お知らせ

2021年03月09日

世界イスラム経済レポート2020/21発刊イベント 開催報告

 株式会社矢野経済研究所(本社:東京都中野区)では、米国の調査・アドバイザリー会社であるDinarStandardとの協力のもと、日本で初めて世界イスラム経済レポート2020/21発刊イベントのウェビナーを、2021年1月26日に開催致しました。当日のイベント内容について、ご報告いたします。

世界イスラム経済レポート(SGIE) は、ドバイ・イスラム経済開発センター(DIEDC)の支援のもと、DinarStandardにより制作され毎年発刊されているレポートで、今年で8年目を迎えます。当レポートでは、ハラール食品、ハラール化粧品、ハラール医薬品、ムスリム観光、イスラム金融、モデストファッション、メディア・娯楽の7つのセクターで市場規模と成長性、投資動向、今後の事業機会について分析し、日本を含む世界各国の政府機関、グローバル企業、国際機関で利用されています。レポートの一部として、イスラム経済セクターの発展と支援エコシステムについて、各国をベンチマークする毎年恒例のランキング指標である世界イスラム経済指標(Global Islamic Economy Indicator)があり、今年の指標ではイスラム経済/ハラール市場の規模、規制の状況、認知度、そして社会的インパクトについて81カ国を対象に分析しました。

世界のイスラム経済動向
~ムスリム消費支出は2021年末までに回復し、2024年までに2.4兆米ドルに成長、イスラム金融資産は約3.7兆ドルに拡大する見通し~

■コロナ禍によりムスリム観光産業は大きな打撃を受けた一方で、ハラール食品分野は2019年とほぼ同様のレベルを堅持し健闘しました。
■2019/20年のイスラム経済関連企業への投資総額は118億ドル、前年比13%減となりましたが、投資総額の52%を占めるハラール食品関連企業への投資額は増えており、取引総額61億ドルとなりました。
■イスラム金融テクノロジーにおけるスクーク(イスラム債)のトークン化、サプライチェーンの変化、食品安全保障への投資、栄養補助食品の需要、国内観光、DXの加速など主要な投資機会の兆しが確認されました。
■イスラム経済は、2021年末までに主に食品を中心に回復の兆しがあり、2019年に2.02兆ドルであったムスリム消費支出は2024年までに2.4兆ドルに成長すると予測され、イスラム金融資産は2019年の2.88兆ドルから2024年までに3.69兆ドルに成長すると予測されます。

コロナ禍による影響は、新しい市場に転換/発展していく原動力となり、若年層中心のムスリム人口19億人の力強い消費力は、コロナ後の新常態においてますます世界の消費市場の成長の原動力となることが期待されます。


 

イベント開催のご挨拶~ムスリム市場は日本企業にとって新たな投資機会として期待~

1月26日に開催されたウェビナーでは、冒頭、主催者である矢野経済研究所の代表取締役社長の水越孝より、日本はコロナ禍により解決すべき問題や課題が前倒しされ、未来に向けての成長機会も前倒しされている状況にあり、グローバル化の流れの中、ムスリム市場は大きな可能性の一つであり、今こそ長期的な視点に立った新たな投資をはじめる時期であると期待を述べました。

次に、ドバイ・イスラム経済開発センター(DIEDC)の最高経営責任者(CEO)Abdulla Al Awar氏は、2020年はコロナ禍によりイスラム経済は大きな影響を受けたものの急速に回復し、特にハラール食品分野は今後も成長性が期待され、日本にとっても輸出機会や投資機会が多いにありますと、今後のの日本企業の輸出や投資に期待を寄せました。
 

DinarStandardの基調講演「世界イスラム経済レポート2020/21」調査結果報告~ハラール食品市場とフードテック向け投資機会が拡大 日本企業の投資活動にも期待~

DinarStandardのCEO兼マネージング・ディレクターであるRafi-uddin Shikoh氏と成長戦略担当ディレクターであるReem El-Shafaki氏により、2020/21年の世界イスラム経済動向の調査結果が報告されました。コロナ禍にあってイスラム経済も大きな影響を受けたが、ハラール食品とその周辺産業への投資は拡大しておりムスリム人口の消費支出の増加も期待され、今後もハラール産業と関連の資金需要の拡大が見込まれると報告されました。
また、日本については近隣国のイスラム経済のトップランナーであるマレーシアと、ムスリム消費市場で最大のインドネシアとの関係の中で多くの事業機会があり発展していく余地が大きいとの見解が示されました。アジア太平洋地域でのハラール食品、ハラール化粧品、ムスリム観光分野における事例が紹介され今後の日本企業の活躍の場や投資機会の可能性が示されました。

