2025年版 リサイクル炭素繊維市場の展望と戦略

炭素繊維と樹脂を複合化したCFRPは自動車、航空機、スポーツ用品、建築、エネルギー、エレクトロニクスなど幅広い分野で使用されてきた。環境問題への関心が高まる中、国内外でCFRPから炭素繊維(リサイクル炭素繊維:rCF)を取り出す技術開発が進められて来たが、現在は取り出したrCFをいかに活用するかが注目されている。

発刊日
2025/10/31
体裁
A4 / 187頁
資料コード
C67116700
PDFサイズ
45.9MB
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調査資料詳細データ

調査概要
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調査目的:国内外のリサイクル炭素繊維メーカー及び研究機関の動向と今後の事業施策を徹底調査し、さらに周辺調査を行うことで、ワールドワイドのリサイクル炭素繊維市場における現状と今後の動向の把握を目的とする。
調査対象:炭素繊維メーカー、rCF リサイクラー、rCF 研究機関、rCF 加工メーカー
調査方法:弊社専門調査員による直接面接取材をベースに、文献調査を併用。
調査・分析期間:2025年8月25日 ~ 2025年10月28日
掲載内容のお問い合わせ先:株式会社矢野経済研究所 インダストリアルテクノロジーユニット 素材産業グループ

調査結果サマリー
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リサイクル炭素繊維世界市場に関する調査を実施(2025年)
リサイクル炭素繊維は「いかに取り出すか」から「いかに活用するか」へステージが進む
~不連続繊維であるrCFを「使う」ための技術開発と用途の探索が課題に~

資料ポイント
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  • rCFの「回収」から「活用」へ、材料・素材から中間材、成形品まで、rCFの出口・市場を自ら創り出せ!
  • vCFと同等ではなく、新たな機能材としてのrCF開発へ、リサイクラーから材料メーカーへの事業・ポジションのシフトが求められる
  • 将来の市場立ち上がりに備えrCFの品質維持と回収元端材・廃材の安定的な確保の両立へ、海外拠点確保やパッケージ化したプロセス提案も進む
  • rCFを連続繊維化することでvCFに近い使い勝手が実現、プロセスコストやカーボンプライシングまで考慮したメリットの訴求が鍵に
  • 気候変動対策・環境対応がブランド力につながるB to C業界でrCFの採用が進展、欧州でのCBAM本格施行以降、アジア地域での採用拡大が期待される

リサーチ内容

第1章 リサイクル炭素繊維市場の展望
 
「回収」から「活用」へ、vCFを超えるrCFの価値再定義により
出口となる市場の創出・拡大を目指せ!
不連続繊維であるrCFを「使う」ための技術開発と用途の探索が課題に
vCFと同等ではなく、vCFを超える新たな機能材としてのrCF開発へ
リサイクラーから材料メーカーへの事業・ポジションのシフトが求められる
材料・素材から中間材、成形品までの展開で出口・市場を自ら創り出せ!
将来の市場立ち上がりに備え、rCFの品質維持と回収元端材・廃材の安定的な確保の両立へ
海外での拠点確保やパッケージ化したプロセス提案の取り組みも進展
 
