プレスリリース
No.2853
2021/10/29
外食市場に関する調査を実施(2021年)

2021年度の外食市場は25兆8,000億円と予測
~前年度比では5.8%増と回復したものの、依然として厳しい状況が続く~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の外食産業の調査を行い、市場規模、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。

国内外食市場規模推移
国内外食市場規模推移

1.調査結果概要

2020年度(2020年4月~2021年3月)の国内外食市場規模(中食業態含む)は、前年度比19.3%減の24兆3,771億円と推計する。
外食産業市場は2015年度からプラス成長を続け、2019年度は30兆円台を上回ったが、2020年度は新型コロナウイルス感染拡大で店舗休業や営業時間の短縮を迫られ、巣ごもり消費の増加で消費者の外食に対する意向が減退し、市場規模は大きく縮小した。
業態別では、テイクアウト・デリバリーの需要を取り込めた洋食ファストフードのみ市場規模が拡大した。一方、その他業態全てで減少しており、同じくテイクアウト・デリバリー販売を強化している和風ファストフードや回転すし店で減少幅が小さくなったものの、店内利用を主体としている居酒屋・パブ・ビアレストランやディナーレストランの売上が大きく落ち込んだ。

2021年度の外食産業市場規模は25兆8,000億円と予測する。前年度比では5.8%増と回復が見込まれるものの、コロナ禍前の2019年度比では14.6%減となり、依然として非常に厳しい状況が続く。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が繰り返し発出される中で、テイクアウト・デリバリーが引き続き拡大している洋食ファストフードを始めとして多くの業態では前年度比でプラス成長となる見込みだが、居酒屋・パブ・ビアレストランについては酒類提供が厳しく制限されたことが影響し、前年度比20.7%減とさらに落ち込むものと予測する。

2.注目トピック

デリバリー・テイクアウト需要の拡大が続く

コロナ禍によって外食産業を取り巻く環境が大きく変化し、それに対応するための取り組みが生まれたが、その代表的なものがデリバリー・テイクアウトの急増である。外出自粛による来店客数の減少、店舗の休業や営業時間短縮により、店内飲食での売上が大幅に減少し、店内飲食以外で売上を補完する対応に迫られたことと、消費者の巣ごもり需要がマッチしたことが背景にある。
デリバリー・テイクアウト販売を後押し、市場の拡大に大きく貢献したサービスが「出前館」「Uber Eats」などのシェア宅配である。このサービスは手軽に食事を済ませたい消費者側の意向と、配達人員や配送用オートバイなどの維持コストを削減できる飲食店側のメリットが合致し、2016年頃より利用者と加盟店が増加する傾向にあったが、外出自粛要請を受けて需要が一気に高まり、飲食店の新たな販売チャネルへと成長した。

また、デリバリーサービスが一般化したことで、実店舗を持たずにデリバリーのみで営業する「ゴーストレストラン」が注目されている。キッチンのみで開業できるため、実店舗と比較して開業コストを大きく削減できる。「ゴーストレストラン」用のキッチンや設備を備え、さらに開業コストを抑えることができる「シェアキッチン」も増加している。
「ゴーストレストラン」では、業態・ブランドの変更も容易であり、出店にあたってのリスクを抑えることが可能になる。ただし、デリバリーに特化した「ゴーストレストラン」では実店舗とは異なるノウハウが必要になるため、売れるブランドやノウハウを提供するフランチャイズモデルも拡大している。

​コロナ禍が終息しても、在宅勤務の定着などライフスタイルの変化により、コロナ禍前の業績には完全に戻らないという指摘は多い。飲食店は原材料費3割、人件費3割、家賃1割という価格構造であるが、ITを活用した機械化やデジタル化により、この構造を打破できる可能性がある。その一環として、モバイルオーダーやデジタルメニュー、キャッシュレス決済が導入され、普及してきた。デリバリーサービスの急速な普及も同様であり、さらに、新たなツールとして配膳などを担うロボットへの注目も集まっている。これらは人員不足の解消、人件費削減に加え、コロナ対策としての非接触型サービスの提供に繋がる。コロナ禍を契機として変容したライフスタイルに対応した飲食店の形態であり、コロナ禍が収束した後にも必須の取り組みとなるだろう。

調査要綱

1.調査期間: 2021年6月~9月
2.調査対象: 国内の外食事業者、フードデリバリーサービス事業者、ゴーストレストラン・シェアキッチン事業者等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、eメール・電話による取材、ならびに文献調査併用

<外食市場とは>

本調査における外食市場とは、ファストフードやカフェ、ファミレス、すし、中華・ラーメン、うどん・そば、焼き肉、居酒屋、ディナーレストラン、料亭等の飲食店を対象に市場規模を算出した。飲食・テイクアウト主体で専門店舗を展開する業態のみに限っており、学校や病院、事業所などの給食、ホテルや旅館などの宿泊施設に付随する飲食などは含めていない。
また、ナイト市場(夜間をメインとして営業する業態)のうち、居酒屋・パブ・ビアレストランや料亭など、フード比率がある程度見込める業態は含むが、スナック・キャバレー・ナイトクラブなど、大半がアルコールの業態のほか、風俗営業などの業態は除外している。
​百貨店やスーパーのインストアでの販売分も併せ、持ち帰り弁当や総菜専門店等の中食業態を含む。但し、食品スーパーやGMS、コンビニエスンストア等の店頭でセルフ販売している弁当や総菜は対象外としている。

<市場に含まれる商品・サービス>

洋風・和風ファストフード、ファミリーレストラン、すし、居酒屋・ビアレストラン、ディナーレストラン、中華・ラーメン店、うどん・そば店、カフェ、焼肉店、その他専門店、持ち帰り弁当、総菜店など

出典資料について

資料名
発刊日
2021年09月30日
体裁
A4 158ページ
価格(税込)
137,500円 (本体価格 125,000円)

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