さらに、Rafi-uddin Shikoh氏は、中東における食品産業とフードテックの投資機会などについて、日本の投資活動の事例をあげて今後の日本の投資活動に期待を示しました。Reem El-Shafaki氏からは日本のツーリズムの潜在的な可能性について、コロナ禍でインバウンド需要は大きな影響を受けているが、今後のコロナ後の可能性として、安全性に配慮しながら日本の食文化や自然など体験する長期滞在型の旅行提案などはいまだ開拓しきれていないムスリム旅行者の取り込み戦略として有望であると述べました。

DinarStandardの報告を受けて、日本の今後のイスラム経済へのかかわり方について、イスラム経済の中の有力市場であるハラール食品市場において、ムスリム消費者に対する製品の品質保証と信頼のための第一歩として、日本企業による「ハラール認証」への取り組みは重要であり、今後は、OIC諸国におけるスタートアップ企業への投資や支援、技術移転等に関わる分野についても日本企業の活躍も可能性があり、期待していきたい領域であると、矢野経済研究所の神部主任研究員よりコメントさせていただきました。


 

マレーシア三井住友銀行による「イスラム金融について」の講演~成長市場であるイスラム教徒のマーケットの取り込みとしての「イスラム金融」~

マレーシア三井住友銀行の社長である甲斐中哲也氏は、アジアのビジネス強化の一環として2014年からイスラム金融に参入し、当行のイスラム金融サービスの顧客数は年々増えており、今後も注力していくと挨拶をされました。
また、同行イスラム金融課の土屋秀介氏よりマレーシアでの実務経験に基づくイスラム金融の基本について説明があり、日系企業がイスラム金融に取り組む意義として、「中東諸国の投資家の流入」と「成長市場であるイスラム教徒のマーケットの取り込み」をあげました。イスラム経済の拡大とともにイスラム金融も大きく伸長すると予測され、日本企業がイスラム金融を利用する可能性として「製造業」、その中でも特に「食品関連産業」を上げました。食品はそのエンドユーザーであるムスリム消費者にとって製品だけでなくその製造工程や資金調達なども含めて関心があり、イスラム金融を活用することは企業のイメージアップに貢献するという点で企業にとって利用価値があると述べました。
 

農林水産省輸出先国規制対策課による「日本の農林水産物・食品の輸出促進について」の講演~拡大している世界の食市場取り込みのための輸出促進政策 OIC諸国向け農水産物・食品輸出は拡大基調~

農林水産省食料産業局輸出先国規制対策課の伊藤優志課長により、日本の農林水産物・食品の輸出促進政策について講演がありました。持続的な国内産業の発展のため、日本の農林水産物および食品が、拡大している世界の食市場(成長市場)を取り込むことができるよう、輸出先国の規制対応と国内輸出元の規制対応支援に重点を置いて政策を実施していると説明がありました。
また、日本のOIC諸国向け農水産物・食品の輸出は2019年1-12月期において57カ国中49カ国への輸出実績があり、輸出総額は382億円、10年前に比べて国数で約2倍、金額では17倍以上の伸びとなっていると説明がありました。さらに2020年についてはコロナ禍の影響がありつつも、7月以降の農林水産物・食品の輸出は盛り返しており、直近の1-11月期の累計では、ほぼ前年(2019年)の輸出額と同レベルで推移しているとのことで、今後も農林水産物・食品の輸出拡大の可能性に期待していると述べました。(注:2020年1-12月期の輸出総額は、対前年比1.1%増の過去最高額9,223億円となった。)
最後に、政府の輸出拡大実行戦略について、中東エリアにおいて挙がっているのは寿司など日本食の需要拡大にあわせた日本産米の需要拡大など、さらに近年、中東地域で伸びている牛肉、ぶり、かつお、マグロなどの品目の輸出拡大に注力していく方向性であると説明がありました。農林水産省で毎年実施している調査では、中東の日本食レストランの数は2019年で約1,000店舗あり、コロナ後の日本食レストランを通じた日本産品の需要拡大にも期待を寄せていると述べました。
 

今回のセミナーでは、現在のコロナ禍にあってもムスリム人口の増加とその消費力は安定的に成長が期待されるということについて講演者全員の共通認識があり、成長するムスリム消費市場にかかわることで今後の事業や産業の発展の原動力の一つにしていきたいという思いが共有されました。

