果物のにおいなどでは評価が難しく、その場合ガスクロマトグラフィー分析を利用することになる。そのため果物のにおい評価ではにおい物質の総合的な濃度評価を行うものが多い。
また、果物が熟したときに出るエチレンガスに対象を絞り、熟度の評価を行う例や、農作物が腐敗したときに出る有機酸、アルコール類、酢酸エチルなど、測定対象を特定のガス物質に絞ることによって評価を行っている例もある。これはアンモニアなどの悪臭検出も可能であり、畜産業における臭気評価にも活用も期待される。
【健康分野】
病の中には独特なにおいを発生させる病もあり、嗅覚センサによって病の早期発見が可能な時代が到来しつつある。
大学事例となるが、呼気からがん診断が可能になる技術を開発。嗅覚センサであるMSS と機械学習を組み合わせて、手術前後の肺がん患者の呼気を分析し、がんの有無を予測する機械学習モデルを構築した。
今後は各種ガス分析装置を用いた実験と組み合わせ、肺がんの存在を占める分子の特定を行うだけではなく、様々ながんに対応したスクリーニング方法として技術開発を進めていきたいとしている。
研究所の事例となるが、ガスセンサ素子の開発に加えて、複数のセンサを搭載したセン
サアレイおよびデータ解析技術を開発し、従来技術では困難であった極低濃度アセトンの検知等を実現した。糖尿病患者は呼気や皮膚ガス中のアセトンが高い特徴を持つため、実用化が進むことで、早期での治療を開始することが可能となる。
3.将来展望
においセンシング市場では、ニッチな領域から社会実装が進む見通しであるが、PoC(概念実証)から正式契約・運用開始に至る最初の一歩は難易度が高く、事業化や継続に苦戦するケースが多い。
ブルーオーシャンの中のブルーオーシャンに進み、市場のメインプレーヤーとなることは、市場を創りつつ拡大させていかなければならない。
この両方を実施しながら、競合の脅威に負けないような開発・販売体制を敷きつつ、次々と顕在化する課題に対応しなければならない。
現在既にいくつかのプレーヤーが取り組み始めているが、今後、単一のセンサだけでなく複数のセンサを活用したシステムを構築し互いの弱点を補うようなラインアップをすることで多くの顧客のニーズを満たすことを狙うことで、においセンシングの事業化成功率が高められている。
また、においのセンシングだけでなく、再現(アウトプット)含めたにおいビジネスの兆しが現れている。出力側(アウトプット)のニーズの高まりから、センシング(インプット)の市場が構築、発展する可能性もある。出力側(アウトプット)の動向にも注目し、適切な対処をすることでセンシングにおける社会実装が進む可能性がある。
こうした状況から、においセンシングの世界市場規模は2035年に196 億8,340万円に成長すると予測した。
出典資料について
2026年版 においセンシング市場の現状と展望
価格(税込): 198,000円 (本体価格 180,000円)
調査要綱
2.調査対象: においセンサ(「非特異的な電子センサの配列とパターン認識システムで構成される機器」)※いわゆるにおいの強弱を測定する装置ではなく、(におい分子によるパターン認識によ り)においを識別することができる装置である。 ※においの強弱だけを測定するものは対象外であり、また、ガス警報器やアルコール チェッカーなどの特定ガスの検知をする装置も対象外となる。 ※ガスクロのようにガス成分を分解して解析するような分析装置機器も除く。
3.調査方法: 当社専門調査員による直接面談取材(一部Web会議システム等を活用)
<においセンシング市場とは>
当レポートにおける、においセンサの定義は以下のとおりである
「非特異的な電子センサの配列とパターン認識システムで構成される機器」
※いわゆるにおいの強弱を測定する装置ではなく、(におい分子によるパターン認識によ
り)においを識別することができる装置である。
※においの強弱だけを測定するものは対象外であり、また、ガス警報器やアルコール
チェッカーなどの特定ガスの検知をする装置も対象外となる。
※ガスクロのようにガス成分を分解して解析するような分析装置機器も除く。
<市場に含まれる商品・サービス>
においセンサ、センサ素子、ソフトウェア、においコンサルティング
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