第2章 リサイクル炭素繊維市場の動向
 
1.CFRP端材・廃材のリサイクル動向
  1.CFRP端材・廃材の発生量推移
    CFRP市場規模は2025年見込みで178,200t、2030年には22万tに迫る規模と予測される
    rCF回収技術開発は進展も、出口を見据えた「いかに活用するか」
    (図・表)CFRP市場規模推移(W/W)
    工程内端材発生量はCFRP需要量にリンクして増減、2025年には24,900tを見込む
    退役・使用済製品由来の廃材発生量は年間2ケタの拡大が続く
    (図)CFRP端材発生量推移
    (図)CFRP廃材(退役・使用済製品由来)発生量推移
  2.CFRP端材・廃材の処分量とrCF回収量推移
    一部での高炉還元(ケミカルリサイクル)の他はまだ埋立・サーマルリカバリーが中心
    米国、欧州、日本でのCFRPリサイクル、rCF回収量に大きな変動は見られず
    (図)CFRP端材・廃材からのrCF回収量推移
  3.使用済CFRP(CFRP廃材)処理動向
    期限切れのCHGタンクや退役航空機からのrCF回収に向けた取り組みが進展
    (表)CFRP端材・廃材発生量推移(W/W)
    (表)CFRP端材・廃材中のCF量(W/W)
    (表)CFRP端材・廃材発生量合計のうちリサイクルに回る量の推移
    (表)CFRP端材・廃材からのrCF回収量推移
  4.リサイクル技術の動向
    1.熱分解法
    2.化学分解法
    3.その他
2.国内の主要なCFRPリサイクル企業の動向
  熱分解法では富士加飾、新菱がrCF事業化を実現、CFRPからの繊維回収だけでなく
  パートナーと共同でペレット、不織布など中間材~川下製品までを展開
    (表)熱分解方式で展開する国内主要リサイクラー概要(事業化企業)
  化学分解法はミライ化成が中間材から後加工まで包括したパッケージ展開を志向
  アイカーボンは不織布用スラリーとペレット用カットファイバーの両輪で展開
    (表)化学分解方式で展開する国内主要リサイクラー概要(事業化企業)
  国内炭素繊維メーカーでは帝人、三菱ケミカルグループが自社ブランドのrCFを展開
  東レは国内においてはリサイクラーとの協業による幅広い用途での活用促進に取り組む
    (表)炭素繊維主要メーカーのrCF
  rCF回収技術の開発に取り組む研究機関では、退役航空機からのrCF回収を想定した
  JFCCによる高純度・高強度一方向rCFが注目される
    (図)レーザー加熱を利用した炭素繊維連続回収技術
    (表)日本国内のrCF主要研究機関(rCF回収技術)
    (表)日本国内の主なrCFリサイクラー・研究機関(開発段階の企業を含む)
3.海外における炭素繊維リサイクルの動向
  1.欧州
    ELV規制案への有害物資としてのCF追加案は撤回
    欧州の廃棄物処理に関する指令及び規定にCFの規制はみられず
    EU諸国内でのCF複合材料研究競争によりEU全体の研究力を底上げ
    (図)欧州産学官連携のネットワーク図
  2.米国
    トランプ政権下でエネルギー・環境分野の政策動向は不透明感を増す
    反サーキュラーエコノミー的な政策でリサイクル業界にアゲインストの風
    (表)第二次トランプ政権による主なエネルギー・環境・資源政策の見直し
    世界トップの研究力・資金力・連携力を持つアメリカの産学官研究拠点
  3.中国
    新エネルギー、EV関連を中心とした中国の炭素繊維関連市場拡大に伴い
    数百~千数百t/年規模のrCF生産能力を持つリサイクラー、CFRPメーカーが複数登場
    (表)中国の炭素繊維回収及び再生利用関連政策
    (図)HRCのCFRPリサイクル
  4.その他
    台湾、韓国でもrCFリサイクラーが立ち上がる
    (図)Termolysisが提供するrCF製品
    (図)CATACK-HのrCF
    (表)海外の主なrCFリサイクラー・研究機関
 
第3章 リサイクル炭素繊維の活用状況
 
1.CFRPの成形技術
  長年主流であったオートクレーブに加え
  成形時間の短縮・高効率化を重視したプロセス開発が進展
    (表)各種成形法の特徴
  rCFRPの成形は少量多品種を得意とするモルダーでの扱いが中心
    (図)CFRP成形フロー
2.rCFの活用に向けた開発動向
  不連続短繊維として回収されるrCFをいかに活用し、出口となる用途を拡大するか
  複合材料との密着性向上やrCF複合樹脂に適した成形技術確立に向けた開発が進む
  1.成形技術開発
    rCFと熱可塑性樹脂との複合化とプレス成形技術の組み合わせによる
    コスト抑制と生産性向上の実現が出口用途拡大につながる
  2.rCFの加工性向上に向けた技術開発
    化学処理プロセスの改良、変性による表面改質、繊維表面のアモルファスカーボン層の
    活用など、リサイクラーによるrCFの加工性向上に向けた開発が進展
3.rCF中間材の動向
  不連続繊維として回収されるrCFを連続繊維化することでvCFに近い使い勝手が実現
  採用に伴うプロセスコストやカーボンプライシングまで考慮したメリットの訴求が鍵に
  rCFと熱可塑性繊維混紡不織布のプレス成形で生産性は大幅に向上
  不織布メーカー、リサイクラーによる開発が進展
  rCFの出口拡大には射出成形への対応が不可欠、強度、耐熱性など
  複合材料としての性能が活かせるエンプラとのコンパウンドペレットで用途開発進む
    (表)rCFの主なサプライチェーン
4.rCFの採用動向
  気候変動対策・環境対応がブランド力につながるB to C業界でrCFの採用が進展
  欧州でのCBAM本格施行以降、アジア地域での採用拡大が期待される
  航空機は安全基準の厳しい一次構造材、二次構造材での採用に高いハードル
  トレーなどの備品から内装材へのステップアップを目指せ
  自動車関連はCFRPの採用そのものが少なくrCF採用進まず
  レーシングカーリペアに向けた取り組みが始まる
 
