今週の"ひらめき"視点

電力需給ひっ迫、自立分散型ネットワークの構築を急げ

今夏、政府は7年ぶりに企業と家庭に対して節電を要請する。経済産業省の電力需給見通しによると「東北・東京・中部の3エリアにおける電力供給の予備率が3.1%まで低下する」とのことである。安定供給に必要な予備率は3%である。供給はまさに綱渡りだ。エネルギーの安定供給は国民生活、企業活動、そして、安全保障の根幹であり、したがって、需給見通しどおりであれば節電の要請は止むを得ないだろう。しかしながら、毎年のように懸念される電力需給の問題に対して、はたして出来得るすべての対策が講じられてきたであろうか。

東日本大震災直後の2011年7月、国土交通省国土審議会は特定地域の電力不足に備えるためには「電力会社の管轄エリアを越えた地域間での電力融通が重要であり、送電線の容量拡大と周波数変換所の増強が必要」、「遠隔地からのエネルギー供給のリスクを低減するためには自立分散型エネルギーシステムが有効、この実現に向けて各分野を横断する一体的な取り組みが求められる」と提言した。つまり、既存事業者の裁量を越えた取り組みを急げ、ということである。

その日から11年目の6月7日、政府の電力需給に関する検討会は「2022年度の電力需給の総合対策」を発表、電力不足に対する構造的な対策の中に “分散型電源の活用を支援”、“地域間連系線の更なる増強を検討する” と書き込んだ。いや、その通りである。このソリューションに世論の二分はないはずだ。しかし、あれから11年、未だに “検討” なのか。「あの時の提言を、党派を越えた国策として実行した。それゆえに今年の厳しい状況も乗り切ることが出来る」、そんな発表が聞きたかった。

今、世界の新たな分断が、効率最優先のサプライチェーンと巨大システムに一元的に依存した社会のリスクを高める。時代のニーズは集中から分散へ、寡占からネットワークへ、である。
弊社も「カーボンニュートラルビジネス研究所」を立ち上げ、脱炭素と自立分散型経済を先取りした事業開発支援を行っているが、この夏、八ヶ岳山麗エリアを舞台に新たな経済循環モデルづくりをスタートさせる。7月5日、キックオフイベントを兼ねたワークショップを “ワークラボ八ヶ岳”(茅野市)にて開催する。会場受付にて「ひらめき視点を読んだ」と言っていただければ参加費は筆者が持ちます! リラックスした雰囲気の中で分散型経済の未来について意見交換が出来ればと思います。ご来場、お待ちしております。

※「ココラデプロジェクト」スタート、お弁当を食べながらカーボンニュートラルを考える「ココラデ ランチ講座~気候変動と食と私と地域」7/5開催のお知らせ


今週の“ひらめき”視点 6.12 – 6.16
代表取締役社長 水越 孝