プレスリリース
No.3116
2022/11/01
バイオプラスチック市場に関する調査を実施(2022年)

2021年の国内バイオプラスチックの出荷量は8万8,530tと市場は大幅に成長
~雌伏の時を経て市場の飛躍は確実視、循環型社会の大きな潮流に乗る~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のバイオプラスチック市場の調査を実施し、市場動向や将来展望を明らかにした。

バイオプラスチックの国内市場規模推移
バイオプラスチックの国内市場規模推移

1.市場概況

2021年の国内バイオプラスチック市場規模(国内出荷量ベース)は8万8,530t、前年比で21.1%増加したと推計する(輸入レジ袋に配合されたバイオPE(ポリエチレン)を含む)。2019年までは緩やかな成長を続けてきたが、2020年(7万3,105t、前年比52.7%増)、2021年と2年連続で大幅に増加した。

主な要因としては、1)2020年7月から施行されたレジ袋有料化を機にバイオPEの需要が急増したこと、2)飲料用ボトル向けのバイオPET(ポリエチレンテレフタレート)の需要が大手飲料メーカーの本格採用に伴い急拡大したこと、3)持続可能なバイオプラスチックの導入方針や国の施策を関連事業者に示した「バイオプラスチック導入ロードマップ」※1や、プラスチック資源循環の取組を促進するための「プラスチック資源循環促進法」※2のもと、様々な業界においてこれまで様子見姿勢だったブランドオーナーが積極的に採用するようになってきたことがあげられる。

課題は、世界的なバイオプラスチック需要拡大により、PLA(ポリ乳酸)とバイオPEの供給のひっ迫状況が続いていることである。日本市場全体の40%近くを占めているPLAとバイオPEの供給不足は、市場成長の短期的な阻害要因となりかねない。原料メーカーによる生産設備の増強が計画されているが、それまでは生産余力のない状態が続く見通しである。

※1 出典:環境省、経済産業省、農林水産省、文部科学省(合同で策定)「バイオプラスチック導入ロードマップ」(2021年1月策定)
※2 出典:環境省、経済産業省「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(2022年4月施行)

2.注目トピック

マスバランス方式によるバイオマスプラスチックの登場

マスバランス方式によるバイオマスプラスチックとは、バイオマス由来の原料を、化学品生産の第一段階で石油化学製品由来の原料と混ぜて製造されたプラスチックのうち、バイオマス由来の原料使用比率を最終製品だけで判断するのではなく、原料、製造、商品化までのサプライチェーン全体で捉え、任意の製品に割り当てる物質収支(マスバランス)方式によって供給されるプラスチックである。石油化学製品由来とバイオマス由来の原料を物理的に分けることなく製造されており、顧客が調達した原料中に契約した割合の再生可能原料が実際に含まれていなくても、含まれていると見なすことができる。これにより、品質を落とさずにバイオマスプラスチックを開発・提供することや、CO₂の排出削減が可能になる。

マスバランス方式によるバイオマスプラスチックの特徴としては、原料が原則として非可食原料(廃食用油、トール油など)由来であること、既存の石化プラントを使用できるため設備投資負担を最小限に抑制できることが挙げられる。物理的分離(セグリゲーション)方式で生産された従来のバイオマスプラスチックにはない利点を有することから、第2世代の新規バイオマスプラスチックとして世界的に注目されている。

現在、日本市場で販売が開始されているのは、バイオPP(ポリプロピレン)、バイオPE、バイオPS(ポリスチレン)の主に3種類である。価格の高さとISCC PLUS認証※3の取得の遅れといった要因で今のところ採用実績は限定的ではあるが、世界の主要メーカーが取り組んでいることから、今後マスバランス方式によってバイオマス化されたプラスチックがますます増えていくことが期待されており、その動向が注目される。

​※3 国際持続可能性カーボン認証(バイオマスやリサイクル原材料の持続可能性認証プログラム)

3.将来展望

市場の成長の勢いはやや鈍るが、2022年の国内バイオプラスチック市場規模は9万2,580t、前年比4.6%増を見込む。市場全体が大きくなってきたことや、大手飲料メーカーがバイオPETの採用を一時中止するとみられること、バイオPEとPLAの供給不足の影響などから市場は一時停滞するものの、今後も市場拡大の大きな流れは継続するとみられる。

海外情勢および円安などを背景とする原燃料価格高騰に伴い、コストに対するユーザーの姿勢が厳しさを増しているのは痛手だが、一方ではSDGs経営を重視する企業方針の下、循環型社会に貢献するサステナブル素材としてバイオプラスチックの採用を前向きに検討する企業も増えており、全体としては後者の勢いが優勢である。

もっとも、成長はしているものの、市場規模は年10万tにまだ届かないレベルである。「バイオプラスチック導入ロードマップ」※1で示唆されている、2030年までに国内バイオマスプラスチック市場規模を約200万tに拡大させるという国の目標からは約20倍もの大きな開きがある。この差を少しでも埋めることに官民協働で取り組んでいくことが求められている。

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  • セグメント別の動向
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    調査要綱

    1.調査期間: 2022年4月~9月
    2.調査対象: バイオプラスチック原料メーカー、その他関連メーカー、エンドユーザー企業
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング、および郵送アンケート調査併用

    <バイオプラスチック市場とは>

    バイオプラスチックとは、使い終わったら水と二酸化炭素に還る「生分解性プラスチック」と原料に植物など再生可能な有機資源を含む「バイオマスプラスチック」の総称であり、本調査においても、この2つの環境調和型のプラスチックを対象としている。なお、市場規模にはバイオPE製輸入レジ袋を含む。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    ポリ乳酸、バイオPE、バイオPET、バイオPC、バイオPA、バイオポリウレタン、バイオPBS他

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2022年09月30日
    体裁
    A4 411ページ
    価格(税込)
    165,000円 (本体価格 150,000円)

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