今週の"ひらめき"視点
米中、世界の2大強国を怒らせたグラミー賞にStanding ovation!
2月1日、米音楽界最高の栄誉「グラミー賞」の第68回授賞式が開催された。年間最優秀楽曲はビリー・アイリッシュの「WILDFLOWER」、年間最優秀アルバムはバッド・バニーの「DeBÍ TiRAR MáS FOToS」が受賞した。年間最優秀楽曲を3回受賞したのはアイリッシュがはじめて、また、全曲がスペイン語で歌われているアルバム(バニー)がグラミー賞の主要部門に輝いたこともはじめてであり、話題となった。
授賞式恒例のスピーチでは「奪われた土地に不法な人間は存在しない」と語ったアイリッシュを筆頭にトランプ政権のもとで先鋭化する移民・税関捜査局(ICE)に対する批判が相次いだ。トランプ氏を不快にさせるにはこれだけで十分であろうが、司会のトレバー・ノア氏は性犯罪で起訴され拘留中に死亡した富豪エプスタイン氏とトランプ氏との関係を暗示させつつ「グラミー賞はアーティストなら誰でも欲しがる。トランプ氏がグリーンランドを欲しがるように」と揶揄、これに対してトランプ氏は「グラミー賞は見るに堪えない」「ノアを訴える」とSNSに書き込んだ。まさに“アメリカの分断”を象徴する一幕だ。
一方、“最優秀オーディオブック、ナレーション、ストーリーテリング・レコーディング賞”にはチベット仏教の指導者ダライ・ラマ14世が自身の思いを英語で語ったアルバム「Meditations」が選ばれた。意外に思われる方も少なくないと思うが、彼は2020年にも音楽と読経を融合させたアルバム「Compassion」を発表している。因みにこのアルバムにはアヌーシュカ・シャンカールがシタール奏者として参加している。彼女はノラ・ジョーンズの異母妹で、父はビートルズとも親交のあったラヴィ・シャンカールである。余談ながらラヴィもまたジョージ・ハリスンとともに主催した1971年の「バングラデシュ難民救済コンサート」で第15回グラミー賞「最優秀アルバム」を受賞している。
話を元に戻そう。トランプ氏に続いてグラミー賞に噛みついたのは言うまでもなく中国当局である。「Meditations」の受賞に対して中国外務省は直ちに声明、「芸術に関する賞を反中国の政治的道具に利用した」とグラミー賞を批判するとともに、ダライ・ラマ14世を“宗教家の衣を被った政治活動家”と非難した。言わば世界の2大大国を敵に回した感のあるグラミー賞であるが、つまりは音楽の力の証左ということだ。あらゆる政治的、宗教的、思想的、地政学的フィルターを外し、「平和、環境、人類の結束への思いやりと理解が世界の幸福につながる」(ダライ・ラマ14世)とのメッセージを素直に受け止めたい。
今週の“ひらめき”視点 2026.2.1 - 2.5
代表取締役社長 水越 孝
