今週の"ひらめき"視点
欧州、米国、EV化戦略を転換?日本勢はその先を見据えての投資を!
12月16日、EUの行政執行機関、欧州委員会は「2035年までに新車のCO2排出量をゼロにする」ことを義務づけた2023年の決定を撤回、条件付きではあるが2035年以降もエンジン搭載車の販売を可能にする修正案を欧州議会に付議する。一方、フォード、GMなど米国勢もEV投資の縮小を発表、ガソリン車の増産に舵をきる。はたして世界のEV化の流れは後退するのか。
欧州委員会の決定の背景には、トランプ関税による対米輸出の減少、安価な中国EVの大量流入、欧州域内の需要低迷に苦しむ欧州自動車メーカーの業績不振がある。1300万人の雇用を擁する業界からの「急激な構造改革は困難」との要請に折れた形だ。とは言え、修正された数値は「CO2排出量を2021年比で100%削減から90%削減へ」であり、ガソリン車についてもプラグインハイブリッド車(PHV)など環境負荷の低減が条件となる。また、猶予された10%相当分は域内生産のグリーン鉄鋼や合成燃料で相殺する方針であり、CO2削減の基本方針を堅持したうえで現実の経営環境に配慮した、ということだ。
実際、欧州の市場トレンドは変わっていない。欧州自動車工業会(ACEA)が発表した11月のEU域内新車販売台数は88万7491台(前年同月比2.1%増)、シェアはガソリン車が23%、EVが21%とほぼ拮抗するが、伸び率は前者の▲21.9%に対して後者は44.1%増である。
一方、米国の事情は欧州とは異なる。そもそも気候変動問題を詐欺と決めつけ、石油産業の再興を掲げるトランプ氏による政策転換が要因だ。バイデン政権が導入した燃費規制は大幅に緩和され、EV取得を促すための税控除も廃止された。
米国の状況はEV投資に出遅れた日本勢にとって有利との見方もある。短期的にはその通りだ。とは言え、脱炭素への流れは変わらない。2025年1-11月期、EUに英国とEFTA(欧州自由貿易連合)の4ヵ国を加えた欧州全体の市場で日本勢は全社が前年割れとなった。一方、同期間におけるBYDの伸び率は+276%に達し、11月単月では台数ベースで日産を越えた。HYUNDAIグループもTOYOTAグループの販売台数を上回った。アジアでも中国、韓国メーカーの存在感が高まる。日本市場へも小型EVを投入、本格攻勢をかけてくる。世界のどこで、どのパワーソースで、どのセグメントで、どう戦うのか。トランプ後を見据えた日本勢の世界戦略に期待したい。
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代表取締役社長 水越 孝
