プレスリリース
No.3362
2023/10/24
車載モータ世界市場に関する調査を実施(2023年)

新車供給量が回復し、2022年の車載モータ世界需要数量は前年比2.7%増の約31億個規模と推計
~BEVシフトの進展により次世代車領域車載モータの需要が急増し、安全性や快適性向上を目的としたシャシやボディ領域の搭載も進むAggressive予測では2035年の需要数量は約63億個~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、車載モータ世界市場の調査を実施し、地域別・車格別の車載モータ需要予測、システム領域別市場予測、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。ここでは、ワールドワイドにおける車載モータの需要予測について、公表する。

世界の車載モータの需要数量予測
世界の車載モータの需要数量予測

1.市場概況

カーボンニュートラルの実現に向けて開発が進む電動車(xEV: HEV(ハイブリット車)、PHEV(プラグインハイブリット車)、BEV(電気自動車)、FCEV(燃料電池車))に加え、燃費向上や排ガス規制対応、快適性・利便性や安全・安心の向上を目的として内燃機関車(ICEV)においても、パワートレイン、シャシ、ボディそれぞれの領域で電動化が進んでいる。
部品電動化の進展に伴い、急速に搭載数を増加させているのが車載モータである。2022年の車載モータ世界市場は、新車販売台数ベースで前年比102.7%の31億3,889万個と推計した。2022年は半導体不足などの問題が緩和したことから自動車生産が正常化し、新車供給量が回復したため、車載モータの需要数量も増加した。

2023年以降、部品不足による生産制限が緩和され、自動車の供給が正常化したことで、世界の自動車販売台数※は増加する見込みである。一方、物価高やインフレ率の上昇、利上げによる世界経済へのマイナスの影響は断続的に続くとみられる。世界自動車販売台数は欧州、米国、中国市場での需要回復、新興国における人口増に伴う販売台数の伸長により、2030年に9,686万台、2035年には1億429万台になると予測する。

※各国工業会データ等をもとにした矢野経済研究所推計値

2.注目トピック

米中新興OEMが先行して新技術を採用、BEVにおける技術トレンドを作る流れに

BEVの普及に伴い、次世代車領域の車載モータではSiC(シリコンカーバイド)パワー半導体搭載のEアクスルや、車載充電器、DC-DCコンバータ、バッテリマネジメントシステムを一体化したX-in-1タイプのEアクスルの市場投入、シャシ領域のモータではEMB(電動メカニカルブレーキ)、SBW(ステアバイワイヤ)の搭載が、2025年頃から急速に進む見通しである。

次世代車領域は、既にモータやインバータ、ギアを機電一体化したEアクスルが搭載され、xEVにおいて主流な製品となっている。中国新興OEM(自動車メーカー)では更にX-in-1タイプのEアクスルを開発し、低コスト化および小型軽量化を図っている。日欧米の従来OEMもX-in-1への開発に乗り出しており、また、巻線界磁モータの採用など環境負荷の軽減という観点での開発も進む。
シャシ領域では、統合制御による安全性向上を目的に、機械的な接続が無く電気信号でブレーキやステアリングなどを制御するバイワイヤ化が進行しており、2025年頃から米中新興OEMを中心にEMBやSBWの搭載が開始され、2021年末の調査時にはEMBの採用は2030年頃とされていたが、前倒しでの採用が進む見込みとなっている。EMBやSBWはユーザーメリットが少なくオーバースペックという指摘もあるが、OTA(Over the Air)を利用するAD/ADAS(自動運転/先進運転支援システム)の実装に備え、対応可能な高機能なハードウェアを搭載することを目的とした採用とみられる。
このように、米中新興OEMが積極的に新技術を自社製品に搭載し、技術トレンドをリードする形となっており、日欧米の従来OEMは後追いの流れが鮮明になっている。

3.将来展望

米中対立のデカップリングによるサプライチェーン混乱等のリスクを抱えているものの、今後も欧州、米国、中国や新興国を中心に自動車販売台数は伸長する見通しである。車両の電動化というトレンドから、主機モータや電動コンプレッサなど次世代車領域の車載モータを中心に需要も増加する見込みである。

そうしたことを踏まえて、BEVを中心に車両の電動化が進み次世代車領域の車載モータ需要や、安全性や快適性の向上を目的とした装備が増えてシャシやボディ領域の車載モータ需要が増加するシナリオを想定したAggressive予測では、2035年の車載モータ世界需要数量は63億746万個までの増加を予測する。
バッテリ価格の高騰などで車両の電動化が鈍化し、車両販売価格が上昇するなどの影響から、快適性向上の装備の搭載が遅れてシャシ/ボディ領域の車載モータ需要が抑制されたシナリオを想定したConservative予測では、2035年の車載モータ世界需要数量は57億8,767万個になると予測する。

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    調査要綱

    1.調査期間: 2023年7月~9月
    2.調査対象: 自動車システムメーカ、モータメーカ等
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mailによるヒアリング調査、ならびに文献調査併用

    <車載モータ市場とは>

    本調査における車載モータとは、スタータ(パワートレイン領域)や電動ブレーキ(シャシ領域)、パワーシート(ボディ領域)などに用いられるモータから、主機モータや電動コンプレッサなど次世代車領域のモータまで、サイズや出力を問わず車両に搭載されるモータを対象とする。但し、カーオーディオやナビゲーションシステムに使用されるディスクドライブ・HDD用モータ等の一部は対象外とする。
    本調査では、乗用車および車両総重量3.5t以下の小型商用車における新車販売台数をベースに、車載モータの需要数量を算出した。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    パワートレイン領域;スタータ、オルタネータ/ISG、電動過給機、電動ウォーターポンプ、電動オイルポンプ  シャシ領域;電動パワーステアリング、電動ブレーキ、電動パーキングブレーキ ボディ領域;パワーウィンドウ、パワーシート 次世代車領域;主機モータ、電動コンプレッサ

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2023年09月28日
    体裁
    A4 360ページ
    価格(税込)
    198,000円 (本体価格 180,000円)

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    マーケティング本部 広報チーム
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