今週の"ひらめき"視点
社会との信頼回復に向けて、組織は自浄能力を取り戻せ
1月14日、原子力規制委員会は、中部電力が浜岡原子力発電所の再稼働審査において“想定される最大規模の地震の揺れ(基準地振動)”を過小評価していた問題について「データのねつ造」と断定、審査の停止と本社への立ち入り検査を実施すると発表した。IDカードの不正使用(東京電力)、地質データの書き換え(日本原子力発電)、核物質防護センサーの点検記録の虚偽記載(東北電力)など福島第一原発の事故を経てなお原発を巡る不正が止まない。一体、何がそうさせるのか。これは原発事業者に固有の問題であるのか。
浜岡原発におけるデータ不正が発覚したのは2025年2月、公益通報制度を使った原子力規制委員会への“外部”からの情報提供だった。2025年10月、日本取引所グループから「特別注意銘柄」に指定されたニデックの不正会計問題の端緒も海外子会社における不正な利益操作に関する “匿名”の内部通報であった。2023年、ダイハツの認証不正問題も“外部機関”への通報が問題の発端となった。
ダイハツには監査部が運営する「社員の声」という制度があった。しかし、匿名通報は信ぴょう性が低いとされ結果通知は行われず、また、多くの案件が当該事案の発生部署に差し戻されていたという。第三者委員会の報告書はこうした運用が内部通報制度への不信を招くとともに会社の自浄作用に対する疑念を強めたと指摘する。そのうえで、従業員が不正行為に及んだのは「短期開発への強烈なプレッシャーに追い込まれたため」であり、現場が「経営の犠牲」になったと断じる。短期開発の箇所を“予算達成”“再稼働”に置き換えればニデック、中部電力にそのまま当てはまるだろう。
2025年、中日本高速道路は2012年の笹子トンネル崩落事故後に社員から聞き取った事故原因に関する内部資料を遺族に開示した。「安全に対する根拠なき自信過剰」「予算の都合で安全対策が先送り」といった現場の声が記された資料は、遺族からの開示請求に対して10年余にわたって「ご要望の資料は存在しない」と説明されてきた。森友学園問題における財務省の対応と重なる。2026年、改正公益通報者保護法が施行される。通報を理由とした懲戒や解雇など通報者に対する不利益待遇は刑事罰の対象となる。制度の適切な運用は言うまでもない。とは言え、まず取り組むべきは個々の組織のガバナンス強化であり、ここが現場と経営、個人と社会との信頼を回復する起点となる。問われるのはトップの資質そのものということだ。
今週の“ひらめき”視点 1.4 - 1.15
代表取締役社長 水越 孝
