今週の"ひらめき"視点
造船4社+海運3社、造船復活へ次世代船舶の設計で協業
12月1日、三菱造船、今治造船、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)、日本シップヤードと日本郵船、商船三井、川崎汽船は、三菱重工と今治造船が共同出資する船舶設計会社「MILES」(マイルズ)と、液化CO2輸送船や脱炭素技術を活用した新燃料船に関する標準設計スキームを構築するための覚書を締結した。あわせてJMU、日本シップヤード、海運3社もMILESへの資本参加を表明、造船4社+海運3社のオールジャパン体制で次世代船舶市場における国際競争力を強化する。
その2週間前の11月18日、公正取引委員会は今治造船によるJMUの子会社化(出資比率60%)を承認した。独禁法上の審査で問われたのは商船市場における水平型企業結合と、船舶用エンジンメーカー「日立造船マリンエンジン」に今治造船が35%を出資していることによる垂直型企業結合に伴う“競争制限の有無”である。前者は外航船の船主は国内外の造船会社を区別せずに発注していること、後者はJMUに情報遮断措置を課すことでいずれも競争制限の恐れはないと判断された。
世界の造船市場は中国が圧倒する。2024年の船舶受注量シェアは中国71%、韓国14%、日本8%(契約年ベース、国土交通省海事局)である。造船技術の向上も目を見張るものがある。従来、韓国企業が市場をリードしてきたLNG運搬船についても中国企業が台頭しつつある。中国勢の新規受注の9割は輸出であり、世界の外航海運はまさに中国勢が席巻する。
今治造船のJMUへの出資が承認された2日後、公取委は「経済安全保障に関連した事業者の取組における独占禁止法上の基本的な考え方」を公表、「グローバル市場において国内企業が単独で競争力を維持できない場合、新たな会社が一括して製品の営業・設計・調達を行うとともに各社が分担して製品製造を行う」事例の想定業種として造船・舶用工業を紹介している。まさにMILESのスキームそのままだ。ちなみに日本シップヤードは今治造船とJMUの合弁会社である。つまり、7社連合+MILES事業の成否は実質的に今治造船にかかっていると言っていいだろう。非上場会社ゆえの長期戦略とオーナー経営ならではの迅速な意思決定に期待したい。
今週の“ひらめき”視点 11.24 – 12.4
代表取締役社長 水越 孝
