プレスリリース
No.4132
2026/06/24

種苗市場に関する調査を実施(2026年)

2025年度の国内総種苗市場規模は前年度比99.9%の2,282億円の見込
~高温耐性品種や省力化対応苗への需要が拡大~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の種苗市場を調査し、各作物種類別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。

国内総種苗市場規模推移
国内総種苗市場規模推移

1.市場概況

2025年度の国内総種苗市場規模は、生産者(メーカー)国内出荷金額ベースで前年度比99.9%の2,282億円を見込む。

内訳をみると、種子市場は前年度比99.3%の1,163億円の見込みである。日本の農業は就農者の高齢化や後継者不足を背景に、就農人口※1や作付面積※2の減少が続いており、市場は微減傾向で推移している。(データ出所:※1:農林水産省「農林業センサス」、※2:農林水産省「耕地及び作付面積統計」)


一方、苗市場は前年度比100.5%の1,119億円となる見込みである。野菜苗を中心に、接ぎ木苗(※3)やセル苗(※4)、メリクロン苗(※5)の普及が進み、省力化や収穫量安定化を目的とした需要が拡大している。特に温室やビニールハウスなどを利用した施設園芸分野では、定植作業の効率化や生育の均一化を目的とした苗利用が定着しており、市場を下支えしている。

こうしたなか、国内総種苗市場は、種子市場の縮小を苗市場の拡大が補完する構図となっている。

※3 接ぎ木苗とは、地下部の根の台木と地上部の茎葉の穂木を接ぎ合わせした苗のこと。双方の性質の長所を持ち合わせ、連作障害や病害虫に強く、生産性に優れた、育てやすい苗ができる特徴がある。
※4 セル苗とは、小さいくさび形のポットが連結して並んでいる育苗パネルを用いて生産した苗のこと(セル成型苗ともいう)。現在野菜や花卉の移植栽培の多くの場面でセルトレイが活用されており、セルトレイから苗を抜き取って植付けるまでの作業を自動的に行うことができ、野菜生産における省力化に貢献している。
※5 メリクロン苗とは、新しい芽の中から1ミリくらいの生長点を取り出し、無菌の培養基の中で増やす方法で生産された苗のこと。無菌的に培養・増殖された苗を意味しており、この技術によって、品質差のない同質の苗を大量に生産することができる。

2.注目トピック

新たな育種技術の届出が進展、異業種企業による種苗事業参入

近年の種苗市場では、AIやデータ解析技術、遺伝子情報の活用をはじめとする育種技術の高度化が進んでいる。これらの技術の発展により、従来は10~20年以上を要していた新品種開発についても、高温耐性や耐病性など、求められる特性を効率的に選抜・評価することが可能となり、育種期間の短縮や開発の効率化が期待されている。

こうした育種技術の進展を背景に、日本では2019年10月よりゲノム編集食品の届出制度※6の運用が開始され、これまでに健康機能性を高めた高GABAトマトや食感を高めた高アミロペクチントウモロコシなどの届出が進んでいる。現在は、高温耐性、収穫量向上、病害虫抵抗性の付与などを目的とした研究開発が進められており、気候変動への適応技術としても期待が高まっている。
※6. 出典:農林水産省ウェブサイト「ゲノム編集技術の利用により得られた生物の情報提供の手続」(https://www.maff.go.jp/j/syouan/nouan/carta/tetuduki/nbt_tetuzuki.html)

また、近年は異業種企業による種苗事業への参入も注目されている。2025年には、大手自動車部品メーカーが本格参入し、自動車産業で培ったセンシング技術やAI技術、製造ラインにおける産業ロボット技術を活用し、環境変化に強い品種開発や農作物を機械で収穫するなど施設園芸の高度化を目指している。

このほか、AIを活用したデジタル育種技術の実用化も進展しており、ゲノム情報や栽培データを活用した品種選抜の効率化が進んでいる。

3.将来展望

今後の国内における種苗市場は、就農人口※1や作付面積の減少※2など農業生産基盤の縮小が続くことから、大幅な市場拡大は見込みにくい。一方で、省力化や収穫量安定化を目的とした苗利用は今後も拡大するとみられ、種子市場の縮小を補完するものと考える。

特に気候変動への対応は、今後の種苗市場における最重要課題の一つである。異常気象の頻発により、高温耐性や耐病性などを備えた品種への需要は一層高まる見通しである。また、労働力不足への対応やスマート農業の普及を背景に、自動収穫機や産業ロボット技術などを活用した機械化・自動化との親和性を考慮した品種開発の重要性も高まると考えられる。

さらに、種苗メーカーは大手企業を中心に、海外市場への展開をより強化するとみられる。特に人口規模の拡大や経済成長が見込まれるアジア諸国※7(データ出所:国連(UN)「世界人口推計(World Population Prospects)」)では、現地需要や消費量の観点からも野菜種子の需要拡大が期待される。今後は単なる種子販売にとどまらず、現地の栽培環境や食文化に適応した品種開発、栽培指導、デジタル農業ソリューションを組み合わせた総合的な事業展開が重要になると考える。

世界的な気候変動が進むなか、種苗市場は供給量の拡大から、高温耐性や耐病性などを備えた高機能品種や、収穫される野菜・果実が海外への長距離輸送にも適した品質を実現できる品種開発など、高付加価値化を成長軸としながら、大手企業を中心に海外展開をさらに進めていくものと考える。

出典資料について

2026年版 種苗ビジネスの市場実態と将来展望

発刊日:2026年03月30日 体裁:A4 432ページ
価格(税込): 220,000円 (本体価格 200,000円)
※本プレスリリースに一部のオリジナル情報を加えたショートレポートもご購入いただけます。

調査要綱

1.調査期間: 2025年7月~2026年3月
2.調査対象: 種苗メーカー、種苗関連業界団体、官公庁等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話等によるヒアリング、アンケート 調査、ならびに文献調査併用

<種苗市場とは>

本調査における種苗市場とは、国内の農作物用の種子・苗をさし、野菜類、果樹類、穀物 類、花卉類、その他芝類、飼料用作物などを対象とする。市場規模は生産者(メーカー)国内出荷金額ベースで算出している。

<市場に含まれる商品・サービス>

農作物用の種子・苗(野菜類、果樹類、穀物類、花卉類、その他芝類、飼料用作物など)

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