今週の"ひらめき"視点

当社代表が最新のニュースを題材に時代の本質、変化の予兆に切り込みます。
2016 / 12 / 02
今週の"ひらめき"視点
行き過ぎたグローバリズムに対する過剰な政治的反動が世界を萎縮させてゆく

WTOにおける「市場経済国」の認定を巡って欧州委や米国と対立する中、中国は企業の海外投資を規制する方向に舵をきった。
500万ドルを越える海外企業の買収や外貨購入に対して当局との事前面談を義務づける。あわせて小口分散送金や中国本土発行カードによる香港の保険商品の購入を禁止する。これらは人民元の流出に伴う通貨の下落に歯止めをかけること、M&Aを個人資産の国外移転に活用する企業家の行動を封じることが狙い。

実際、中国企業による海外投資は今年に入って5割増のペースで続いており、金融機関を通じた資金の流出超過は16ヶ月連続、流出総額は5000億ドルを越える。と言え、今回の規制は単なる経済政策に止まるものではなく、汚職・腐敗防止運動とも脈を通じる多分に政治的なものである。それゆえに中国の国内情勢と景気回復に対する懸念を、世界により印象づける。WTOによる認定の可否はともかく、実体としての市場経済化はまだまだ遠い。

一方、29日、米ユナイテッド・テクノロジー傘下の空調大手「キヤリア」はメキシコへの生産拠点の移転を中止すると発表した。選挙期間中、一貫して同社の経営方針を非難してきたトランプ氏は「工場移転を阻止し、インディアナ州の雇用を守った」と高らかにSNSに投稿した。
民に対する政治のあからさまな介入が喝采を浴びる。いや、そんな時代は長くは続かない、はずである。

2016 / 11 / 25
今週の"ひらめき"視点
フェイスブック、規制する側への忖度ではなく、開放への圧力を

2009年、当局によって一方的に処断され、撤退を余儀なくされたフェイスブックが、中国再進出に向けて独自の“自主規制プログラム”を開発中であると米ニューヨークタイムズが報じた。ただ、現時点では同社からは正式なコメントはなく、また、ニュースソースの元従業員も「実際に活用されるかは不明」であるとする。

中国は7億人ものユーザーを抱える世界最大のインターネット大国である。しかし、グレートファイアウォールと呼ばれる検閲システムや200万人におよぶ監視員によって、海外サイトへのアクセスはもちろん言論の自由は徹底的に制限されている。米NGO“フリーダム・ハウス”が発表するネット上の自由度ランキングではワースト1位である(北朝鮮は調査対象国から除外)。

2016年春、訪中したザッカーバーグ氏が天安門広場をランニングする画像が世界を流れた。彼の中国市場に対する関心の高さは有名である。それ自体は非難されるものではない。とは言え、それを差し引いても天安門を能天気に走る彼の姿に大きな失望を感じたことも事実である。一方、米紙報道が本当であればその意味はまったく異なる。彼は統制し、抑圧し、弾圧する側に加担したということになる。記事の真偽もまた「不明」のままであって欲しい。

2016 / 11 / 18
今週の"ひらめき"視点
“11カ国TPP”に向けて日本はイニシアティブを。「米国抜き」にこそ価値を見出せ

「大統領就任初日の撤退」を明言してきたトランプ氏の当選によって、TPPは完全に座礁した。国会承認を手土産にオバマ政権下での批准を促すはずだった日本政府の狙いも、「法案提出を見送る」とした共和党上院幹部の発言によって潰えた。
東南アジア、中南米の新興国、中小国は米国市場の開放と引き換えに米国が要求する通商条件に折り合いをつけてきた。最大市場へのアクセスが拓かれないことは、彼らにとってメリットは小さい。こうした中、参加各国の足並みも揃わない。オーストラリアやベトナムは批准の日程を延期、一方、メキシコやニュージーランドは“米国抜き”へ傾く。

米国の不参加はもはや既定路線である。しかし、高度な自由貿易のルールがアジア・太平洋地域の11カ国で共有されることの意味は大きい。RCEPの枠組みづくりに対しても有為であり、いずれ保護主義による成長の夢が破綻するだろう米国に対して、復帰の道を残しておくことは日本にとって政治的にも有効だ。
米国の不参加は“TPP=米国陰謀説”が意味を失うことでもあり、グローバル化と国民国家との確執、国民がそこに抱く不安や懸念を修正する機会でもある。日本にとっては、まさに独自外交を推進し、自由貿易の流れを堅持するリーダーとして、世界にプレゼンスを示す千載一遇のチャンスである。

2016 / 11 / 11
今週の"ひらめき"視点
独裁者と異端者、世界は2人に身構える

7日、中国の全人代(国会)は、香港の独立を支持する“本土派”議員2名の議員資格の停止を決定するとともに、ネット規制を目的とした「サイバーセキュリティ法」を採択した。“本土派”議員の資格停止は「1国2制度」の実質的な無効を暗示するものであり、また、サイバーセキュリティ法は中国国内で収集されるあらゆる情報が当局の管理下へ置かれることを意味する。

