新型コロナウイルス禍の影響がなくなり、レジャー産業の回復が鮮明に
1.調査結果概要
レジャー産業は全般的に、2020年以降の新型コロナウイルス感染拡大の影響で長らく低迷したが、2023年は新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行したことによる行動制限緩和で、レジャー産業における様々な分野で回復が進んだ。特に、入国制限が解除されるとともに急速な円安進行も重なったことで、訪日外国人客(インバウント)は大幅に回復し、日本人の国内旅行や外食需要とともに、旅行、宿泊施設、外食産業などはその恩恵を受けた。
そのほか、スポーツ関連業界の中でも特にスポーツ用品市場が成長している。新型コロナウイルス禍後、スポーツへの参加需要が回復したことに加え、原材料価格高騰を受けて、スポーツ用品メーカーによる商品価格の値上げが継続されたこともスポーツ用品市場全体の底上げにつながった。
2.注目トピック
レジャー産業で活用広がるAI
近年、多様な分野でAI(人工知能)が活用されているが、レジャー産業も例外ではない。代表的なもののひとつが、AIによる需要予測をもとに価格をリアルタイムで変動させるダイナミックプライシングである。新型コロナウイルス禍以前よりホテルや航空業界のほか、プロスポーツチームの観戦料、テーマパークの入場料などで導入されていたが、導入事業者各社では収益の最大化と在庫管理の効率化が可能となり、経営安定性向上につながっている。
また、宿泊施設では、AI カメラが朝食会場等の混雑状況をリアルタイムで検知し、宿泊者のスマートフォンや館内のデジタルサイネージ(電子掲示板)上で空いている時間帯を案内することで、待ち時間を減らし宿泊者のストレス低減につなげるなどの取り組みが行われている。観光地でもAIを活用し、予算や日程など旅行者や訪問客が希望する条件を入力するだけで最適な旅行プランを自動作成、個々の興味や関心に合わせた回遊促進を促すことで、満足度向上とそれによる滞在時間の延長を図るなどの動きが見られている。
このように、レジャー業界におけるAI活用は単なる業務効率化にとどまらず、顧客体験の向上と事業者の収益性改善にまで効果が及んでおり、今後ますます重要になるものとみる。
一方で、AIの精度を高めるために収集される膨大な個人データ(視聴履歴、検索履歴、位置情報など)に対しては、プライバシー侵害やデータ漏洩リスクも指摘されている。事業者各社においてはこうした情報セキュリティの強化は課題ではあるが、国内の少子高齢化による労働力不足が顕在化するなか、顧客体験や利便性の向上、事業者の業務の効率化や収益性改善などを踏まえ、レジャー産業全般におけるAI活用は今後も普及していくものと考える。
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人手不足の解消がレジャー業界の大きな課題に
調査要綱
2.調査対象: 国内のレジャー関連産業、運営事業者
3.調査方法: 文献調査ならびに当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)
<レジャー関連市場とは>
本調査におけるレジャー関連市場は、以下を対象とした。
旅行市場(旅行業者、旅行サイト)旅客輸送市場(航空、鉄道、高速バス、観光・貸切バス、クルーズ、フェリー・旅客航路、レンタカー)、宿泊施設(ホテル・旅館、会員制リゾートクラブ、その他の宿泊施設[公営宿泊施設、民宿・ペンション、ユースホステル、カプセルホテル・ゲストハウス、民泊]、テーマパーク・遊園地、その他のレジャーパーク(ウォーターパーク、ファームパーク・観光農園、フラワーパーク・植物園、インドアプレイグラウンド)、ミュージアム(博物館・美術館・ミュージアム、動物園・水族館、フードテーマパーク)、温浴施設、スポーツ観戦・スポーツイベント、博覧会・文化イベント、家庭用・コンシューマゲーム、アミューズメント施設・業務用ゲーム、パチンコ市場、カラオケ市場、公営ギャンブル市場(中央競馬、地方競馬、競輪、ボートレース、オートレース、宝くじ、スポーツ振興くじ[toto])、ゴルフ場、スキー場、フィットネスクラブ・スポーツクラブ、その他のスポーツ施設(ボウリング場、テニスクラブ、フットサルコート、ビリヤード場、バッティングセンター、クライミングジム)、スポーツ用品市場(ゴルフ用品、スキー・スノーボード用品、テニス用品、野球・ソフトボール用品、サッカー・フットサル用品、アスレチックウエア、スポーツシューズ)、アウトドアスポーツ市場(登山・トレッキング、トレイルランニング、オートキャンプ場、ウォーキング、カヌー・カヤック、アドベンチャーパーク)、マリンスポーツ市場(ヨット・モーターボート、サーフィン・ウインドサーフィン、水上オートバイ、スキューバダイビング・スキンダイビング)、釣り市場、モータースポーツ、スポーツ自転車、ランニング、その他のスポーツ市場(ダンス・バレエ、卓球、バドミントン、スケート、ヨガ、ダーツ、スカイスポーツ、その他のニュースポーツ)、映画市場 、劇場・ホール・興行、映像ソフト・配信市場、音楽ソフト・配信市場、放送市場、習い事教室市場、ガーデニング・家庭菜園市場、外食産業(洋風ファストフード、和風ファストフード、カフェ、ファミリーレストラン、居酒屋、回転すし)
<市場に含まれる商品・サービス>
旅行、旅客輸送、宿泊施設、テーマパーク・遊園地・ミュージアム、その他レジャーパーク、スポーツ観戦・スポーツイベント、アミューズメント、娯楽(パチンコ、カラオケ、公営ギャンブル)、スポーツ施設(ゴルフ、スキー、フィットネスクラブ・スポーツクラブ)、スポーツ用品、アウトドアスポーツ、映画・興行、映像・音楽ソフト、文化・趣味・創作関連、外食産業等
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