半導体用CMPスラリー世界市場は2024年には前年比10%増の高成長
~生成AIやデータセンター向け半導体の需要拡大でCMPスラリーの市場拡大へ~
1.市場概況
CMPスラリーは半導体製造プロセスにおいてウエハー表面を平坦化する化学機械研磨(CMP:Chemical Mechanical Polishing Slurry)に用いられる微細な研磨粒子が分散した液体研磨剤で、半導体の平坦化技術として使用される材料であるため、CMPスラリー市場動向は半導体市場と連動する。生成AIやデータセンター向け半導体の需要拡大を背景に、2024年のCMPスラリー世界市場規模はメーカー出荷金額ベースで、前年比110.1%の 20.12億ドルであった。
2024年下期はDRAM、NANDなどメモリ分野での好調が好材料となった。半導体製造受注量が急増している大手台湾半導体受託製造企業向けの出荷量が大幅に拡大したほか、近年著しい成長を遂げている中国半導体製造メーカー及び中国半導体受託製造企業向けCMPスラリーの出荷量が増加したことを背景に2024年のCMPスラリー世界市場規模は二桁成長となった。
半導体用CMPスラリーは用途別にILD(Inter Layer Dielectrics:層間絶縁膜)やセリア(酸化セリウム)、P-Si(多結晶ポリシリコン)研磨用の酸化膜向けスラリーと、W(タングステン) や Cu (銅)バルク / Cu バリア研磨用のメタル向けスラリーに大別される。2024年は酸化膜向けスラリーが8.98億ドル、メタル向けスラリーが11.14億ドルであった。
2.注目トピック
先端ロジック向けを中心にCu系スラリーの好調が続く
メタル膜スラリーのうち、W(タングステン)スラリーはFinFET(半導体トランジスタの一種で3次元的に立体化されたチャネル領域をゲートが3方向から囲む構造)やGAA(Gate All Around:半導体トランジスタの技術の一つでゲート電極が半導体チャネルの周囲全体を囲む構造を持つもの)などの先端ロジック分野(高機能・高性能なロジック半導体を最先端の微細プロセス技術で製造する分野)で市場拡大が続く。Cu(銅)バルク/Cuバリアは先端ロジック向けのレイヤー増加に伴いスラリーの需要が急増しているため、好調な成長が続くと予測する。
特に2024年より大手台湾半導体受託製造企業向けの出荷量が急増しており、同企業に関連するサプライヤーはその恩恵を受けている。2025年以降大手台湾半導体受託製造企業では段階的にCu層は16層から23層まで拡大する見通しであり、今後もメタル膜スラリーの市場成長を見込む。
またコバルト(Co)、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)などの新材料の採用が一部進んでいる。
3.将来展望
2025年のCMPスラリー世界市場規模はメーカー出荷金額ベースで、前年比108.5%の 21.83億ドルを予測する。生成AIや新規データセンター等が先端的な半導体受託製造企業(ファウンドリー)やHBM(High Bandwidth Memory:高帯域幅メモリ)などのメモリ半導体需要を牽引した結果、CMPスラリーの需要も堅調に増加している。
2024年は前年比10%増の成長を遂げ、2025年は前年の成長率をやや下回るとみるが、半導体製造プロセスのなか、メモリセルとロジック部分をそれぞれのウエハーで製造し貼り合わせるハイブリットボンディングや微細化加工などによりCMPプロセスの工程数は増加傾向にあるため、今後も安定した市場成長を予測する。
オリジナル情報が掲載された ショートレポート を1,980円のお買い得価格でご利用いただけます。
【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】Aパターン
酸化膜CMPスラリー市場
調査要綱
2.調査対象: CMPスラリーメーカー、関連メーカー等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<CMPスラリー市場とは>
CMPスラリー(Chemical Mechanical Polishing Slurry)とは、半導体製造プロセスにおいてウエハー表面を平坦化する化学機械研磨(CMP)に用いられる、微細な研磨粒子が分散した液体研磨剤である。水などの液体、シリカやアルミナなどの研磨粒子、そして表面に化学的変質層を形成する化学成分から構成され、これらを同時に作用させることでナノレベルの平滑な表面を実現し、高集積化された半導体デバイスの製造に不可欠な材料である。市場規模はCMPプロセス(ILD(層間絶縁膜)、 STI(素子間分離)、 W(タングステン)、 P-Si(多結晶ポリシリコン)、Cu(銅)系)向け全体を対象とし、メーカー出荷金額ベースで算出している。
<市場に含まれる商品・サービス>
CMPスラリー
出典資料について
お問い合わせ先
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。
