プレスリリース
No.3836
2025/06/04
肥料市場に関する調査を実施(2025年)

2024年度の肥料市場規模は前年度比100.7%の3,309億3,900万円の見込
​​〜主食米作付面積の拡大により、市場規模は微増の見込~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内における肥料市場を調査し、市場規模、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

国内の肥料市場規模推移
国内の肥料市場規模推移

1.市場概況

世界的な人口増加や経済発展に伴う食糧需要の高まりに加え、肥料原料であるリン鉱石の中国による輸出規制などの国際情勢により、肥料原料の国際価格が高騰しており、肥料原料の国内における調達が不安定な状態となっている。

​2021年度以降、肥料原料のリン鉱石・塩化カリウム・尿素等の肥料原料価格の高騰や、製造コスト(エネルギーコスト)上昇に伴い、化学肥料の製品価格も値上げが相次いだ。その結果、肥料価格上昇を見込んだ直前の駆け込み需要等が発生したことから、2022年度の市場規模は大幅に拡大した。2023年度はその反動により大幅に需要が減少したことから、2023年度の肥料市場規模はメーカー出荷金額ベースで、前年度比77.6%の3,285億1,800万円であった。

2.注目トピック

プラスチック被覆肥料の被膜殻の流出防止における取り組み

被覆肥料(コーティング肥料)は水溶性肥料を硫黄や合成樹脂などで被覆し、肥料の溶出量や溶出期間を調節したものである。被覆によって肥料分の溶出を正確にコントロールすることで、従来の肥料にはない機能を備えた高性能の肥料として開発が進んできた。また、作物の生育に応じて肥料成分が溶け出すため、無駄が少なく肥料の投入量も減り、且つ施肥回数を削減できることから、作業を省力化でき、水稲生産者を中心に普及してきた。

このうちプラスチック被覆肥料(プラスチック被膜殻で覆われたコーティング肥料)は、プラスチック被膜殻を用いることで施肥時期をより高度にコントロールできる一方で、使用後のプラスチック被膜殻がほ場から海洋に流出することによる環境への影響が懸念されている。こうした中、肥料関連の団体である全国農業協同組合連合会、全国複合肥料工業会、日本肥料アンモニア協会は、「緩効性肥料におけるプラスチック被膜殻の海洋流出防止に向けた取組方針」※のなかで「2030年にはプラスチックを使用した被覆肥料に頼らない農業に。」を理想に掲げ、新しい技術(プラスチック使用量をゼロにした生分解性樹脂などの素材)の研究を加速化している。
​※出典:農林水産省ウェブサイト(https://www.maff.go.jp/j/seisan/sien/sizai/s_hiryo/hihuku_hiryo_taisaku.html)

一方、プラスチックを使用しない緩効性肥料は、肥料成分の溶出をコントロールしながらも、使用後の生分解性樹脂は基本的には土壌中で分解されることから、環境に配慮した肥料とされる。しかし現状では肥料分の溶出タイミングの正確な制御が難しく、被膜の強度、コスト面の制約等もある。メーカー各社ではコーティング樹脂(生分解性樹脂)が光や微生物の働きにより土壌中に分解、崩壊しやすくなるよう開発を進めているものの、速やかに、且つ分解させる技術はまだ確立されていない。

現下、被覆肥料における被覆殻の流出防止対策として、水田内に沈下させ水田外に出さない方法の周知徹底を行うとともに、生分解性を高めた原料の開発を業界一体となって進める必要があると考える。

3.将来展望

2024年度の肥料市場規模はメーカー出荷金額ベースで、前年度比100.7%の3,309億3,900万円に微増した。2024年の米価高騰により、主食米の作付面積を増やす地域が拡大すると見られる。

生産者はここ数年の肥料価格高騰により、施肥量を減らす傾向にある。そのため、単純な効果しかない汎用型肥料の利用量は減らす一方、プラスチックを使用しない緩効性肥料や有機質肥料などの環境保全型肥料や、有機化成や液体肥料などの省力化肥料(施肥回数を減らすことができ結果として作業の省力化に繋がる肥料)への需要は高まっている。

肥料原料価格は、今後の為替や世界情勢によっては影響を受ける状況にあることや、物流費も年々上昇している中、参入メーカーにとっては、スケールメリットを生かした全国農業協同組合連合会等や他のメーカーと連携した共同物流等の最適なサプライチェーンの構築、環境保全型肥料や省力化肥料などの高付加価値品の販売拡大などによって、肥料事業をより安定化させる必要があるものと考える。

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    調査要綱

    1.調査期間: 2024年12月~2025年3月
    2.調査対象: 肥料関連メーカー、培土・土壌改良材関連メーカー、飼料関連メーカー、全国農業協同組合連合会、その他関連機関・業界団体等
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリングならびに文献調査併用

    <肥料市場とは>

    本調査における肥料市場とは、複合化成肥料、配合肥料、有機質肥料、単肥、液体肥料、コーティング肥料、ペースト肥料、その他肥料を対象として、市場規模はメーカー出荷金額ベースで算出した。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    ①培土・土壌改良材(稲作用培土、農業園芸用培土、緑化用土壌改良材、家庭園芸用培土、微生物資材)、②肥料(複合化成肥料[高度化成、普通化成、NK化成、有機化成]、配合肥料、有機質肥料、単肥、液体肥料、コーティング肥料、ペースト肥料他)、③飼料(配合飼料、エコフィード飼料)

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2025年03月27日
    体裁
    A4 316ページ
    価格(税込)
    165,000円 (本体価格 150,000円)

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    マーケティング本部 広報チーム
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