第4章 リサイクル炭素繊維メーカー・研究機関の動向
 
富士加飾株式会社
  炭素繊維の「リサイクル」から、バージン材を超える価値を持つ
  「新たなCFの開発」へとステージを進める
  2023年に導入した63㎥の大型乾留炉でのrCF量産開始
  繊維表面を覆うアモルファスカーボン層がvCF以上の性能を付与
  rCFの付加価値向上で「新たな材料メーカー」としてのポジション確立へ
  「コバトロン®ペレット」による機内食トレー、CHGタンクからの連続長繊維の回収
  繊維への直接メッキなど、rCFの実用化に向けた開発が着実に進展
  国内のみならず海外市場でのrCF拡大に向けた準備を進める
  中東、欧州ではrCFの地産地消の実現に向けた合弁会社設立を検討
 
アイカーボン株式会社
  rCF原体だけでなく、変性品、中間材、成形品から最終製品までを展開
  ビジネスモデルの転換で事業の高度化・高収益化実現への道を着実に進む
  常温酸アルカリ法で回収されるrCFは劣化が無く、圧縮強度・引張強度が向上
  vCFと同等以上の性能・品質の実現が強み
  射出成型用カットファイバーは結束用樹脂残渣を低減・無害化する技術を開発
  PAなど極性を持つマトリクス樹脂との密着性向上を実現
  rCFの出口を確保し事業の高収益化につなげる「自転車プロジェクト」が始動
  2030年には事業全体での売上高100億円超の実現へ
 
株式会社ミライ化成
  炭素繊維の「リサイクラー」から、rCFを活用した
  高効率な製品開発をサポートする「プラットフォーム」へと進化
  2025年に開所した「青森Lab」では材料(rCF)から最終製品までの
  ワンストップ開発サービスを顧客に提供
  rCFと熱可塑性繊維の混紡不織布、プレス成形、レーザー加工機の活用で
  既存のCFRP成形品の10倍の生産性を実現
  rCFの回収~最終製品製造までのプロセスをパッケージ化し「Mirai Process」として提供
  国内のみならず海外への事業拡大も視野に
 
株式会社新菱
  CFRP端材・廃材からのrCF回収からコンパウンドまでを展開
  rCFコンパウンドは高強度、導電など炭素繊維の性能が必要な用途で採用実績を確保
  rCFコンパウンドの性能を活かすためエンプラ以上の樹脂との組み合わせを模索
  トレーサビリティに対する要求にはISO9001で対応
 
帝人株式会社
  自社工場で発生する端材を再生した「Tenax Next™ R2S P513 6MM」を投入
  バージン品と変わらぬ物性・品質・トレーサビリティに強み
  プリカーサーから製品まで一気通貫で展開する体制を国内外で構築
  欧州拠点Teijin Carbon Europeでは炭素繊維事業初のサステナビリティレポートを発行
  「Tenax Next™ R2S P513 6MM」はコンパウンダーがそのままフィーダーに投入可能な
  使い勝手の良さとDPP対応のトレーサビリティで幅広い用途での採用に期待
 
株式会社豊田自動織機
  材料(rCF糸)開発に止まらず、中間材から成形品までの製品設計、評価、
  品質保証までを包括的に取り組みCFRPリサイクルの早期実現を目指す
  祖業である織機・紡機技術の活用で炭素繊維端材から連続繊維を再生
  撚りの無い均一な繊維配向でvCFに近い品質と物性を実現
  CO2排出量はvCFの10~20%、カーボンプライシングに対し高い優位性を確保
  USTER社の測定技術で糸の品質を保証
  リサイクルCFRPの社会実装に向けたプラットフォーム「包括的CFRP循環システム」は
  フェーズ2に到達、国内のみならず海外でも高く評価される
 
UBE株式会社
  リサイクル炭素繊維強化ナイロンコンポジットはGHG排出量削減効果に加え
  バージン繊維使用品と同等の物性が高く評価される
  「U-BE-INFINITY®」第1弾としてリサイクル炭素繊維強化ナイロンコンポジットをリリース
  樹脂と繊維の配合、レシピはユーザーニーズに最適化して提案
  優れたGHG排出量削減効果、リサイクル率向上、PFAS対応、CBAM対応など
  ユーザーの環境対応への幅広い貢献が評価されアジアを中心に実績を拡大
 
