プレスリリース
No.3932
2025/10/31
高機能分離膜世界市場に関する調査を実施(2025年)

高機能分離膜の世界市場は2032年に1,900億円規模に拡大を予測
 ~ CO2分離膜はバイオガス精製用途が成長を牽引、水素分離膜は 石油・化学分野の需要が底堅く推移する見通し~ 

株式会社矢野経済研究所(代表取締役:水越孝)は、高機能分離膜(CO2分離膜、水素分離膜)の世界市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
高機能分離膜の世界市場規模推移・予測
高機能分離膜の世界市場規模推移・予測

1.市場概況

分離膜は水処理や食品、医薬品、化学、石油、鉄鋼など幅広い産業分野で活用されている。なかでも、近年、カーボンフリーエネルギー源(温室効果ガスを全く排出しないエネルギー源)である水素の分離・精製等に用いられる水素分離膜や、CO2を他の物質に変換して利用するカーボンリサイクルやCCS(CO2回収・貯留) / CCU(CO2再利用)の経済性向上に貢献するCO2分離膜が機能性を高めながら、成長ステージに移行しつつある。本調査では、これら二つの分離膜を高機能分離膜と位置付けた。
​2024年における高機能分離膜の世界市場規模(メーカー出荷金額ベース)を750億円と推計する。内訳をみると、CO2分離膜世界市場は632億円、水素分離膜世界市場が118億円であった。

2.注目トピック

CO2分離膜の世界市場動向

CO2分離膜の分離対象となるガス排出源は、①プロセス工程でCO2除去されるガス、②環境対策目的でCO2回収を行うガスに大別できる。
前者には天然ガスやバイオガス、油田随伴ガス(原油生産に随伴して採取される天然ガス)など、後者には石炭火力発電所や石油化学、セメント、鉄鋼などの工場から排出される燃焼排ガスなどが含まれる。また、CO2の排出規模で中小規模(中小工場やバイオガス工場、ごみ焼却場等)と大規模(天然ガス田や石炭火力発電所、石油化学プラント等)の施設に分けることもできる。膜分離法は、これらの施設の中でエネルギー消費量が少なく、設備の小型化やプロセスの簡略化が可能といった特長を活かせる中小規模の施設との適合性が高い。
なかでも、近年はバイオガス精製用途の需要が拡大傾向にある。バイオガスは生ごみや家畜の糞尿などの有機物を微生物が分解するメタン発酵(嫌気性発酵)、あるいは熱によるガス化反応により発生する可燃性ガスである。主な成分はCH4(メタン)が約60%、CO2が約40%、その他微量のN(窒素)やO(酸素)、H2S(硫化水素)、H2O(水)等を含む。燃焼時に排出されるCO2が植物由来の炭素とみなされるため、発電や熱へのバイオガスの活用は再生可能エネルギーとして位置づけられる。

バイオガス利用の歴史は古いが、カーボンニュートラル社会の実現に貢献するエネルギー源であることや、ロシアのウクライナ侵攻を契機に化石燃料エネルギーの市場が不安定化したこと、廃棄物処理とエネルギー利用を同時に解決できることなどから、急速に注目度が高まっている。
なお、バイオガスは発電目的やガス燃料として燃焼してそのまま使用出来るため、従来は精製することでコスト高となるバイオメタンを生産する動きは少なかった。しかしながら、バイオメタンは既存の天然ガスインフラ設備に大きな変更を加えることなく利用できるため、その有用性が評価され始めている。
​こうした背景から、バイオガス精製設備への投資が活発化する傾向にあり、IEA資料※によるとバイオメタンの世界供給量は2023年に100億m3に達したものとみられる。バイオガスの精製プロセスには、他にも吸収法や吸着法も採用されているが、最近はエネルギー消費量が少ない膜分離法の導入が進んでいる。

※Reference:IEA 2024 [World Energy Outlook 2024],[ https://iea.blob.core.windows.net/assets/140a0470-5b90-4922-a0e9-838b3ac6918c/WorldEnergyOutlook2024.pdf ],License: [CC BY 4.0]

3.将来展望

今後、CO2分離膜ではバイオガス精製用途が成長を牽引し、水素分離膜は石油・化学分野での需要が底堅く推移していく見込みである。2032年にはCO2分離膜世界市場が1,771億円、水素分離膜世界市場は162億円の市場形成を予測する。
二つの分離膜を合算した高機能分離膜の世界市場規模は、2024年から2032年までのCAGR(年平均成長率)が12.6%で成長し、2032年の同市場規模は1,933億円になると予測する。

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    調査要綱

    1.調査期間: 2025年5月~8月
    2.調査対象: CO2分離膜および水素分離膜関連企業、および大学・研究機関等
    3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用

    <高機能分離膜市場とは>

    本調査における高機能分離膜市場とは、二酸化炭素(CO2)分離膜、および水素分離膜を対象とし、メーカー出荷金額ベースで算出した。
    CO2分離膜は混合気体における分子サイズの違い、膜材料への溶解性や拡散速度の違いを利用することでCO2を選択的に透過させることが出来る。水素分離膜とは、水素を含む混合ガスの中から水素だけを選択的に透過させる機能を持つ膜である。

    <市場に含まれる商品・サービス>

    CO2分離膜(天然ガス精製、バイオガス精製、排ガス処理など)、水素分離膜(石油・化学分野、半導体分野)

    出典資料について

    資料名
    発刊日
    2025年08月29日
    体裁
    A4 137ページ
    価格(税込)
    220,000円 (本体価格 200,000円)

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