2024年度のラストワンマイル物流市場規模は前年度比105.5%の3兆900億円
~取扱個数の増加・物流費の高騰を背景に市場は拡大傾向、宅配便以外の「その他BtoC個配」事業者による新たな配送サービスが拡大~
1.市場概況
2024年度のラストワンマイル物流市場規模は、配送料(配送関連サービスを含む)ベースで前年度比105.5%の3兆900億円と推計した。2024年度はラストワンマイル物流市場全体で荷物量が増加したことに加え、宅配便以外の「その他BtoC個配」事業者では、ラストワンマイル物流コスト(物流費)が上昇したことで好調に推移した。
物量の動向としては、通信販売事業者を中心に物量が増加傾向にあり、さらに配送する荷物自体の小口化が進んだことで個数も増加した。深刻な人手不足や燃料費の高騰を背景に業界全体として価格交渉が進み、ラストワンマイル物流コスト(物流費)については、契約運賃が緩やかな上昇傾向にある。
大手宅配便事業者では、2023年度に運賃改定を行った反動で取扱個数が減少したことを踏まえて、2024年度は法人向け契約単価を一度引き下げることで物量を確保する動きとなり、取扱個数は再び増加に転じる結果となった。
宅配便以外の「その他BtoC個配」事業者では、大手通信販売事業者を中心に宅配便から自社手配による配送網への切り替え・拡大が進んだことに加え、ラストワンマイル物流コスト(物流費)の上昇などが増加要因となっている。「その他BtoC個配」を展開する事業者は、通信販売事業者やネットスーパー・コンビニ配達等を手掛ける小売事業者、フードデリバリー事業者等である。
2.注目トピック
ラストワンマイル物流市場の配送種別シェア
本調査では、ラストワンマイル物流市場に関わる配送の種類を、特別積み合わせ貨物運送に含まれる「宅配便」(宅配便事業者への委託)と、宅配便以外の方法でBtoC配送を行う「その他BtoC個配」の2つに分類している。2024年度のラストワンマイル物流市場に占める「宅配便」と「その他BtoC個配」の金額ベースのシェアは、宅配便が約70%、その他BtoC個配が約30%となった。
「その他BtoC個配」は、荷主自身による「自社配送」と、荷主が直接配送手配を行う「自社手配による配送」の2つに分けることができる。
「自社配送」は宅配寿司や在宅配食サービスのように、自社で配送車両や配送員を抱えてラストワンマイル配送を行うケースを指す。
「自社手配による配送」では、自社で車両及び配送員は持たず、配送能力を持つ事業者に直接委託し、ラストワンマイル配送を行うケースを指す。配送能力を持つ事業者の例としては、地域の運送事業者や、個人事業主を中心とする貨物軽自動車運送事業者、その他配達代行サービス、配送マッチングサービスが手掛けるギグワーカー(インターネット上のプラットフォームを介して、単発や短時間の仕事を請け負う労働者)による配送もこちらに含むものとする。
一方、倉庫内作業からフルフィルメントで「宅配便」事業者に委託している場合や、「自社手配による配送」を行うほどまとまった物量がない場合は、ラストワンマイル配送を全て「宅配便」事業者に委託していることが多い。また、前提として冷凍・冷蔵商品といった温度管理が必要な商品の配送や、再配達を含めて利用者の時間指定ニーズが高い場合など、展開する商品や利用者ニーズに合わせたサービス対応が必要な場合も「宅配便」事業者への委託率が高い。
また、まとまった荷物量のある配送機会において、置き配を前提に効率的に荷物の配送が行える場合や、配送時に見守り(安否確認)等の付加価値サービスを提供している場合、注文した当日に即時配送を行うサービスを提供している場合などでは、宅配便以外の手段(その他BtoC個配)が選択されている。特に通信販売事業者では、置き配を前提とすることが増えており、それに伴い地域の運送事業者や貨物軽自動車運送事業者に直接荷物を委託する、「自社手配による配送」にシフトする動きがみられる。
3.将来展望
2025年度のラストワンマイル物流市場規模は、前年度比103.4%の3兆1,950億円と予測する。中国や韓国といった海外のEC サイトで商品を購入し、国境を越えて日本に輸入する輸入越境ECやふるさと納税の返礼品など、市場全体としては新たなニーズを取り込むことで荷物量の拡大が見込まれるほか、配送する荷物の小口化がさらに進み、取扱個数も増加する見通しである。
「宅配便」では、2020年度のコロナ禍以降、年々BtoC荷物の比率が高まっている。2025年度以降もBtoBからBtoCへの移行は徐々に進み、単価の改善も見込まれ、今後も微増傾向で推移していくと予測する。「その他BtoC個配」では、通信販売事業者を中心に荷主の「自社手配による配送」が加速し、今後も荷物量が増加していく見通しである。2030年度のラストワンマイル物流市場規模は、3兆9,800億円まで拡大すると予測する。
なお、ラストワンマイル物流で課題となるのは、「その他BtoC個配」を手掛ける事業者に対するルール作りである。宅配便以外の「その他BtoC個配」事業者は、「宅配便」事業者の運送ルール(規制)下にはなく、ルールがないが故にトラブルが発生する場合もあり、配送品質やドライバーに対する補償など、今後、大きな枠組みで基準となる何かしらのルール作りが必要になると考える。
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その他BtoC個配のラストワンマイル物流市場の動向
調査要綱
2.調査対象: 一般消費者と物流の最終拠点を結ぶ BtoC、及びCtoCの配送サービス提供事業者
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング、ならびに文献調査併用
<ラストワンマイル物流市場とは>
本調査におけるラストワンマイル物流市場とは、一般消費者と物流の最終拠点を結ぶ事業者から一般消費者個人(BtoC)、一般消費者個人から同個人(CtoC)における配送サービスと定義する。市場規模は、配送料及び配送関連サービスを含む金額ベースで算出している。
なお、事業者間(BtoB)向けのラストワンマイル物流(施設や店舗向け配送など)、及び引越しサービス、配送ロボット、ドローン配送、メール便は対象外とするが、一部含まれる場合もある。
<市場に含まれる商品・サービス>
BtoC、CtoCにおけるラストワンマイル物流[宅配便、その他BtoC個配(自社配送、地域運送事業者、貨物軽自動車運送事業、その他配達代行サービス、配送マッチングサービスが手掛けるギグワーカー)]
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