自動車向けカーボンニュートラル燃料世界市場に関する調査を実施(2026年)
自動車向けバイオエタノールの世界消費量は2035年に1億8,621.8万kL、2025年比44.7%増と予測
~新興国の混合率引き上げと先進国の燃料規制強化が需要を押し上げ~
ここでは、2035年までの自動車向けバイオエタノールの世界消費量・平均混合率予測について、公表する。
1.市場概況
近年、自動車向けカーボンニュートラル燃料の世界市場環境は大きく変化している。特に、①第二次トランプ政権の発足によるエネルギー・通商政策の方針転換、②航空・海運におけるカーボンニュートラル燃料需要の本格化、③バッテリー電気自動車(BEV)中心の政策からそれ以外にも複数の技術を活用するといった自動車政策の修正、④採算性を重視した低炭素水素・合成燃料(e-fuel)プロジェクトの選別という4点が市場構造を変える主要因となっている。
米国の第二次トランプ政権は、国内の石油・天然ガス生産の拡大を進める一方、農業振興、エネルギー安全保障、貿易赤字の縮小という観点から、バイオエタノールやバイオディーゼルの利用・輸出拡大を支援している。航空・海運では、SAF(Sustainable Aviation Fuel)や低炭素船舶燃料の導入義務が本格化し、廃食油、植物油、バイオエタノールなどを巡る原料・用途間競争が強まっている。また昨今の中東情勢緊迫化、米・イランによるホルムズ海峡封鎖の影響から、エネルギー安全保障の重要度が一段と高まっている。
自動車分野では、バッテリー電気自動車(BEV)を中心とする電動化の方向性を維持しつつも、車両価格、充電インフラ、産業競争力、雇用への影響を考慮し、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、バイオ燃料などを組み合わせる現実的な移行経路が重視され始めた。一方、低炭素水素や合成燃料(e-fuel)では、高い製造コストや長期購入契約の不足を背景に、大型プロジェクトの延期、縮小、中止が相次いでおり、実需要と採算性を確保できる案件への選別が進んでいる。
2.注目トピック
バイオエタノール世界市場動向
自動車向けカーボンニュートラル燃料世界市場は、燃料価格や消費者の選択だけでなく、義務混合率、再生可能燃料供給義務、税制・補助制度によって需要が決まる政策主導型市場である。ガソリン需要が一定であれば、平均混合率の上昇に伴ってバイオエタノールの必要量もおおむね比例して増加するため、義務率の引き上げ時期、対象燃料、適用地域、除外規定が市場予測の主要な変動要因となる。
2025年時点では、各国の政策強度に大きな差がある。ブラジルは、ガソリンへの無水エタノール混合義務とフレックス燃料車(FFV)による含水エタノールの利用が進んでいることから、平均混合率が50.7%に達する。義務率もE27(エタノール27%混合)からE30(エタノール30%混合)へ引き上げられ、追加需要を生み出している。インドは、政府買取価格、原料対象の拡大、設備投資支援、国営石油会社による調達を組み合わせ、E20(エタノール20%混合)を実質的に達成した。
一方、米国、EU、カナダなどでは、一律の混合率よりも、燃料供給量や温室効果ガス排出量削減を求める制度が中心である。米国の再生可能燃料基準(RFS)は再生可能燃料識別番号(RIN)を用いて複数の再生可能燃料を組み合わせて履行し、EUの再生可能エネルギー指令(REDⅢ)ではバイオ燃料が再生可能電力、水素などと競合する。
今後は、日本、ベトナム、インドネシアなどで政策変更による市場の上振れ余地が大きい。義務混合率の導入や対象となる燃料種の拡大が実施されれば市場は大きく成長する一方、原料不足からの食料価格の上昇、財政負担、車両適合性を理由とした義務混合率の据え置きや引き下げは、下振れ要因となる。
3.将来展望
世界の自動車向けバイオエタノール消費量は、2030年に1億5,971.8万kL、2035年には1億8,621.8万kLへ拡大すると予測する。2025年比ではそれぞれ24.1%増、44.7%増となる見通しである。ただし、主要国で目標としている混合率への到達が進むことや、バッテリー電気自動車(BEV)の普及に伴ってガソリン需要が減少することから、年平均成長率(CAGR)は2025~2030年の4.4%から、2030~2035年には3.1%へ鈍化する可能性が高い。
需要拡大は、義務混合率の引き上げ、低炭素燃料規制、税制・補助制度など、各国の政策によって形成されるものとみる。最大市場の米国は、E15(エタノール15%混合)の普及を背景に、2025年の5,429.4万kLから2035年には6,316.0万kLへ16.3%増加すると見込まれる。ただし、ガソリン車の燃費改善やバッテリー電気自動車(BEV)の普及に伴うガソリン需要の縮小などから、成長は緩やかなものになると考える。ブラジルも、義務混合率の30%への引き上げやフレックス燃料車(FFV)の普及によって、2025年の3,444.9万kLから2035年には4,440.5万kLへ28.9%増加する可能性がある。
最大の成長市場はインドになるとみられ、E20(エタノール20%混合)の全国定着、自動車などの台数増加に伴うガソリン需要の増加、高濃度燃料やフレックス燃料車(FFV)の導入により、2025年の1,022.4万kLから2035年には2,789.8万kLへ約2.7倍に拡大する見通しである。日本も、低炭素ガソリンの導入と新車のE20(エタノール20%混合)対応によって、83.7万kLから369.1万kLへ約4.4倍に増加するとみられる。ベトナムやインドネシアも新たな成長市場となる可能性がある一方、EU、英国、中国は原料規制やバッテリー電気自動車(BEV)の普及などから低成長にとどまるものと考える。自動車向けバイオエタノール世界市場は、米国・ブラジルが中心的な存在であるものの、他国のシェア拡大により多極化が進む見通しである。両国の合計シェアは、2025年の69.0%から2035年には57.7%へ低下すると見込まれる。
出典資料について
2026年版 自動車向けカーボンニュートラル燃料市場の最新動向と将来展望
価格(税込): 198,000円 (本体価格 180,000円)
調査要綱
2.調査対象: 自動車関連事業者、燃料関連事業者
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話取材、ならびに文献調査併用
<自動車向けカーボンニュートラル燃料市場>
本調査では、脱炭素化に向けて変革を迫られる自動車関連事業者や燃料関連事業者の動向を調査した。
BEVシフトが減速する中で、もう1つの脱炭素手段としてのCN(カーボンニュートラル)燃料は、長期的な視点では合成燃料が有望視されるが、短期的にはバイオ燃料が現実的な選択となる。本調査では、自動車向けに燃料として使用されるバイオエタノール・バイオディーゼル、水素、合成燃料(e-fuel)を対象としている。
<バイオエタノール消費量予測について>
本調査におけるバイオエタノール消費量は自動車向けに燃料として消費されるバイオエタノールを対象とし、平均混合率は自動車向けに燃料として使用されるガソリン消費量(バイオエタノール分を含む)を分母として、そのうちのバイオエタノール消費量を分子として、算出した。
<市場に含まれる商品・サービス>
自動車向けカーボンニュートラル燃料(バイオエタノール、バイオディーゼル、合成燃料、水素)
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