今週の"ひらめき"視点

急成長するヒト型ロボット市場、世界は“進歩”の行方を制御できるか

三菱自動車工業と東京大学発スタートアップ企業「Highlanders」は、「人とロボットが共に働く新しい産業基盤の実現」に向けて基本合意書(MOU)を締結した(7月9日)。両社は三菱自の自社工場でヒューマノイドロボット(ヒト型ロボット)を活用、運用ノウハウとテクニカルデータを蓄積するとともに、三菱自の量産設計、生産管理技術を活用しHighlandersが開発するヒト型ロボットの量産化を目指す。

当社調査※によると2025年のヒト型ロボット世界市場はメーカー出荷ベースで16,580台、前年比647.9%、うち中国が84.8%と圧倒、欧州、米州が7.4%、5.9%とこれに続く。日本はわずかに0.5%だ。中国は当局による強力な財政支援のもといち早く量産技術を確立、既に200社を超える新興企業が参入、低価格製品による家庭用、個人向け市場も立ち上がりつつある。産業向け高スペック市場と民生用低価格市場を合わせた2035年の世界市場は718万台、この間の年平均成長率は83.5%、文字通り驚異的な成長が見込まれる。

労働力不足の解消、生産性の向上、危険業務からの解放を実現する自律型のヒト型ロボットの需要分野は製造業からサービス業に至るまで多岐にわたる。究極は軍事領域だ。今年2月、米国の新興企業「Foundation」はウクライナで物資輸送や偵察任務の実証実験を行った。同社は武装した二足歩行ロボットの実験にも意欲をみせる。ウクライナでは既にAIが敵を識別し、攻撃する自律型無人機が実戦投入されている。やがてフィジカルAIを搭載したヒト型ロボット部隊が人々を追い立てる悪夢が現実になるかもしれない。

ところで、“ロボット”という単語は1920年にカレル・チャペック(チェコ)が発表した戯曲「RUR」から生まれたことをご存じであろうか。作品は無限の労働力“ロボット”の製造工場の描写からはじまる。あらゆる労働から解放された人間は幸福になるはずだった。しかし、やがて世界中で子供が生まれなくなる。そこへロボットが反乱を起こし、、、これ以上は“ネタバレ”になるので興味のある方は是非ご一読を。阿部賢一氏による新訳版「ロボット RUR」(中公文庫)には著者による「機械の支配」と題された寄稿文も収録されている(「現代」6号、1929年)。曰く「人間と機械の関係は、人間が人間に対してどのような関係を築くかにかかっている」。1世紀前、彼は見事に未来を言い当てている。

※「2026年版 世界ヒューマノイドロボット市場の現状と将来展望」(矢野経済研究所、2026年3月30日発刊)より


今週の“ひらめき”視点 2026.8.2 - 8.6
代表取締役社長 水越 孝