プレスリリース
No.3897
2025/10/14
次世代型養殖ビジネスに関する調査を実施(2025年)

2024年度の次世代型養殖技術の国内市場規模(5分野計)は682億8,800万円
~今後は低魚粉飼料に加え、スマート水産などの拡大もあり、市場は拡大~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内における次世代型養殖技術を調査し、市場規模、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。

次世代型養殖技術の市場規模(5分野計)推移・予測
次世代型養殖技術の市場規模(5分野計)推移・予測

1.市場概況

人口増加などにより、世界の食料事情は不安定さを増している。農林水産省「食糧需給表」によると、日本人一人あたりの魚介類供給量は減少しているのに対し、世界的には水産物の需要が拡大しているとされる。

こうした中、国内外において国内の養殖水産物の安定した供給が求められている。本調査では、次世代の養殖技術として、ICT技術を活用した自動給餌機システムや飼育管理システムの「スマート水産」や、陸上で養殖する「陸上養殖システム」、魚から排出される排泄物等を使用して水産養殖と植物の栽培を同時に行う「アクアポニックス」、魚粉量を少なくした「低魚粉飼料」、昆虫を原料とした「昆虫飼料」の5分野の次世代型養殖技術を対象とした。

2024年度の次世代型養殖技術の国内市場規模(5分野計)は、メーカー出荷金額ベースで682億8,800万円と推計した。内訳は、低魚粉飼料が565億5,400万円、陸上養殖システム(半閉鎖・閉鎖循環式)が99億4,600万円、スマート水産(自動給餌機システム・飼育管理システム)は11億2,000万円、アクアポニックスが5億6,300万円、昆虫飼料が1億500万円であった。

2.注目トピック

国内でアクアポニックスの建設が本格化

アクアポニックスは、水産養殖と植物栽培を同時に行う仕組みであり、水産養殖を意味する「aquaculture」と水耕栽培を意味する英語「hydroponics」を合わせた造語(aquaponics)である。日本では2010年代より導入され、2020年代に入り本格化している。

アクアポニックスの特徴は、水を循環させて魚の養殖と作物の栽培を行う。水産養殖における魚の排泄物を植物の肥料(栄養)とすることで、本来廃棄される魚の排泄物を植物栽培に活用している。

アクアポニックスでの植物栽培は、水産養殖で使用した水を循環させるため、水耕栽培で実施し、栽培される作物はレタスなどの葉菜類やハーブ類が一般的である。

また、水産養殖で使用した水を植物栽培で使用するため、一般的に海水ではなく淡水が用いられ、チョウザメやティラピアなどの淡水魚を養殖することが多い。一方で、国内では水産養殖において海水魚の需要が高いことから、海水を利用したアクアポニックスの研究も進められている。

3.将来展望

2029年度の次世代型養殖技術の国内市場規模(5分野計)は、メーカー出荷金額ベースで777億6,300万円まで拡大すると予測する。内訳は、低魚粉飼料が627億1,100万円、陸上養殖システム(半閉鎖・閉鎖循環式)が98億9,300万円、スマート水産(自動給餌機システム・飼育管理システム)は28億2,300万円、アクアポニックスが17億9,800万円、昆虫飼料は5億3,800万円である。



スマート水産では、海面養殖の拡大や給餌の効率化等により、市場は拡大するとみる。

陸上養殖システムは、現在大規模な陸上養殖施設が建設されつつあり、2026年度にかけて市場は拡大していく。一方で、2027年以降は大規模陸上養殖施設の建設は落ち着くことから、2029年度は2024年度とほぼ同程度の市場規模を予測する。

アクアポニックスは国内での陸上養殖施設の建設数増加を背景に、今後も主に中堅企業から大手企業において導入が進むと同時に、海水を利用したアクアポニックスでの栽培作物や養殖水産物の多様化、陸上養殖への注目の高まりなどから市場は拡大するとみる。

低魚粉飼料では、今後も市場は堅調に推移するものの、魚粉価格の高騰は落ち着くことから、市場は微増程度で拡大すると考える。

昆虫飼料は、養殖水産物の免疫向上に注目が集まり、導入が進んでいる。こうした免疫向上が期待される高付加価値飼料であることに加え、国内でも大規模生産が行われることから、今後、昆虫飼料の​市場は拡大するとみる。

オリジナル情報が掲載された ショートレポート を1,980円のお買い得価格でご利用いただけます。

【ショートレポートに掲載されているオリジナル情報】
Aパターン
  • 注目セグメントの動向
  •  大規模陸上養殖システムが稼働、建設も続く
     低魚粉飼料と昆虫飼料
  • 注目トピックの追加情報
  •  ~農林水産省が輸出拡大実行戦略を改訂~
  • 将来展望の追加情報

  • 以下の 利用方法を確認する ボタン↓から詳細をご確認ください

    調査要綱

    1.調査期間: 2025年4月~7月
    2.調査対象: 次世代型養殖技術(スマート水産・陸上養殖システム・アクアポニックス・低魚粉飼料・昆虫飼料)を展開している事業者、養殖事業参入企業、関連官公庁・協会団体・研究機関など
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話等によるヒアリング調査、ならびに文献調査併用

    <次世代型養殖技術とは>

    本調査における次世代型養殖技術の市場規模とは、①スマート水産(自動給餌機システム・飼育管理システム)、②陸上養殖システム(半閉鎖・閉鎖循環式)、③アクアポニックス、④低魚粉飼料、⑤昆虫飼料の5分野の次世代型養殖技術を対象とし、メーカー出荷金額ベースで算出している。

    各々の市場の対象品目は以下のとおりである。
    ①スマート水産とは、自動給餌機システムと飼育管理システムの合算値である。
    ②陸上養殖システムには、養殖で使用する海水などを汲み上げて、水を循環させずに掛け流す「掛け流し方式」、使用する水を浄化し循環して使用する「閉鎖循環式」、一部の水を循環し一部の水を排出する「半閉鎖循環式」が存在するが、本調査では「半閉鎖循環式」と「閉鎖循環式」を対象とする。なお、市場規模には建屋や土地は含んでいない。
    ③アクアポニックスとは、養殖で発生する排泄物等を植物の栽培で使用し、養殖と植物栽培を一体的に行うシステムをさす。なお、市場規模には建屋や土地は含んでいない。
    ④低魚粉飼料とは、メーカー各社が魚粉量を少なくした低魚粉飼料として販売している飼料をさす。
    ⑤昆虫飼料とは、昆虫を原料とした飼料をさす。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    スマート水産(自動給餌機システム・飼育管理システム)、陸上養殖システム(半閉鎖・閉鎖循環式)、アクアポニックス、低魚粉飼料、昆虫飼料(昆虫タンパク質資料)

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2025年07月31日
    体裁
    A4 410ページ
    価格(税込)
    220,000円 (本体価格 200,000円)

    お問い合わせ先

    部署
    マーケティング本部 広報チーム
    住所
    〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
    電話番号
    03-5371-6912
    メールアドレス
    press@yano.co.jp
    ©2025 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
      本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
      報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
      利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。