今週の"ひらめき"視点

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
2016 / 11 / 25
今週の"ひらめき"視点
フェイスブック、規制する側への忖度ではなく、開放への圧力を

2009年、当局によって一方的に処断され、撤退を余儀なくされたフェイスブックが、中国再進出に向けて独自の“自主規制プログラム”を開発中であると米ニューヨークタイムズが報じた。ただ、現時点では同社からは正式なコメントはなく、また、ニュースソースの元従業員も「実際に活用されるかは不明」であるとする。

中国は7億人ものユーザーを抱える世界最大のインターネット大国である。しかし、グレートファイアウォールと呼ばれる検閲システムや200万人におよぶ監視員によって、海外サイトへのアクセスはもちろん言論の自由は徹底的に制限されている。米NGO“フリーダム・ハウス”が発表するネット上の自由度ランキングではワースト1位である(北朝鮮は調査対象国から除外)。

2016年春、訪中したザッカーバーグ氏が天安門広場をランニングする画像が世界を流れた。彼の中国市場に対する関心の高さは有名である。それ自体は非難されるものではない。とは言え、それを差し引いても天安門を能天気に走る彼の姿に大きな失望を感じたことも事実である。一方、米紙報道が本当であればその意味はまったく異なる。彼は統制し、抑圧し、弾圧する側に加担したということになる。記事の真偽もまた「不明」のままであって欲しい。

2016 / 11 / 18
今週の"ひらめき"視点
“11カ国TPP”に向けて日本はイニシアティブを。「米国抜き」にこそ価値を見出せ

「大統領就任初日の撤退」を明言してきたトランプ氏の当選によって、TPPは完全に座礁した。国会承認を手土産にオバマ政権下での批准を促すはずだった日本政府の狙いも、「法案提出を見送る」とした共和党上院幹部の発言によって潰えた。
東南アジア、中南米の新興国、中小国は米国市場の開放と引き換えに米国が要求する通商条件に折り合いをつけてきた。最大市場へのアクセスが拓かれないことは、彼らにとってメリットは小さい。こうした中、参加各国の足並みも揃わない。オーストラリアやベトナムは批准の日程を延期、一方、メキシコやニュージーランドは“米国抜き”へ傾く。

米国の不参加はもはや既定路線である。しかし、高度な自由貿易のルールがアジア・太平洋地域の11カ国で共有されることの意味は大きい。RCEPの枠組みづくりに対しても有為であり、いずれ保護主義による成長の夢が破綻するだろう米国に対して、復帰の道を残しておくことは日本にとって政治的にも有効だ。
米国の不参加は“TPP=米国陰謀説”が意味を失うことでもあり、グローバル化と国民国家との確執、国民がそこに抱く不安や懸念を修正する機会でもある。日本にとっては、まさに独自外交を推進し、自由貿易の流れを堅持するリーダーとして、世界にプレゼンスを示す千載一遇のチャンスである。

2016 / 11 / 11
今週の"ひらめき"視点
独裁者と異端者、世界は2人に身構える

7日、中国の全人代(国会)は、香港の独立を支持する“本土派”議員2名の議員資格の停止を決定するとともに、ネット規制を目的とした「サイバーセキュリティ法」を採択した。“本土派”議員の資格停止は「1国2制度」の実質的な無効を暗示するものであり、また、サイバーセキュリティ法は中国国内で収集されるあらゆる情報が当局の管理下へ置かれることを意味する。

昨年7月の「国家安全法」の施行以来、習金平指導部による社会・言論統制が急速に進む。香港では昨年10月から5人の書店関係者が次々と失踪、長期にわたって中国国内で拘束されていた。9月には唯一直接選挙で選ばれた「民主の村」の前村長の実刑が確定、10月に入ると多くの知識人に支持されてきた改革派のwebサイト「共識網」、雑誌「炎黄春秋」が当局の圧力によって相次いで閉鎖、廃刊された。

10月27日、共産党の最高幹部会(6中全会)は、習氏に対して「核心」の称号を与えたと発表した。「核心」は毛沢東、鄧小平、江沢民と並ぶ“別格”の指導者を意味する。何をもって習氏は“別格”であるのか。しかしながら、彼が「核心」である以上、その理由を問うことはもはや許されない。

一方、注目の米大統領選は当初の誰もが予想し得ない結果に終わった。トランプ氏が勝った。彼は確実に変化をもたらすだろう。しかし、視界はまだ開けない。
社会を圧することで権力基盤を固める独裁者と、社会に充満・鬱積した不満によって権力の座に押し上げられた異端者、2017年、世界は少々窮屈になってゆく。

2016 / 11 / 04
今週の"ひらめき"視点
GINZA SIX、何もかもがオーセンティック!?

