今週の"ひらめき"視点

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
2016 / 10 / 14
今週の"ひらめき"視点
女性活躍社会、後退。長期的な視座に立って社会のダイナミズムを引き出す施策を

「働き方改革」「女性が輝く社会」に向けて象徴的な一手となるはずだった“配偶者控除の廃止”は、取り沙汰される衆院解散と来夏の都議会選を前に見送られた。いや、そればかりか“壁”の上限を「103万円から150万円へ」引き上げる優遇策の拡大論まで俎上にあがる。無論、配偶者控除の廃止で女性の活躍が保障されるわけではない。しかし、政策の一貫性に疑問符がつくことは間違いない。
女性の可能性を家庭に押し込めた方が経済的に有利となる税制への違和感は、フルタイムで働く既婚女性はもちろん、すべての女性に共通であろう。女性へのメッセージは「仕事は家事優先で。内助の功こそ女性の役割。」に引き戻された。

それにしても、選挙を前に何の衒いもなく変節してゆく政治の有り様は残念だ。そもそも「1億総活躍」を掲げた背景には人口減少社会への切迫した危機感があったはずだ。人口置換率2.07を割り込んだのは1974年である。そこからの無策と先送りの連続が今日の事態を招いていると言っていい。
目先の利得を要求し続ける国民と場当たり的な利益誘導に終始する政治体質に決別しない限り、多様性の中に個の可能性と未来への希望を見出し得る社会は到来しない。

2016 / 10 / 07
今週の"ひらめき"視点
昭和の夢を捨て、新たな未来を。JR北海道の再建は“北海道創生”と同義

JR北海道は1日の乗降客が1人以下の46駅の廃止に向けて関係自治体と調整に入った。既に廃止が決定している留萌線の5駅と合わせて2017年春のダイヤ改正時に51駅が地図から消える。全路線の赤字が常態化している中、安全への投資原資を確保するためにも、既に公共施設としての機能が失われた駅の廃止は止むを得まい。
一方、この3月には“念願”の北海道新幹線が開業した。しかし、こちらも初年度は48億円の赤字、投資回収の目処は立たない。2031年の札幌延伸に期待がかかるものの、航空機との競合を鑑みると都市間需要の取り込みは容易ではない。加えて、2030年代になると北海道の人口は大きく減少する。頼みの札幌市も2036年には2015年比で8%もの人口減が見込まれる。

そもそもJR北海道は独立行政法人鉄道建設・運輸施設設備支援機構の100%子会社であり、分割民営化に際して割り当てられた“経営安定化基金”が経営を下支えする。新たに加わった新幹線という名の赤字路線も40年以上も前に計画された国策である。つまり、民間の体裁をとっているものの実体は “国鉄のまま”であると言っていい。
実質的に国の管理下にあることを踏まえれば、国はその責任において重要な意思決定をなすべきである。そして、それは単なる一鉄道事業者という視点のみならず、“北海道の未来”を描き出した国家戦略として提示されなければならない。北海道、言い換えれば、地方はそこまで追い込まれつつあるということだ。

2016 / 09 / 30
今週の"ひらめき"視点
消費者からの信頼と自由な競争環境を維持するために業界は襟を正せ

関与成分の含有量不足により日本サプリメントの製品が特定保健用食品(トクホ)の許可を取り消された問題を受け、消費者庁はトクホに認定された全1270製品の成分調査結果を1ヶ月後までに提出させることを指示した。また、当初は次年度以降での実施を計画していた抜き打ち調査も年度内から前倒し実施するという。
トクホ制度は1991年から施行、当初は4年ごとに試験結果を審査する更新制であったが、1997年、規制改革の流れの中で永久許可制に緩和された。2015年からはメーカーの自己責任を前提とした「届出制」の機能性表示食品制度もスタートしている。

2年以上の報告を怠り、悪質性が高いと認定された日本サプリメントのガバナンスの問題は言うまでもないが、一方でそれが直ちに全製品の再検査へ波及する事態も異様である。企業サイドの良識を前提とした規制緩和への根本的な不信が消費者庁内に根深くあったということか。
トクホは消費者にとってメーカーに対する信用を担保する唯一の拠り所である。それゆえに「もう一段」の緩和をはかった機能性表示食品制度への影響も懸念される。とりわけ、後者は資金力や知名度に劣る中小企業の活用も多い。制度および業界に対する不信の連鎖を防ぐためにもトクホ1270製品すべての疑念が払拭されることを願う。

