今週の"ひらめき"視点

田舎の“産業資本”としての可能性は無限。地方創生のKFSは共生、分散、ネットワーク

20日、政府は2019年度が最終年度となる「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の第2期目の基本方針を示した。「民間との協同」、「人材の育成」、「ソサイエティ5.0」といったアプローチに加えて「関係人口の創出」が明記されたことを評価したい。
関係人口とは定住や観光ではなく、都市部の住民がボランティア等の能動的な活動を通じて地方と継続的な関係を構築することをいう。

2015年にスタートした第1期は、①地方に仕事をつくる、②地方へのひとの流れをつくる、③若者の結婚、出産、子育て支援、④時代に合った地域づくりと地域間連携、を戦略目標として掲げた(2018年改訂)。4月20日、内閣官房に設置された本部事務局は基本戦略の進捗に関する検証結果を発表したが、東京への一極集中が加速するなど政治的成果は決して満足できる水準にない。要因は地域によって異なるし、国の側や制度上の問題も指摘できよう。しかしながら、地方の側の企画力、戦略策定力、政策実行力の低さや首長の問題意識や資質によるバラツキが成果未達の背景にあることも否定できない。

もちろん、高い企画力と事業展開力に支えられた成功事例も多い。山梨県北杜市を拠点とするNPO法人「えがおつなげて」(代表:曽根原久司)はその好例。三菱地所グループのCSR部門をパートナーに限界集落地区の耕作放棄地を再生、収穫された米でオリジナル地酒を醸造し、販売する。やがてこの協業は県を巻き込んでの森林資源の活性化に発展、三菱地所ホームは山梨県産間伐材を2×4住宅の構造材として標準採用するに至る。また、同法人は全国で農村起業塾を運営、既に1千人規模の農村起業家を育成し、都市と田舎、田舎と田舎を結ぶ地域共生型ネットワークの構築を目指す。

地方再生のためには①地方と都市を分断させないこと、②行政区分の枠を越えて地方の資源や事業を構想すること、③未活用資源×無形資産(アイデア、経験、情熱)による新たな資本形成、が不可欠であり、第2期総合戦略ではこれまで以上に地方、地域、民間の独自性に軸足を置いた制度設計に期待したい。個々の地域、個々の事業に応じた権限や財源の移譲、そして、既存のルールや前例にとらわれない柔軟な事業環境づくりを望む。


今週の”ひらめき”視点 5.19 – 5.23
代表取締役社長 水越 孝