26日、J.フロントリティリングは松坂屋銀座店跡地で進めている再開発ビルの詳細を発表した。名称は“GINZA SIX”、銀座エリア最大規模47,000㎡の商業施設を中心に文化施設、38,000㎡のオフィスフロア、屋上庭園、観光バスの乗降所などで構成される。
商業施設のブランドスローガンは“Where Luxury Begins ”(=世界が次に望むものを)、国内最大級の売場となるディオール、フェンディ、セリーヌ、ヴァンレンティノといった高級ブランドの旗艦店を目玉に、物販210、飲食24、サービス7、計241店舗が入る。

会見ではJ.フロントの山本社長が「銀座で百貨店はやらない」ことを明言したが、まさにその言葉どおり、GINZA SIXは森ビルと住友商事、L Real Estate、そして、地権者であるJ.フロントのディベロッパーとしての仕事であって、大丸松坂屋の仕事ではない。
銀座で“百貨店”の未来を放棄した持ち株会社の経営判断に異を唱えるつもりはないし、「真のラグジュアリー」、「最高に満たされた暮らし」を体現する定石どおりの高級ブランドの集積はさぞや見事であろう。
しかしながら、一方で「ここに来れば日本の今がわかる」、「世界の最新トレンドを体感できる」ことを主張するのであれば、せめてオープニング・アーティストは“文化勲章”の草間彌生氏ではなく、若きジャッドやコーネルと活動していた頃の“未来のKusama”を発掘し、世界に発信するぐらいの気概を示して欲しかった。

2016 / 10 / 28
今週の"ひらめき"視点
異質な文化に対する相互の寛容が過激主義を封じる

24日、国際捕鯨委員会(IWC)の総会がはじまった。日本は国際司法裁判所の判決(2014年)を受けて南極海での捕鯨を一端中止したが、昨年末から再開、今回は再開後初めての総会ということもあり反捕鯨国の強硬姿勢が目立つ。
調査捕鯨の実施主体である財団法人日本鯨類研究所の予算が鯨肉の売上収益で成り立っているという視点に立てば、反捕鯨国が主張する「調査捕鯨の名を借りた商業捕鯨」との批判に一定の理があることは否めない。これに対して、日本は、これまで要求してきた“日本近海での捕獲枠”問題を取り下げ、調査捕鯨の科学的意義と正当性を議論の俎上にあげる。しかしながら、そもそも捕鯨産業の発展を目的に設立されたIWCの性格は既に変質してきており、捕獲頭数を巡る現実的な交渉を展開してきた日本と反捕鯨国との論点は嚙み合わない。

もはやこの問題は、“産業の保護”や“資源の維持”といった議論では片付かない。民族の伝統や食文化、生態系の維持、動物愛護、先住民族の権利や地球温暖化や環境問題も絡む。反捕鯨の急先鋒オーストラリアやニュージーランドにとっては観光資源(=ホエール・ウォッチング)の拡大といった思惑もあるだろう。シーシェパートに象徴される過激な暴力集団を封じ、IWCにおける議論を前へ進めるためにも日本は戦略全体を再構築すべきではないか。現実の国際世論に対応した、ぶれることのない大義をベースに捕鯨の在り方そのものを自ら問い直す必要があるということだ。キーワードは生物と文化の多様性、そして、共生である。

2016 / 10 / 21
今週の"ひらめき"視点
株式の超高速取引、規制強化へ。法令はAIの進化に先行できるか

金融庁はコンピュータプログラムによる株式の超高速取引に関する規制強化、法制化の検討に入った。
東証では既に全取引のうち件数ベースで7割が超高速取引によるもので、約定ベースでも4~5割に達するという。
具体的な規制内容は今後の検討課題となるが、取引記録の作成義務付け、システムセキュリティ、リスク管理、ガバナンス等について一定以上の要件整備を前提とした登録制度の導入などが論点となる。

今、世界全体の利子率が低下しつつある中、実体経済の数倍に膨張した過剰流動性が“行き場”を失いつつある。“greed”な投資家の要求を満たすフロンティアはもはや限定的だ。ゆえにバブルの生成と幕引きを世界のどこかで繰り返し仕掛けることが、彼らにとって唯一、確実な投資行動となる。やがて世界中のコンピュータが市場の微細な変化を見つけ出し、解析し、その先を一斉に予測する。そう、正しい計算結果から導かれたその瞬間瞬間の投資行動は、上昇下降いずれの場合もその影響を最大化させるリスクを伴う。

ノーベル経済学賞受賞者が参画し、最先端の金融工学理論を駆使したヘッジファンド「LTCM」の破綻は1998年である。AIが、AI自身による自律的な進化をはじめる技術的特異点(=シンギュラリティ)は2045年と予測される。それまでに我々はどこまで“賢く”なれるか。