2025年の国内車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー、IT系半導体メーカー、マイコンベンダー)市場は6,790億円の見込み、2030年には1兆118億円に達すると予測
~2030年の構成比は、制御系が30.8%、車載IT系が12.8%、SDVソリューションが56.3%とSDVソリューションが5割強となる見通し~
ここでは、2030年までの車載ソフトウェア市場規模の予測、および制御系、車載IT系、SDVソリューションの構成比予測について、公表する。
1.市場概況
車載ソフトウェアは、大きく制御系と車載IT(情報)系に分類されてきた。制御系は自動車を電子的に制御する仕組みを担っている。一方、車載IT系は運転席周りのHMI(Human Machine Interface)やナビを中心としたエンタテインメント系、安全運転支援のADAS(先進運転支援システム)をはじめ、さまざまな車載関連システムが稼働する。
そうしたなか、数年前からCASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)に代わり、新たなキーワードであるSDV(Software Defined Vehicle)が注目を集めている。当初はコンセプトであったものの、SDVを前提として設計・開発されたソフトウェア群(SDVソリューション)が、IT系半導体メーカーを中心に2023年頃から相次いで市場に投入されており、その存在感は急速に高まりつつある。
本調査における車載ソフトウェア市場とは、制御系や車載IT系に加え、SDVソリューションを対象とする。ソフトウェア開発ベンダー、IT系半導体メーカー、マイコンベンダー(協力会社)から自動車メーカー(OEM)や自動車部品サプライヤー(Tier1、Tier2等)への渡し価格ベースで、市場規模を算出した。
2022年の車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー、IT系半導体メーカー、マイコンベンダー)市場規模は前年比131.5%の4,300億円、2023年が同132.1%の5,680億円、2024年は同115.7%の6,570億円と順調に拡大を続けている。
また、2024年の制御系、車載IT系、SDVソリューションの構成比については、制御系が構成比69.3%、車載IT系が同18.1%、SDVソリューションが同12.6%と推計した。
2.注目トピック
SDVにより制御系はコモディティ化、従来のソフトウェア開発ベンダーの役割が縮小する可能性
従来、ソフトウェア開発ベンダーの多くは、制御系を担うマイコンベンダーと自動車メーカー(OEM)や自動車部品サプライヤー(Tier1、Tier2等)の間に位置して、OEMに親和性や利便性の高いソリューションを提供する役割を担ってきた。ところが車載IT系ソフトウェアは2024年頃から2028年頃にかけて徐々にIT系半導体メーカーやマイコンベンダーによるSDVソリューション(SDVを前提として設計・開発されたソフトウェア群)に収斂していくとみられる。他方、制御系ソフトウェアについてもSDVの進展に伴い、製品の差別化が消失してコモディティ化していく可能性があるほか、上記のSDVソリューションから構成されるSDVプラットフォームの中へと取り込まれていく可能性が出てきている。
そうした状況において、今後、OEMがSDVプラットフォームを採用していく可能性が高まる。少なくとも車載ソフトウェアについては、従来のOEMを頂点とした垂直統合型のソフトウェア開発体制から水平分業型へとシフトしていくことが考えられる。結果として、OEMやTier1、Tier2とマイコンメーカーとの間に従来は位置づけられてきた、ソフトウェア開発ベンダーの役割が縮小していく可能性が高まってきている。一部の大手ベンダーの中には、既にその状況に危機感を持ち、勝ち残り策に向けた検討を進める事業者も出てきている。
3.将来展望
2025年の車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー、IT系半導体メーカー、マイコンベンダー)市場規模は6,790億円を見込む。制御系、車載IT系、SDVソリューションの構成比は、SDVソリューション(構成比19.7%)が車載IT系(同16.9%)を抜いて、2位となる見込みである。背景には、車載IT系ソフトウェアはIT系半導体メーカーやマイコンベンダーを中心に手掛けるSDVプラットフォームへと急速に収斂しており、車載IT系は前年比3.4%減、SDVソリーションが同61.4%増と急増していく点(見込み)がある。
また、今後、OEM各社はSoC(System-on a chip)の開発を含めたSDVに係るソフトウェア開発をさらに加速させていくことが見込まれる。ソフトウェア開発ベンダー、IT系半導体メーカー、マイコンベンダーはともに継続的に成長を続ける見通しである。2030年の車載ソフトウェア(ソフトウェア開発ベンダー、IT系半導体メーカー、マイコンベンダー)市場規模は1兆118億円に達すると予測する。構成比はSDVソリューションが56.3%と過半数を超え、1位になると予測する。
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調査要綱
2.調査対象: 車載用ソフトウェア開発ベンダー、IT系半導体メーカー、マイコンベンダー
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<車載ソフトウェアとは>
車載ソフトウェアは、大きく制御系と車載IT(情報)系に分類されてきた。制御系は、「走る・曲がる・止まる」などの各機能を担うECU※ユニット(CPU)から構成され、自動車を電子的に制御する仕組みを担っている。一方、車載IT系は運転席周りのHMI(Human Machine Interface)やナビを中心としたエンタテインメント系、安全運転支援のADAS(先進運転支援システム)をはじめ、さまざまな車載関連システムが稼働する。
そうしたなか、新たなキーワードであるSDV(Software Defined Vehicle)が注目を集めている。当初はコンセプトであったものの、SDVを前提として設計・開発されたソフトウェア群(SDVソリューション)が、IT系半導体メーカーを中心に2023年頃から相次いで市場に投入されており、その存在感は急速に高まりつつある。
※ ECU(Electronic Control Unit)とは車線維持システムや車間距離制御システムなどを電子制御するコンピュータで、近年、一台当たりの搭載数が増加しており、搭載体積やコスト増が課題となっている。
<車載ソフトウェア市場とは>
本調査における車載ソフトウェア市場とは、制御系や車載IT系に加え、SDVソリューションを対象とする。
また、自動車メーカー(OEM)がSoC(System-on a chip)も手掛けるようになってきたことを踏まえ、IT系半導体メーカーやマイコンベンダーも調査対象とし、協力会社であるソフトウェア開発ベンダー、IT系半導体メーカー、マイコンベンダーからOEMや自動車部品サプライヤー(Tier1、Tier2等)への渡し価格ベースで算出した。
なお、OEMや自動車部品サプライヤーが自社で開発する車載ソフトウェア費用や、研究開発費、設備投資等は含まない。
<市場に含まれる商品・サービス>
ソフトウェア開発ベンダー、IT系半導体メーカー、マイコンベンダー(協力会社)が手掛ける国内の車載ソフトウェア
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