平成27年度税制改正、リスクは“その先”にある


4月1日、新年度の税制がスタートした。法人課税は実効税率の引き下げ、欠損金繰越控除の見直し、外形標準課税の拡大など、「稼ぎ」に対するインセンティブに課税のベクトルが向いた。
政府の目玉政策である“地方創生”、“賃上げ促進”関連では、本社機能の地方移転に対する優遇、「ふるさと納税」の簡素化、所得拡大促進税制の要件緩和などが目新しい。国境を越えた電子商取引への消費税課税(10月より)も注目に値する。

1人当り1000万円まで認められる「結婚・子育て資金贈与」もはじまった。この制度は2013年に新設された1人当り1500万円までの「教育資金贈与」に比べて、使途の自由度が高く、かつ、広範におよぶ。狙いは祖父母世代から子世代への資産移転、つまり、「シニアにお金を使わせる」ことにある。1600兆円を越える家計の金融資産の2/3をシニア世代が保有していることを鑑みるとマクロ的に正しい。

一方、2人以上の世帯における金融資産の平均値は1,182万円、中央値は400万円。そして、平均を下回る人が全体の7割、中央値を下回る人が全体の半数を占める(金融広報中央委員会、2014年調査より)。また、16.1%のこどもたちが貧困線(=122万円)以下の世帯収入の中で育つ(厚労省)。
「最良の教育を受ける」、「幸福な家庭を持つ」ための条件が特定の階層にのみ承継されるならば社会は徐々に固定化し、やがて途方もないナショナリズムと過激思想が芽生える。社会の多様性、健全性をどう維持するのか。「その先」にあるリスクを看過してはならない。

今週の”ひらめき”視点 03.29 – 04.02

 

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