株式会社UCHIDA
  顧客ニーズに合わせ設計~成形、試作、製品化までをワンストップで対応
  自動化システム導入やプレス成形活用で生産リードタイムを大幅に短縮
  多種多様な成形方法と一品一様、少量多品種対応によるCFRTS、CFRTS成形に強み
  2016年にはCFRP製歩行装具でJEC World Innovation Awardを受賞
  フォーミュラEレーシングカー部品再生、3Dプリントによる成形型開発など
  リサイクル炭素繊維(rCF)活用に向けた取り組みも推進
 
金沢工業大学 革新複合材料研究開発センター(ICC)
  国内外の企業・研究機関と連携し、材料、成形、評価・分析、
  エンジニアリング技術の研究開発を進め複合材料の活用・社会実装を目指す
  大学と企業をつなぐ複合材料のプラットフォームとして
  オープンイノベーションな研究環境を整備
  カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーの観点からもrCFの活用は喫緊の課題―0
  rCFの「回収の先」を見据えた技術開発に取り組む
  rCF複合材料の活用・出口開発につながる成形技術を数多く保有
  複雑形状と高Vfを両立するランダムシートなどの材料開発も進展
  独・フラウンホーファーの共同研究開発・事業化拠点(FIP)を日本で初めて開設
  rCF複合材料の研究開発、技術移転、事業化に向けたゲートウェイとして期待される
 
名古屋大学ナショナルコンポジットセンター
  複合材料の世界的な研究開発拠点として
  リサイクル炭素繊維の活用拡大に向けたプロジェクトを推進
  LFT-D成形技術によりrCFを90%混合したCFRTPの大型・薄肉成形を実現
  退役航空機由来のCFRP廃材から回収したrCFを再び航空機で活用する
  Air to Airリサイクルプロジェクトを産学協同で推進
  中間加工材を使用せず材料供給から成形品までを一貫自動生産するLFT-D成形で
  CFRTP成形時間の大幅な短縮と低コスト化を実現
  産学連携のコンソーシアムnccPrimeで
  自動車リサイクルの課題であったASRを使用したCar to Carリサイクル実現へ
 
国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研中部センター)
  評価方法、複合化技術、成形プロセスなどrCF活用促進のための
  技術開発・研究開発を推進
  引張強度、樹脂/繊維界面せん断強度を同時に評価し短い繊維にも対応可能な
  「改良型フラグメンテーション試験」がISO19350として国際標準化を果たす
  100µmサイズのミルドファイバーを複合化し繊維の配向を揃えた3DP造形材を開発
 
Mitsubishi Chemical Advanced Materials AG
  欧州でのrCF事業に参入で、グループ全体でのrCF製品の取り扱いと
  リサイクルプログラムが拡大
  CFRP・CF活用が進む欧州に本格参入
  2022年にはドイツに量産ラインを増設、欧州域内を超えたグローバル展開を目指す
  拡大するrCF製品ラインアップ
  川下ユーザーの幅広いニーズに応える形状や成形方法を実現
  航空機やスポーツ・レジャーへの「KyronTEX™」の活用を進める
  トレーサビリティを確保したクローズドループ・リサイクルシステムで高付加価値化を図る
 
SGL Carbon SE
  Carbon Cleanupとの提携をきっかけとする
  rCF事業拡大に向けた新たな展開が注目される
  炭素繊維を活用したBMW i3製造で自動車用CFRP市場を牽引
  協業終了後は低迷期に入り、事業の再編成をアナウンス
  AI搭載ロボットでCF循環型利用・rCF事業に注力する方向か?
  2025年9月、Carbon Cleanup社と提携を発表
  革新的AI搭載rCFロボット「CARB-E(Carbon Eater)」は
  rCF普及の壁となっている用途やトレーサビリティの課題を解決できるか
 
Gen 2 Carbon Ltd.
  グローバル提携により欧州・米国でのプレゼンス拡大
  バッテリー、燃料電池、電解装置向けなどの高付加価値領域での展開を目指す
  旧ELG Carbon FibreからGen 2 Carbonへとリブランディングを経て
  イギリス・欧州を牽引するrCFブランド確立に弾みをつける
  欧州内の提携に留まらず、越境パートナーシップを促進
  2025年には米国の炭素・黒鉛メーカーAmericarbと提携
  2025年度Engineering Innovator of the Year Award部門にノミネート
  欧州で認められるrCFリサイクラーが認識する課題はインフラ整備と公認基準設定
 
Carbon Fiber Recycling Inc.
  24時間365日連続運転可能な連続フロー式システムを活用して
  rCFのコスト削減と安定量産供給体制を実現
  炭素繊維の環境負荷削減と経済性向上の両立を実現したCFRのrCF生産技術
  課題であった商業規模でのrCF生産を連続フロー式システムで解決

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