今週の"ひらめき"視点

新宿区、民泊規制強化。需要構造変化を見据え、地域と共生への道を

9月8日、新宿区の吉住区長は、民泊営業の規制を強化する改正条例案を来年の定例区議会に提出する旨、発表した。具体的には営業日数の上限を年間180日から120日に引き下げるとともに住宅地および学校周辺における民泊の営業を禁止する。騒音やごみ問題など住環境の悪化が背景にある。この7月、観光庁は自治体判断による民泊営業の規制強化を容認する通知を出しており、同様の問題が顕在化している少なからぬ自治体が新宿に追随する可能性がある。

所謂“民宿”ではなく、“民泊”と位置付けられるビジネスモデルは2007年創業の米スタートアップ“Airbnb”のオンライン仲介プラットフォームに始まる。日本では国策としてのインバウンド拡大戦略と規制緩和の流れの中で国家戦略特区法改正(2016年)、民泊新法(2018年)を整備、空き家・空き室の有効活用ニーズとも相まって急速に拡大した。当初から住環境への影響は懸念された。しかし、急増する宿泊需要への対応と新市場育成の視点から利用者側の利便性、快適性の確保が優先された。

深刻化する住環境問題に加え、需要構造も変わった。日本人の利用者が急増し、コロナ前の2019年4-5月期の90,089人から2026年4-5月期には2.6倍の235,591人へ、利用率も26.9%から37.6%へ拡大した。円安を背景にインバウンド市場も変わりつつある。メインターゲットは富裕層、IHG、ハイアット、ヒルトン、マリオットなど外資系ホテルグループのラグジュアリーブランドの開業ラッシュが続く。リピーターの増加は観光目的も変えつつある。東京~富士山~京都~大阪といった“ゴールデンルート”から地方へと広がり、体験型・参加型のコト消費へのニーズが高まる。

2026年7月15日時点で稼働中の民泊は全国で42,070件、うち東京23区が40%を占め、これに札幌、名古屋、京都、大阪を加えると58%が都市部に集中する。全国的には前年比125%と拡大基調にあるが、一方、廃業率は全国平均で36%、とりわけ都市部で高く、東京23区と地方・郊外の主要自治体(保健所設置市)を合わせた対象地域の廃業率は44%に達する。今、民泊市場は大きな転換期にある。まずは供給サイドの意識改革が必要だ。宿泊サービス業は単なる“遊休不動産の利活用ビジネス”ではない。宿泊事業者としての経営ビジョン、マーケティング戦略、ガバナンスを確立することが健全かつ持続的な成長への条件である。

※民泊に関するデータは“民泊制度ポータルサイト”(国土交通省)より


今週の“ひらめき”視点 2026.9.6 - 9.10
代表取締役社長 水越 孝