“公共”の殻に閉じこもるな。企業版ふるさと納税も“個人版”の大胆さを


内閣府は、地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)の対象事業として6県81市町村から申請された102事業を認定した。同制度は民間資金を新たな自治体財源として活用することが狙い。企業の地方公共団体への寄付は従来税制でも約3割の節税が認められるが、本制度では更に3割程度の控除が上乗せされる。
事業の内訳は、地場産業や観光振興を通じて雇用創出を目指す「しごと創生」型の事業が74件、移住・定住の促進事業が12件、コンパクトシティの推進などまちづくり関連が10件、働き方改革が6件となった。
一例をあげると、北海道東川町の「冬季観光誘客による地方創生推進プロジェクト」にはアウトドア用品のモンベルが、鳥取県江府町の「遊休農地を活かした6次産業化推進事業」には東京本社から研究部門の一部を同町に移転するサントリープロダクツが寄付を表明した。

ところで、本制度では認定事業のそれぞれに事業成果を検証するための業績評価指標(KPI)が明示されている。上記の東川町の事業では国際的なスノーボード大会の開催により外国人宿泊者数をH27度13,000人からH28度に14,000人へ、江府町のプロジェクトは玄ソバの加工販売額をH27年度の1百万円からH31年度には1500万円へ拡大することが目標とされる。
個人版ふるさと納税では「行き過ぎた返礼品」問題が話題になったが、企業版では寄付の対価としての「経済的な見返り」は禁じられた。とは言え、節税とCSRからの動機付けでは「地方へ民間資金の還流」に限界がある。KPIの設定は評価できるが、更にもう一歩踏み込んで対象事業との直接的な事業シナジーが“公”の側から提案されても良いだろう。透明性の確保はもちろんであるが、狭義の公共性の枠内に留まっていては寄付以上の事業にはなり得ない。“行き過ぎ”たなら、是正すれば良い。成果を企業と地方が共有できるような制度的なイノベーションに期待したい。

今週の”ひらめき”視点 08.14 – 08.18

代表取締役社長 水越 孝

 

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