今週の"ひらめき"視点
サイバー攻撃の脅威、社会を揺るがす。世界は終わらぬ戦いへ
この夏以降、日本企業に対するサイバー攻撃が止まらない。7月にはニチレイへのサイバー攻撃によって取引先5000社の物流機能が停止した。以降、ソフトバンク子会社IDCフロンティア、大和証券、佐川急便、パーク24、日本経済新聞社、アルカディア、楽天トラベル、HIS、、、そして、GMOグループだ。不正アクセスによるシステム障害、データ破壊、個人情報漏洩のニュースが後を絶たない。
攻撃を受けた企業はいずれも「サイバーテロリストの要求には応じない」と声明する。ただ、被害は攻撃対象企業に止まらない。クラウドの一部が停止したIDCフロンティアでは495の自治体や企業に影響が生じた。防災情報の一斉配信サービスを提供するアルカディアでは36自治体でシステムの運用が停止された。パーク24では免許証が漏洩、HISタイ現地法人ではパスポート情報の流出が懸念される。本人確認情報を含む個人情報は犯罪組織間で取引される可能性も高く、二次・三次被害の温床となる。
9月11日、デジタル庁は、同庁が運用する政府の基幹ネットワークシステムが攻撃を受け、公務員の個人情報が流出した可能性があると公表、11月4日には外部からの不審な通信を検出したとして国税庁は電子申告納税システムe-Taxの運用を停止した。もはや企業だけではないし、日本だけでもない。欧州や米国ではネットワークに接続する制御システムやIoT機器への攻撃も相次ぐ。スーパーの冷蔵庫の温度設定が外部から勝手に操作され、果てはスマホの公式緊急通報にロシアからの核攻撃を伝えるフェイク情報が流される。
AIの急速な進歩がサイバー犯罪の高速化、高度化、多様化、同時多発化を容易にする。三菱UFJ銀行は「来年開業するデジタル銀行ではキャッシュカードを発行せず、スマホとQRコードによる仕組みでセキュリティ強化をはかる」とする。攻守のいたちごっこは社会のDX化を益々ややこしく、ハイコストにしつつある。結局、もっとも安上がりで最強の防御はネットワークに接続しない、ということか。否、それではもはや社会は機能しまい。安全なサイバー空間をどう構築し、維持するか。官民、そして国境を越えたルールづくりと取り組みが急がれる。とは言え、あまりの性急さに私たちはついていけるのか。世界にもしばしのデジタルデトックス(Digital Detox)※が必要だ。
※デジタルデトックス(Digital Detox):スマートフォン、タブレット、PCから一時的に離れ、自然や他者とのリアルなコミュニケーションを通じて心身の疲労やストレスを軽減する取り組み
今週の“ひらめき”視点 2026.11.1 - 11.5
代表取締役社長 水越 孝
