プレスリリース
No.4081
2026/04/21
次世代地域交通市場に関する調査を実施(2025年)

2035年の次世代地域交通(既存交通再編、AIデマンド交通、自動運転バス)の国内市場規模は最大7,200億円と予測
​~空中戦ではわからない、「現場のリアル」から見える社会実装の課題と現実~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、次世代地域交通市場の調査を実施し、国内における関連市場の概況、社会実装の実態を明らかにした。ここでは、2035年までの次世代地域交通の運賃収入ベースの市場規模予測を公表する。


 

次世代地域交通の市場規模予測(運賃収入ベース)
次世代地域交通の市場規模予測(運賃収入ベース)

1.市場概況

国内の地域公共交通は、人口減少に伴う利用客の激減に加え、2024年問題に端を発する運転士不足の深刻化により、従来の定時定路線モデルが維持困難な状況に直面している。実際、地方部の路線バス事業者の大部分が赤字経営に陥っており、公費による赤字補填のみでは運転士の確保が不可能な段階に達している。また、全国で2,057地区、約1,400万人(人口の12.5%)が、ガソリンスタンドの減少やバス路線の廃止により、移動の自由を脅かされる「交通空白地区」に居住している。(出所:国土交通省「交通空白」解消に向けた取組方針2025」)

深刻さを増す地域公共交通の存続に対し、さまざまな自治体がAIデマンド
交通や自動運転バスの実証、導入を行っている。地域の生活機能を維持するための取り組みは過渡期にある。日本政府も2027年度までにAIデマンドの500自治体への導入や2030年までに国内バス約6万台のうち1万台を自動運転化させる目標を掲げている。

本調査では、自治体や交通事業者へのヒヤリングを通じて、現状と課題から地域交通の持続可能性を検証している。

2.注目トピック

自動運転バスの実装における「技術・採算」の壁と、マルチパーパス化による解決の方向性

現在、多くの自治体で導入が進む自動運転バスは、社会実装に向けた「技術的信頼性」と「経済的持続性」の二大課題に直面している。

技術面では、従来のプログラミングによる「ルールベース(障害物があれば停止するといった条件分岐による制御)」が限界を迎えている。路上駐車や街路樹の揺れ、逆光等に対しても過度に反応して急停車する傾向があり、これが「定時性の欠如」や「乗り心地の悪化」を招き、公共交通としての信頼性を損なう要因となっている。これに対し、解決の方向性として注目されるのが「E2E AI(エンド・トゥ・エンドAI)」への転換である。これは、AIが走行データを自ら学習し、周囲の状況を人間のように柔軟に判断する技術であり、従来の硬直的な制御を脱した滑らかな走行の実現が期待されている。

経済面では、人件費削減が目的でありながら、実際には「1台につき1人の遠隔監視員」が必要となり、省人化のメリットを享受できていない点が最大の課題である。一人の監視者が複数台を管理する「1:N(ワン・トゥ・エヌ)遠隔監視」体制を確立し、用途の多角化によって稼働率を極大化させることで、運賃収入を維持したまま​人件費を削減し、公費に頼らない自立した地域インフラの構築が必要となる。

3.将来展望

地域交通レジリエンス市場(SOM:獲得市場)は、2030年に3,000億円、2035年には最大で7,200億円規模に到達すると予測する。この成長を牽引するのは、単なる「バスの代替」に留まらない、地域インフラの構造的な再定義である。

2030年にかけては、運転士不足の深刻化により、交通空白地帯を抱える地方自治体の約50%で社会実装が普及期に入る。先行自治体での成功事例が蓄積されることで、導入障壁が低下し、市場は急速に立ち上がる見通しである。

2035年に向けては、導入率が対象自治体の90%超に達するとともに、大都市圏郊外のオールドニュータウン等へも市場が拡大する。このフェーズでは、「1:N遠隔監視」の確立による人件費圧縮分が「運行頻度の極大化」へと再投資される。これにより、利便性が自家用車に匹敵するレベルに達し、住民の支出が「車の維持費」から「地域交通サブスクリプション」への移行が本格化する。

最終的に市場は、地方市場と大都市圏市場を合計して7,200億円規模へと成長する。地域交通は、公費負担を前提とした「福祉」の枠組みを脱し、物流やデータ活用を統合した自立的な社会的アセットとして、地域経済を支える基盤へと進化すると予測する。

出典資料について

地域交通レジリエンスに関する実態調査 ~自動運転(特定自動運行)で公共交通は救えるか?~

発刊日:2026年03月27日 体裁:A4 154ページ
価格(税込): 198,000円 (本体価格 180,000円)
※本プレスリリースに一部のオリジナル情報を加えたショートレポートもご購入いただけます。

調査要綱

1.調査期間: 2026年1月~2026年3月
2.調査対象: 地域交通政策に積極的な地方自治体 、地域公共交通サービス事業者 等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含)、電話等によるヒアリング、ならびに文献調査併用

<次世代地域交通とは>

本調査では、日本国内における地域住民の日常生活や社会活動、観光客の移動を支える公共交通機関の中でも空港や鉄道主要駅などの一次交通は除外し、最終目的地である自宅や観光地や宿泊施設へと移動するための二次交通を調査対象とした。

二次交通には鉄道、バス、タクシー、レンタカー、シェアサイクル等があるが、本調査では地方における路線バスとタクシーを対象とした。その理由は、利用者減少や運転士不足の深刻化による赤字、廃線が増加する危機的状況に瀕しているためである。

高齢化と人口減少が激甚化していく日本において地域公共交通の維持は、地方経済の基盤そのものに大きな影響を与える。こうした地域公共交通を取り巻く構造的課題を整理しつつ、MaaS(Mobility as a Service:複数の交通手段を統合したサービス)を含む既存交通再編、AIデマンド交通、自動運転バスを「次世代地域交通」の特徴と現状の課題、将来展望に焦点を当てている。

<市場に含まれる商品・サービス>

MaaSを含む既存交通再編、AIデマンド交通、自動運転バス

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