昨年7月の「国家安全法」の施行以来、習金平指導部による社会・言論統制が急速に進む。香港では昨年10月から5人の書店関係者が次々と失踪、長期にわたって中国国内で拘束されていた。9月には唯一直接選挙で選ばれた「民主の村」の前村長の実刑が確定、10月に入ると多くの知識人に支持されてきた改革派のwebサイト「共識網」、雑誌「炎黄春秋」が当局の圧力によって相次いで閉鎖、廃刊された。

10月27日、共産党の最高幹部会(6中全会)は、習氏に対して「核心」の称号を与えたと発表した。「核心」は毛沢東、鄧小平、江沢民と並ぶ“別格”の指導者を意味する。何をもって習氏は“別格”であるのか。しかしながら、彼が「核心」である以上、その理由を問うことはもはや許されない。

一方、注目の米大統領選は当初の誰もが予想し得ない結果に終わった。トランプ氏が勝った。彼は確実に変化をもたらすだろう。しかし、視界はまだ開けない。
社会を圧することで権力基盤を固める独裁者と、社会に充満・鬱積した不満によって権力の座に押し上げられた異端者、2017年、世界は少々窮屈になってゆく。

2016 / 11 / 04
今週の"ひらめき"視点
GINZA SIX、何もかもがオーセンティック!?

26日、J.フロントリティリングは松坂屋銀座店跡地で進めている再開発ビルの詳細を発表した。名称は“GINZA SIX”、銀座エリア最大規模47,000㎡の商業施設を中心に文化施設、38,000㎡のオフィスフロア、屋上庭園、観光バスの乗降所などで構成される。
商業施設のブランドスローガンは“Where Luxury Begins ”(=世界が次に望むものを)、国内最大級の売場となるディオール、フェンディ、セリーヌ、ヴァンレンティノといった高級ブランドの旗艦店を目玉に、物販210、飲食24、サービス7、計241店舗が入る。

会見ではJ.フロントの山本社長が「銀座で百貨店はやらない」ことを明言したが、まさにその言葉どおり、GINZA SIXは森ビルと住友商事、L Real Estate、そして、地権者であるJ.フロントのディベロッパーとしての仕事であって、大丸松坂屋の仕事ではない。
銀座で“百貨店”の未来を放棄した持ち株会社の経営判断に異を唱えるつもりはないし、「真のラグジュアリー」、「最高に満たされた暮らし」を体現する定石どおりの高級ブランドの集積はさぞや見事であろう。
しかしながら、一方で「ここに来れば日本の今がわかる」、「世界の最新トレンドを体感できる」ことを主張するのであれば、せめてオープニング・アーティストは“文化勲章”の草間彌生氏ではなく、若きジャッドやコーネルと活動していた頃の“未来のKusama”を発掘し、世界に発信するぐらいの気概を示して欲しかった。

2016 / 10 / 28
今週の"ひらめき"視点
異質な文化に対する相互の寛容が過激主義を封じる

24日、国際捕鯨委員会(IWC)の総会がはじまった。日本は国際司法裁判所の判決(2014年)を受けて南極海での捕鯨を一端中止したが、昨年末から再開、今回は再開後初めての総会ということもあり反捕鯨国の強硬姿勢が目立つ。
調査捕鯨の実施主体である財団法人日本鯨類研究所の予算が鯨肉の売上収益で成り立っているという視点に立てば、反捕鯨国が主張する「調査捕鯨の名を借りた商業捕鯨」との批判に一定の理があることは否めない。これに対して、日本は、これまで要求してきた“日本近海での捕獲枠”問題を取り下げ、調査捕鯨の科学的意義と正当性を議論の俎上にあげる。しかしながら、そもそも捕鯨産業の発展を目的に設立されたIWCの性格は既に変質してきており、捕獲頭数を巡る現実的な交渉を展開してきた日本と反捕鯨国との論点は嚙み合わない。

もはやこの問題は、“産業の保護”や“資源の維持”といった議論では片付かない。民族の伝統や食文化、生態系の維持、動物愛護、先住民族の権利や地球温暖化や環境問題も絡む。反捕鯨の急先鋒オーストラリアやニュージーランドにとっては観光資源(=ホエール・ウォッチング)の拡大といった思惑もあるだろう。シーシェパートに象徴される過激な暴力集団を封じ、IWCにおける議論を前へ進めるためにも日本は戦略全体を再構築すべきではないか。現実の国際世論に対応した、ぶれることのない大義をベースに捕鯨の在り方そのものを自ら問い直す必要があるということだ。キーワードは生物と文化の多様性、そして、共生である。