高機能フィルム市場に関する調査を実施(2026年)
中国のBuy China政策進展で既存市場での日本メーカーのシェアは低下傾向
~2040年の市場での自社のあるべき姿をイメージした開発姿勢が問われる~
1.市場概況
中国政府の国産化振興政策(Buy China)により、高機能フィルム市場の幅広い分野で中国メーカーが存在感を増している。
TVやスマートフォンなどの最終製品の組み立て拠点は中国に集中しており、フィルム系部材・副資材を最終的に使用するユーザー企業は中国のセットメーカーである。フィルム部材・副資材の選択権はユーザー企業にあり、Buy Chinaでローカライズ(現地企業による国産化)が進めば、相対的に日本勢のシェア低下は避けられない。Buy China対象製品の一部では韓国も一定のポジションを確保しているが、製品によっては中国企業により買収され、既に中国へとローカライズされたものもある。
2010年代初めに中国メーカーがLCDバックライト部材の製造を始めた当初、PCモニタ向け光拡散フィルムなど比較的難易度の低い部材は中国にシフトしても、集光・輝度向上フィルムやハイエンドTV用部材などは技術的難易度が高く、中国製品は使用が難しいとされていたが、現地の中国企業の技術開発が進んだこと、ユーザー企業サイドの“使いこなす”技術が向上したことで、現在では市場の大部分が中国へとシフトした。まさに、同様のことが、これまで日本のフィルムメーカー各社が事業の柱としてきた業界で起きようとしている。
2.注目トピック
需要の大きい既存市場をターゲットとしたBuy Chinaが進展
中国政府がBuy Chinaでターゲットとしているのは、MLCC離型フィルム、偏光板保護フィルム、グラファイトシート用PIフィルム、半導体ウエハ・チップの製造工程で使用されるBGテープ・DCテープなど、既に市場が確立されており、なおかつ一定以上の事業規模が見込めるフィルムが中心である。これらのフィルムは需要量が非常に大きく、これまで国内フィルムメーカーの設備稼働率やトップライン(売上高)を支えてきた。
ただ、これらは既に確立された既存市場である。個々のフィルムはそれぞれの用途でハイエンド領域に進むほど性能・品質の要求レベルが高くなり、ニーズが先鋭化して開発の難易度も上がるとはいえ、ユーザー企業やフィルムの使われ方が大きく広がるわけではない。日本のフィルムメーカーは、長らくの間、既存市場で最先端の品質基準を追求することで技術力を磨き、海外勢と差別化してきた。その方向性は現在も、おそらく今後も大きくは変わらないだろう。ただ、中国の国産化により中国ローカルメーカーが台頭しつつある中、最近ではフィルムメーカー各社とも、航空宇宙関連や半導体関連などこれまで触れてこなかった新たな領域での展開を積極的に模索している。
3.将来展望
既存市場の中国ローカライズ(現地企業による国産化)が有無を言わさぬ勢いで進められる中、日本のフィルムメーカーが展開する市場は、既存の大型市場でシェアを争うという段階(フェーズ)から、まだ市場が確立されていない次世代の需要をいかに掴むかというフェーズに移った。これまでボリュームゾーンで高いシェアを確保していたフィルムメーカーによる、従来の得意分野に頼ったままでは事業の持続可能性を維持できないという強い意志のもとで、航空宇宙関連や半導体関連、水素関連など、これまで経験のない新しい市場探索への挑戦も始まっている。
2026年7月、日本の未来を支える成長産業・重点分野である17の戦略分野(戦略17分野)が閣議決定された※。日本のフィルムメーカーでは既存市場のハイエンド領域で他社の追随を許さない高いシェアは維持しつつ、こうした新しい領域へと踏み出す動きがみられる。戦略17分野に選定・設定された成長産業・分野の多くは、現時点で市場が形成されておらず、部材や副資材として使用されるフィルムに求められる仕様・スペック(性能や機能)も固まっていない。ここで展開しようとする日本のフィルムメーカーは、ユーザー企業のニーズに応える具体的な物性・性能の実現というゴールに向かって開発を進めるのではなく、自社がこれまで蓄積してきた独自の製膜技術や材料開発技術といったシーズを活用・応用し、さらに、フィルムに様々な機能・付加価値を付与するコンバーターとも協業しながら、ユーザー企業のフィルムに対するまだ形になる前の曖昧な「要望」を、ユーザー企業と共に「ニーズ」にまで育成し、自社のフィルムでそれを形にしていくような共創型の開発が求められている。
※出典:内閣官房「日本成長戦略」(2026年7月)(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/nipponseichosenryaku/index.html#2026_2_head)
出典資料について
2026年版 高機能フィルム市場の展望と戦略
価格(税込): 198,000円 (本体価格 180,000円)
調査要綱
2.調査対象: フィルムメーカー、コンバーター
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用
<高機能フィルムとは>
本調査における高機能フィルムとは、ディスプレイ・光学、電気・電子、一般産業用のベースフィルム(原反)及び加工フィルムを指し、PETフィルム、PIフィルム、MLCC離型フィルム、偏光板保護フィルム、航空宇宙関連や次世代太陽電池など新たな市場に向けて開発中の高機能フィルム等が含まれる。
<市場に含まれる商品・サービス>
PETフィルム、 PIフィルム、 MLCC離型フィルム、 偏光板保護フィルム、 ハイバリアフィルム 、航空・宇宙用途で使用されるフィルム、水素関連用途で使用されるフィルム
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