今週の"ひらめき"視点
談合、カルテル体質を捨て、健全な競争環境の実現を
10月13日、公正取引委員会は都営地下鉄の軌道保守工事を巡ってJR東日本の関係会社、東鉄工業をはじめとする6社の独禁法違反を認定、違反内容を自主的に報告した東急軌道工業を除く5社に対して排除措置命令を出すとともに課徴金の納付を命じた。6社は入札前に受注予定会社を調整するなど競争を制限したとされ、発注者である東京都交通局についても入札情報の事前漏洩など談合への関与の有無について調査中とのことである。
その前週、公取委はビールや発泡酒における価格カルテルの疑いでビール大手4社に対して強制捜査を行った。4社は“裏会”などと称する会合でビール類や缶チューハイの値上げ幅などを調整していたという。9月にはマンションの大規模修繕工事における談合も明らかになった。マンション管理組合から業者選定等の業務を委託された設計コンサル会社が業者間の受注調整を行ったうえでバックマージンを得ていたとされ、設計コンサル会社2社と工事事業者40社の独禁法違反が認定された。
談合やカルテルが社会問題化すると、“長年続く業界の慣習”であり、過度な価格競争を防ぐことが出来る、会社規模や施工能力に見合った受注調整により品質・納期が守られる、事業リスクが軽減され経営が安定、結果、雇用が維持される、、、などと必要悪を説く論者が現れる。しかしながら、問われているのは供給サイドと需要サイドの非対称性であり、市場取引の公正さである。消費者の選択の権利は侵されていないか、不当な費用が上乗せされていないか、公共事業であれば原資は税金であり入札プロセスにおける透明性は確保されているか、ということだ。そもそもルールを守らないアンフェアなプレーヤーを擁護する理屈はない。
10月12日、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを発表、2027年の日本の名目GDPを4兆4676億ドルと推計した。予測どおりであれば日本は来年には米国、中国、ドイツに加え、インド、英国にも抜かれ世界6位へ後退する。無論、円安も背景にある。しかし、通貨安それ自体が国力に対する信任の低下とも言える。公平、公正な市場取引、すなわち、健全な競争環境の実現は、生産性を高め、付加価値を創造し、イノベーションを促進するための基本条件である。身内の論理に閉じ、業界の常識に安穏としていては世界から後退するばかりだ。慣習や前例、しがらみに囚われない“出る杭”たちに期待したい。
今週の“ひらめき”視点 2026.10.11 - 10.15
代表取締役社長 水越 孝