当日イベントセミナーは、世界13ヵ国のイベントとともに下記から動画を視聴することが出来ます。
世界イスラム経済レポート2020/21発刊イベント(2021年1月26日)動画はこちら

なお、「世界イスラム経済レポート 2020/21」を日本語で購読希望される方のために、要約版(日本語版)を当社から発刊いたしました。
資料目次等の内容やご購入希望の方は下記よりご覧ください。

世界イスラム経済レポート2020/21 要約版 日本語版

矢野経済研究所のOIC諸国(イスラム経済圏)のサービスと実績について

当社では、今後も海外の成長市場の一つとしてのイスラム経済圏における事業機会、投資機会について、日本企業への支援サービスを提供していきます。世界最大のハラール消費市場であるインドネシアを始めとし、東南アジア、中東、北アフリカ等の世界のハラール市場の調査、支援サービスについて、ご興味をお持ちの方は、気軽にお問い合わせください。

<主なサービス>

・市場調査/産業調査/企業調査/消費者調査の実施および各種情報提供
・OIC諸国進出支援
・現地企業との提携支援
・LPPOM MUIの教育部門IHATEC指導によるハラール認証取得支援(食品、化粧品、医薬品)
・LPPOM MUIの教育部門IHATECのハラール認証研修(食品、化粧品、医薬品)の実施
・ハラール認証、イスラム市場に関する社内研修の実施

<販売中の最新レポート>
世界イスラム経済レポート2020/21 要約版 日本語版
インドネシア・ハラール・ディレクトリ2020 日本語版
・世界のハラール食品市場レポート(2021年発刊予定)
・日本企業向け世界のハラール市場における事業機会(2021年発刊予定)
・OIC諸国の食品流通業者ディレクトリー(2021年発刊予定)

<2021年の実施予定のセミナー・研修>
化粧品のハラール認証セミナー(2021年4月8日)
インドネシアのハラール認証取得のための研修(2021年6月2~3日)
インドネシアのハラール認証取得のための研修(2021年9月29~30日)

<受託調査/コンサルティングの実績>
・官公庁向け実績:ハラールセントラルキッチン構築に向けた地域産業シミュレーション支援業務
・民間企業向け実績:製造パートナー企業の事業可能性調査、参入プレイヤーと業界構造および法規制に関する調査、食品の主要販売チャネルと主要プレイヤー・商習慣に関する調査等
詳細はこちらからご覧いただけます。

<インドネシアの認証機関LPPOM MUIとの共同プロジェクト>
矢野経済研究所は2014年よりLPPOM MUIと業務提携しセミナーおよび出版物(ハラールディレクトリー)の販売を開始し、2018年よりLPPOM MUIのハラール認証研修を日本企業向けに提供しております。同時に、LPPOM MUIおよび政府公認の教育研修機関のIHATECとの連携によりハラール認証取得におけるコンサルティングサービスを提供しております。

2014年 インドネシア「ハラール認証」取得のための基礎講座
2016年 インドネシアのハラール認証の現在と今後の行方
2018年 「ハラール認証」研修ツアーinバリ(Bali)島
2018年 ハラール研修(LPPOM MUI公式研修)日本版を開始
2019年 インドネシア政府によるハラール認証説明会
2019年 ハラール研修(LPPOM MUI公式研修)日本版
2019年 The International Halal Tourism Conference(スピーカーとして参加)
2020年 ハラール研修(LPPOM MUI公式研修)日本版(オンライン)6月と9月の2回実施
2020年 医薬品のハラール認証セミナー
2021年予定 化粧品のハラール認証セミナー(4月8日)
ハラール認証取得のための研修(2021年6月2~3日、9月29~30日)

その他、LPPOM MUI監査員を招聘した社内研修、認証取得のための事業所視察等も随時承っております。
詳細はこちらからご確認いただけます。

【お問い合わせ先】
株式会社⽮野経済研究所 イスラム経済担当
Tel:03-6866-7186 E-mail:halal@yano.co.jp

※イスラム経済とは
イスラム経済とは、「イスラム教の倫理や法律の構造的な影響を受けた製品やサービスを中心に提供している市場」のことを示し、世界の19億人のムスリム消費者の信仰に基づく倫理的な消費ニーズを推進しています。イスラム教徒の消費者は、世界で文化的にも多様で地理的にも分散している消費者で、イスラム教の信仰に基づく倫理的なニーズに影響を受け、「イスラム経済」と総称されるライフスタイル関連製品やサービスの分野で、2兆ドル規模のまとまった市場機会を牽引しています。(出所:世界イスラム経済レポート2020/21)