2016 / 09 / 23
今週の"ひらめき"視点
奨学金制度の拡充は、健全で安定した社会を維持するための投資となる

財務省は日本学生支援機構の大学生向け貸与型奨学金の金利の下限を0.1%から0.01%へ引き下げると発表した。同機構は年間8千億円程度の財政投融資を貸付原資に組み入れているが、日銀のマイナス金利政策に伴う調達金利の低下を受け、貸付金利を下げる。
また、文科省は返済の必要のない給付型奨学金制度の創設に向けた検討チームを設置、来年の通常国会で法改正を行い2018年度入学者からの給付を目指す。
こうした背景には貸与型給付金の返済延滞者の急激な増加がある。1ヶ月以上の延滞者は17万人、全体の4.6%に達しており、延滞総額は898億円にのぼる。非正規雇用の増加や実質所得の減少が奨学金債務者の返済原資を奪う。一方で、所得階層による大学、短大、専門学校への進学率の差も拡大しつつある。4年生大学への進学率は年収400万円以下の世帯が31%に対して、年収1千万円以上では62%となる。

給付型奨学金については、財源の確保はもちろん年収や成績要件など給付資格をどう規定するかといった問題が残る。しかしながら、量的拡大による成長が望めない日本にあって、一人当たり生産性の向上は国力維持の絶対条件であり、高い教育水準はその基盤となる。加えて、格差の拡大と固定化は過激主義が生まれる土壌ともなり得る。その意味で、教育への投資は外交や安全への投資と同義であり、言い換えれば、民主主義そのものへの投資であると言える。制度の早期拡充に期待したい。

2016 / 09 / 16
今週の"ひらめき"視点
豊洲移転、再び政治問題化。賛否を越えて置き去りにされる中小事業者

8月31日、小池都知事は安全性への懸念、不透明な巨額費用、情報公開不足を理由に11月7日に予定されていた豊洲への移転を正式に延期した。ただ、この時点における「安全性への懸念」は地下水モニタリングの結果発表(2017年1月)を待たずに移転することへの懸念であった。これだけでも延期は納得できるが、更に土壌汚染対策の不履行、虚偽報告、不正入札への懸念等が発覚、事態は混迷化する。
そもそも11月7日の“見切り発車”の理由が「五輪に向けての道路整備の都合」であったことにも呆れるが、都庁内部の意志決定プロセスの閉鎖性と公職者としてのモラルの欠損ぶりは驚くばかりである。

一方、消費者の魚離れに歯止めはかからない。築地の取扱量もピーク時から4割以上減っている。事業者にとって需要が伸びない中で負担せざるを得ない移転費用は重い。帝国データバンクによると2003年1月から2016年8月の期間に築地市場内の企業の倒産、休業、廃業は111件に達したという。移転問題が再び行き詰まる中、当事者たちは自らの事業計画すら描くことが出来ない状態が続く。混乱の原因解明と責任の追及は必須である。しかし、都は何よりもまず最終判断の選択枝を示したうえで、検証の作業工程、スケジュール、判断要件を明示し、その履行をコミットメントすべきである。

2016 / 09 / 09
今週の"ひらめき"視点
「36協定」見直し、不断の価値創造力が問われる社会へ

政府は、1ヶ月の残業時間に上限を設定するとともに罰則規定の検討に着手する。
慢性的な長時間労働が男性の家庭参画の障害となっており、これが少子化の背景にあるとの認識にもとづく。月内に発足する「働き方改革実現会議」の主要テーマとしてとりあげ、労働基準法の改正を含む具体案を年度内にとりまとめる方針である。

1人当たり労働時間の削減は「ワークライフバランス」に象徴される時代の趨勢に添うものであり、また、1億総活躍社会の実現に向けて、高齢者をはじめとする就労機会の確保という狙いもある。多様なライフスタイル、多様な働き方を容認する制度づくりに対して異論はない。
しかしながら、低生産性ゆえに賃金原資が押さえつけられている状況にあっては、1人当たり労働時間の上限設定は1人当たり支給額の上限設定と同義である。加えて、労働時間規制適用免除制度と同一労働同一賃金への流れは、例え、企業業績が全体として好転しても価値創出に対する貢献度が同じレベルである限り、従業者個人に対する対価に変化はない、ということでもある。

社員の副業を制度的に認める大手企業が相次ぐ。働き方の選択枝は格段に多様化しつつある。こうしたトレンドと働き方改革の方向性とを重ねあわせると、「収入元を多様化(=複数化)させない限り、多くの個人が収入増を実現出来ない社会」が浮かび上がってくる。
もちろん、だからと言って、それが「負け」を意味するものではない。価値観そのものが多様化しつつある中にあって“脱成長”を志向する選択枝もある。その時、個人は成長の論理から開放される。しかし、そうでない世界を生きるのであれば、企業も個人も新たな価値を創造し続けること、そして、そのための意志と能力を持つこと、これこそが自身の未来を拓く唯一かつ絶対の条件となる。